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この絵はこの物語から生まれました ──物語の世界をアートに [第84回]


緑の館の神秘の娘リーマ 礒部晴樹・画

学生時代、「緑の館」W.H.ハドソン という本を読み、
一読、一生の付き合いになってしまいました。

政変をのがれて、アマゾンの密林に逃げ込んだアベルという若者が、
そのジャングルで神秘的な娘リーマと出会います。
一口でいえば、密林を舞台にしたラブロマンスです。
まず、出会うまでのプロセスに引き込まれます。
鳥の声やサルの呼び声とも違う不思議な声、
高い樹々のむこうにちらりとみえた白い影、
そして圧倒的な緑の世界の描写に魅了されました。
以後、「森の奥の神秘な娘」というモチーフは、
私の絵の永遠のテーマとなりました。
このモチーフは色褪せることなく、尽きることなく、
とっくに原作から飛翔し、かたちをかえて、
60年後の今も私の、絵を描くエネルギーとなっています。
神秘、夢幻、静謐、詩情の、
ファンタジーの別世界を追い求めて酔生夢死、
手を変え品を変え、これからも創作していくでしょう。



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