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戸谷洋志さんが生み出す対話の「間」

先日はPodcast超相対性理論の収録で、哲学研究者の戸谷洋志さんと対談しました。
戸谷さんとはflierのイベント、Voicyでの収録に続いて3回目の対談機会となります。

以前の戸谷さんとの対談リンクはこちら。


戸谷さんは若手哲学者の中でとても有名な方であり、100分de名著のハイデガー回の解説で登壇されるなど現代ドイツ哲学の研究者として頭角を表されています。
一方で、小難しい話ばかりではなく、直近の著作では『SNSの哲学』や『スマートな悪』など、現代的な社会課題を取り上げながら、その課題の本質をわかりやすく哲学的思考を持って切り込んでいくことのできる方でもあります。

さて、最近僕は、好んで戸谷さんも含めて、若手哲学者の方と対話をするようにしています。
たとえば、もはやVoicyの常連さんとなっている近内悠太さんや谷川嘉浩さん、山野弘樹さんなどが該当します。
その理由は、思考にストレッチ運動が必要だと考えているからです。


僕は、ビジネスにおいて何か企画や提案をする場合、常に「定数」と「変数」に分けて考えるようにしています。つまり、物事を変えられない前提領域と変えられる可変領域に分けて、可変領域に思考リソースを投下して答えを出すわけです。

仕事がモタついてしまう人の特徴は、この切り分けがしっかりできていないまま進めてしまったり、もしくは定数部分を頑張っていじろうとしてしまうわけです。
それほど非効率なことはありません。
だから、まずは前提を確認して、明確に線引きをするわけです。

僕はこのようにして、仕事を効率的に進めてきました。

しかし、やがて気づくわけです。この仕事の進め方では限界が来るということに。

なぜか。
それは、「定数」と「変数」に切り分けがあるというのは幻想であり、実はそんな切れ目はないからなのです。
もちろん多数の人が切れ目だと合意している「切れ目っぽいところ」はある。しかし、実は大きなチャンスは、「切れ目っぽいところ」に潜んでいるのです。「実はこれは定数ではなくて変数だったのか!疑って良かったことなのか!」と。
この手の事例は枚挙に暇がないでしょう。

だからこそ、僕たちは時として「それは本当に定数なのか?」「変数ではないのか?」ということを問う必要があります。

これが実は超面倒くさい。
そんなことを問うよりも、素早く作業を進めた方が気分的には楽です。

たとえばかつて役所からダメって言われたことは、もうダメという前提として考えた方がいいですよね。それをいちいち念の為もう一度役所に確認するなんてことは、不毛すぎるからしたくない…。
でも、実際は粘り強く聞いてみると、「前任者が何と言ったかは知りませんが、ここだけの話、実際はグレーなんですよね〜」なんて回答が返ってきたりする。
「そこ、疑えるところだったんかい!」みたいなことって意外に潜んでいるんです。

だから、定数によって枠が決まってしまった思考の可動範囲を広げるために、時に他者からのラディカルな問いかけが必要なんです。
アスリートがストレッチ運動によって筋肉の可動範囲を広げようとするように。

さて、そこで戸谷さんです。
言わずもがな、戸谷さんは、そんなピシッと線を決めて考える僕に対して、その線引きに本質的な疑いを向けてくれる貴重な存在です。

そして、そのやり方が印象的なのです。

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