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ノアの方舟

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

一般的な民事事件・刑事事件全般のほか、スポーツ選手・団体の法務や、SNS利用のコンプライアンス講師、テニス練習会の主催なんかをしています。

今日は、ノアの方舟の話をします。

==========お知らせ===========
お知らせです。

先日、ビーチテニスを体験してきました。
日本代表レベルの選手たちにご指導いただいたお陰で、2時間の練習だったのに速攻で試合ができ、砂まみれになりながら、夏を感じられました!

夏を感じたい方、足腰を鍛えたい方はオススメです!

ふたつ目。

本日のアイキャッチの画像にまつわる4コマは、『かぐや様を語りたい』を手がける、G3井田さんが、描いています!
過去の作品はこちらの記事に貼りつけてあるので、ぜひご覧ください!

==========本編スタート==========

◆紙の契約書が終わりを◆

従来、契約と言えば、「契約書」でした。

実は、そんなことになる背景は、この条文にあります。

【民事訴訟法228条4項】
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

「私文書」の反対概念は、「公文書」で、簡単に言うと、権限ある公務員さんが作る文書のこと。

と、なると、世の中の大半の契約書は、「私文書」です。

そして、契約書には、「本人又はその代理人の署名又は押印」があれば、なんかいいっぽいですよね。

署名」は「記名」と少しだけ違い、「記名」だと最初からワープロソフトで印字されたものも含みますが、「署名」はなんらかのインクありの筆記具で、書き入れることを指しています。

押印」は言わずもがな、ハンコを押すこと。

少しだけ緻密に言えば、文書の作成者とされている人と、その人が持っている印鑑を一致させて押すことです。

具体的には、紙尾浩道が、契約の当事者で、契約書の作成者の時に、「下山田」という赤いインクでハンコが押されててもダメだよということ。

ちなみに、この条文について、もう少し詳しく、『2段の推定』と呼ばれる議論があるのですが、今日は割愛します。

弁護士や法律を勉強している友達に『2段の推定』について教えて!と言ってみてください。なんだか知らないけれど、とても嬉しそうに語り始めると思いますよ!笑

と、言うことで、世の契約書には、署名か押印という、有体物=紙を前提としたルールが敷かれていたのです。

これがある以上、弁護士としては、顧問先の会社さんから

「PDFで取り交わしといていいですか?」

と質問されると

「万一裁判になった際には、契約書が真正に作成されたかについて、争いになるかもしれませんが、そのリスク込みであれば、それでもいいですよ」

としか答えられず、結果的に、

「そんなにリスクがあるなら、ちょっとだけ手間だけど、紙でやっとくか」

という結論になっていたんです。

ワイドショーのコメンテーターさんたちは、第1回目の緊急事態宣言で、散々『日本のハンコ文化は遅れている』と嘆いていましたが、少なくとも契約書については上のような事情があったので、社長さんも顧問弁護士さんも、そう簡単には首を縦に触れませんでした。

もちろん、内部の決裁用の文書については、裁判に提出するような性質は薄く、どんどん改革をしてよかったとは思いますが、こと契約書など、会社の権利義務を大きく左右するものについては、ワイドショーを見ながら、もうちょっと詳しく報じてあげなよと思っていましたが・・・

◆電子契約◆

とはいえ、電子契約ができないわけではありません。

詳しく書くと文字が足りなくなるので今日は省略しますが、一定の方式をとれば、先に書いていた民事訴訟法228条4項の「署名又は押印」と同じに扱いましょうという法律ができています。

もはや説明するまでもなく、コロナで出勤するなと言われたという事情が大きく影響し、電子契約の流れは進みました。

それでも弁護士業界の中にいると、「そうは言ってもまだまだ使いにくい法律になってるし、紙の契約は無くならないよね」という空気が流れています。

そんな中、先日カミオは衝撃のニュースを聞きました。

電子契約の利用率が、なんと60%を超えてきているらしいのです!!!

◆ノアの方舟に乗り遅れない◆

と、なると、契約書自体がPDFなどのデータで保管されるようになります。

つまり、AIの学習教材が、データで残っていることになるんです。

今までは、従来の契約書を分析したかったら、紙で袋綴じされて、コピーやスキャンするのがすごく面倒な形になっている契約書を、OCR認識をかけてスキャンし直すしかなかったので、誰もそんな面倒取りませんでした。

でも、ここから作成される新しい契約書は、元々データになっていて、大量の過去のデータを、瞬時に分析できるツールが出て来れば、当然そちらを使います。

そんな企業が増えれば増えるほど、相手先にも

「電子契約でいいっすか?」

と求めるのが世の常。

もう、結論はお分かりですね。弁護士先生が、顧問先に対して提供できることの大半が、「契約書チェック」「契約書の作成」に割かれている場合、その顧問は終わりです。

だって、月額数万円〜数十万円払うメリットがないんだもん。

僕はどちらかというと、社長や幹部のみならず、従業員さんにも、世の中のルール=法律を、理解した上で戦ってほしいと思う側なので、社内の研修とか勉強会に興味があり、ここはまだ、実際の裁判の温度感を伝えられる弁護士が優勢と思っているので、そちら側を強く推していこうと思ってます。

ということで、社員にルールを分かりやすく教えて欲しいそこのあなた!

カミオはあなたのオファーをお待ちしています。

あれ、いや、違うこんな結論じゃないや!

弁護士業界さん、ウカウカしてると本当に終わりますよという話でした。

なんか前にもこんな話どこかでしたような・・・

以上、ノアの方舟のお話しでした。

では、また!

記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。