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「副業としての中小企業診断士」一歩前

昨年から、企業内診断士のコミュニティを広げる楽しいチームで取り組んできた
『副業としての中小企業診断士活動』
の研究発表を、4月9日、中小企業政策研究会の全体定例会にて行いました。
多くの方からアンケートに回答いただき、その結果をもとに分析・検討をしてきました。

結果については、簡易版ではありますが、リーダーの三木さんから報告させていただきました。三木さんの報告にある通り、発表できる範囲については、今後はこのnoteなどで詳細に展開していくことも考えています。

■私が診断士になったころの副業

11年前、僕が診断士になったころ、副業は主要なトピックではありませんでした。問題は「5年間で30ポイントをどのように取得するか」でした。(診断士の資格更新は5年ごとであり、その際に30日間の診断実務が必要です)
報酬の有無は関係なく、重要なのは診断の機会をどう確保するかであり、したがって、報酬がなくてもボランティアであっても、診断の機会を求める人が多かったと思います。副業を許可している企業はまだ少なく、それは当然のことだったでしょう。

僕自身、診断業務で報酬を受け取ったことはありませんでした。
「いや、お前、報酬をもらって確定申告していたじゃないか」
と突っ込みを受けるかもしれませんが、僕が報酬を受け取ったのは、取材・執筆や予備校の採点、(コンテスト等の)審査員業務などです。

今回のアンケート結果を見ると、企業内診断士でも、専門家の派遣や相談窓口業務などを行っている人が多く、業務範囲が大幅に拡がっていることがわかります。

■企業の副業禁止

しかし、いまだに副業を禁止している企業がたくさんあります。厚生労働省が提唱するモデル就業規則では副業が認められるようになっているにもかかわらずです。
先日、ある会社の総務責任者から聞いたのは
「会社の業績が悪いのだから、副業に“うつつを抜かす”のではなく、社業に専念して欲しい」
という言葉でした。同様の考えを持つ経営者や人事担当者は多いのではないかと想像しています。

ところが、ほとんどの会社の就業規則では副業を禁止していません。明確に「副業禁止」と書かれている就業規則を見たことがないのです。記述されているのは「利益相反の禁止」と「二重雇用の禁止(他の雇用契約を結ぶこと)」だけであり、フリーランスや業務委託で働くのは問題にならないはずです。にかかわらず、上記のような声が多く聞かれることは残念に思っています。

■眠れる資源を起こすために

2017年に発表された『眠れる資源としての企業内診断士』(遠原智文、前田卓雄『日本政策金融公庫論集』(35), 2017)という論文があります。私も多くの示唆を受けました。企業内診断士の活躍の場を広げていかないともったいないとの思いで書かれていると思います。しかしその論文には、こんな記述もあります。

しかしながら、先にみたように、中小企業診断士の資格を積極的に評価し、活用するような社内体制を整備している企業は少ない。それどころか、我々のインタビュー調査(遠原・三島・前田、2016)では、「経営に口を出してくるのではと思われて、上から煙たがられた」「資格の取得を上司からねたまれた」という評価以前の意見も散見された。

眠れる資源としての企業内診断士

この論文は2017年のものです。この7年間で状況は大きく変わったと信じたいのですが、私の体感としてはそこまで進展していないように感じます。コロナ禍で進展したと思われたリモートワークなども、収束とともに反動が起きています。副業に対する考え方も、「3歩進んで2歩下がる」のが現実でしょう。

その結果、「本業VS副業」という視点になりがちです。しかし、二者択一の議論になってしまうと企業に何の利益も生まないと考えています。自社の社員はその会社にとっての貴重な資源です。それを眠らせたままで良いのでしょうか。
僕が描いているのは、副業の経験で得た知見を本業で活かし、本業で得た経験を副業でまた活かす、このサイクルを回すことです。これにより、さまざまなシナジーが生まれるてくると思うのです。
僕は企業内の人間として、そのようなシナジーが生まれるように努めてきたつもりです。さまざま問題から十全な成果が上げられたとは思いませんが、志はそこにありました。

企業とそこに勤務する中小企業診断士との関係をどのようにすれば両者にメリットをもたらし、かつ、社会的なインパクトをもたらせるのか、今後も考えていきたいと思います。そして、その成果を発表できる場を見つけたいと思っています。

*以前、『企業診断ニュース 別冊』に寄稿した記事のコピーです。当時は漠然としていましたが、その時点で考えていたことだと思います。


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