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「経営」とは正解のない問いに答えを出すこと

20年くらい前のこと。
当時の勤務先の上司から
「これはどうすれば良いと思うか?」
とよく聞かれました。

いろいろとあてずっぽうに答えてみたのですが、OKをもらえたことはほとんどありませんでした。それは良いとして、「正解」を教えてもらえたことも一度もなかったと記憶しています。

当時は
「他人に質問するなら答えぐらい教えろ」
と内心むかついていたのですが、いまとなれば少しはわかる気もします。おそらくその上司も答えはわかっていなかったのでしょう。他人に問いかけ、その答えを聞きながら自分の考えをまとめていたのだろうと思います。よく言えば「壁打ち」をしていたんでしょうね、彼は。

経理の仕事をしていると、会計原則、会計の規則に則って仕事を進めていきますから正解があるように思えます。もちろん、セオリーはありますし原則を踏み外してはいけません。しかし、選択肢が複数あり、どれを選択しても間違いではない場面は多々あります。法律ですら複数の解釈があるわけで、唯一無二の正解は存在しないと考えておいた方が良いのだと思います。

経営に近づけば近づくほど、正解のない問に答える必要に迫られることが増えます。経営学には一定のセオリーがありますが、絶対にこれが正しいというものはありません。たとえば、経営戦略についての「論」はたくさんあります。組織論もマーケティングも生産管理も、たくさんの説が積み上げられてきており、それはつまり、絶対的な正解はないことの証なのだと思います。

どのやり方が良いのかは、状況次第の部分が大きいと考えています。Aという状況だからBの打ち手がベター、状況はCだからDで行くのが良いだろう、ということです。そして、どういう手を選ぶかこそが「経営判断」であり、それは100%ロジカルには導き出せない、判断をする経営者の理念なり信念に関わってくることになります。「経営は人に宿る」と言われた方がいますが、その人の人生観や歴史観が経営判断に濃厚に関わってくるのだと思います。

コンサルタントの立場で出来るのは、経営者がより自分らしい判断ができるように、状況を的確に分析し、それに基づくアドバイスをすることだろうと考えています。特に、状況分析は大事で、状況把握が間違っていれば答えはほぼ間違えになると思って間違いない。絶対の正解はなくても、絶対の間違いはあるのです。

と、他人事のような言い方をしていますが、コンサルタントがどんなアドバイスをするか、そこにコンサルタントの人となりが出ます。状況把握はロジカルにやる必要があります。また、アドバイスも何の根拠もないものはダメですが、とはいえそこにはコンサルタントの人生観や歴史観が反映すると、僕は実感しています。

だから知識ばかりいくら増やしても仕方がない。診断士の一次試験で700点満点を取れる知識を持っていても、的確な診断と助言が出来るわけではないのです。

と、言いながらも
「知識の真空地帯にオリジナリティは生まれない」
わけで、ちゃんと知識を積み上げる、先人の知恵を学ぶ努力を怠るわけにはいかないのです。そうした知識を土台にして考え抜くことこそ、正解のない問に答えを出す唯一の道だと思います。

*状況に応じて打ち手を考える。どの理論がどの場面に当てはまるのか、考える上で役立つ書籍です。

どの企業にも当てはまる万能の戦略論はなく、外部環境や内部環境によって有効な理論は異なる。代表的な戦略論の特徴と使い分けの指針、戦略構築と実行プロセスまで提示する。

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