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2022アドカレ用「クリぼっち」

・シチュエーション:クリぼっち
物書きによるアドベントカレンダー Advent Calendar 2022」用作品です


気付けば、もうクリスマスである。
ちびっ子だけじゃない、大人まで浮かれ気分になるのがクリスマス・・・の筈だか、「浮付いた空気」から零れ落ちた奴も多いのが世の常だ。

プルルル・・・、ガチャ。
『もしもし』
「もしもし、ファンです」
『何処が?』
「いいえ、別に・・・」
『ファーーーーーーーーーーーーーーーーー!』
テレビの向こうの「あの人」はこんな寒い中でも不幸話を笑い話に昇華させてくれる。

そう言えば、結局今年も「クリぼっち」一直線だなぁ。
・・・そんなもやもやとした気分のまま居るのも段々微妙な感じになって来た。

うん、散歩でもして気分を紛らわせよう。
思い立って外に出てみた。

やはり外は寒い。
当たり前だ、寒波が襲い掛かっている。
いっそのこと南の島にでも旅立ちたい気分にもなる。

フラっと近所のデパートに入ってみると、大きな箱を持ってはしゃいでいるちびっこが目に入る。
さぞかしプレゼントを買って貰って喜んでいるのだろう。
そんな純粋な心を持った頃には・・・、もう戻れない。

そう思った時、「疲れ切った大人達へ」と書かれた看板が目に入る。

「・・・何だこれ?」

看板に誘われ、看板に向こう側に入ってみる。
「あら、いらっしゃい。あなたも『疲れた大人』なのね」
温かく、煌びやかな雰囲気のサロンに足を踏み入れてしまったようだ。

「ママ」と呼ばれるカウンターの人に、思いを全て語った。
「あなたも疲れ切っているわね・・・。パーっと呑んで、忘れてしまいなさい」

下戸は下戸なりに、出された酒を呑んだ。
口に含むと甘く、まるでクリスマスケーキの上に載っている生クリームの様だ。

甘さが疲れを包み込み、ゆっくりと溶けていく・・・。

気付けばベロベロに酔っていた。
部屋の暖かさも相まって、いつの間にか眠っていたようだ。

「うん・・・あれ・・・?」

寒さで目が醒めると、家の布団の上だった。

枕元にはクリスマスケーキと、「1年間お疲れ様。メリークリスマス」と書かれたメッセージカードが置かれていた。

「昨日は何だったんだろう。でも、酒は甘かったな・・・」
思い返すと、何とも不思議なクリスマスだったな。

「来年も行きたいな」

クリスマスケーキを1人で食べながら、昨日あった不思議な出来事を思い返した。

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