見出し画像

スケボーに興味を持ったなら、ひとまずこの本を読んでみないか?

【全文無料公開】

「鬼ヤバい」とか「ゴン攻め」とか、これまで耳にしたことのないワードにひとまず目が丸くなるのだけど、よく聞いてみると、そんなにイヤな感じがしない。そんな印象を受けた人も少なくなかったんじゃないだろうか。スケートボード・ストリート競技で解説を担当した瀬尻稜さんのことだ。

たしかに瀬尻さんのコメントは、いわゆる“お行儀のいいもの”ではなかったかもしれないが、その内容は選手たちへの敬意にあふれ、終始ポジティブな方向だったからこそ、多くの視聴者に好意的に受け止められたのだと思う。

そして、それは瀬尻さんの解説だけでなく、おそらく多くの人が「未知との遭遇」となったスケートボード競技に対してのイメージともリンクしたはずだ。柔道や水泳といった、日本のお家芸とも言えるクラシカルな競技にはない軽やかさとフラットな人間関係。そこにどことない魅力を感じた人も多くいたのではないだろうか。

いまから10年前、そんなスケボーが持つ魅力に救われた若者がいる。チャンネル登録者数20万人超を誇る人気YouTuberの「MDAskater」ことSHIMONだ。

チェコとのハーフであるSHIMONは、幼少期から「ガイジン、ガイジン」といじめられてきた。「次はみんなであれをやりなさい。その次はこれ」といった学校の画一的なシステムにもなじめなかった。彼が不登校になるのに、そう時間はかからなかった。

しかし、そこで両親は彼を無理には学校に行かせようとしなかった。父の和宏さんは、「学校が楽しくないなら、好きなことに一生懸命打ち込む時間にしなさい」と声をかけた。好きなこと探しをしているなかで出会ったのが、スケートボードだった。

スケボーのコミュニティは、孤独だったSHIMONをフラットに受け入れてくれた。誰も「学校行かないのか」などとは聞かずに、ただ黙って一緒に滑ってくれた。やっと“仲間”と呼べる存在ができた。やっと自分の居場所ができたと心から思えるようになった。

スケボー界には、そんな「画一的な日本社会」になじめなかった人が多くいた。「みんなはこうだから」と空気に流されることなく、自分らしさを大切にしている人が多くいた。だから、SHIMONにとってはそのコミュニティが心地よく感じられた。

これは10年前、SHIMONが初めてYouTubeに投稿した動画だ。30秒間、ただ机の上で指スケボーを動かしているだけの動画なのだが、なんだかこれを見ていたら泣けてきてしまった。

学校に行けてない時期だったのかな。

まだ友達もいなかったのかな。

やっとスケボーと出会えた頃なのかな。

そこから、ずっと好きだったんだな。

そんなスケボーが、いま日本中から注目を浴びてるんだな。

画像1

ずっと好きだったスケボーが、ずっと自分を支えてきてくれたスケボーが、男女共に金メダルを獲得したこともあって、一気に脚光を浴びるスポーツになったのだ。

堀米雄斗選手の金メダル獲得が決まった瞬間、彼は「スケボーの歴史が大きく変わった瞬間」と顔をほころばせた。

しかし。

だからこそ、気になった。大好きなスケボーが“大衆のもの”となることへの危惧はないのだろうか。SHIMONは、言葉を選びながら、こう語った。

「スケボーって、本来は競技ではなく文化なんです。でも、多くの人は今回オリンピックでスケボーを知ったから、やっぱり競技として、スポーツとして捉えると思うんですよね。そのことが結果としてスケボーの文化を壊してしまわないか、一抹の不安もあります」

SHIMONが守りたい“スケボー文化”とは、いったいどういうものなのか。今回のフィーバーで、スケボーに興味を持った人は、明日発売になるSHIMON初となる著書を読んでみてほしい。オリンピック競技としてではないスケボーの魅力に触れ、そしてファンになるかもしれない。

--------------------------------------------------------

◆この記事の感想を、ぜひSNSでシェアしていただければ幸いです。

◆記事の更新は、みなさんからのサポートに支えられています。ぜひ、この機に定期購読マガジンへのご登録をお願いします!

  ⬆︎⬆︎ SHIMONに教わって、スケボーに挑戦したよ ⬆︎⬆︎

ここから先は

0字
社会で話題になっているニュース。「なるほど、こういう視点があるのか」という気づきをお届けします。

乙武洋匡のコラムやQ&Aコーナー、マネージャー日記や趣味(映画・ワイン・旅行etc.)の記録などを公開していきます。 「すべての人に平等…

みなさんからサポートをいただけると、「ああ、伝わったんだな」「書いてよかったな」と、しみじみ感じます。いつも本当にありがとうございます。