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「アンチ」との超絶イケてる付き合い方を思いついてしまった。

先月末、韓国のアイドルグループ「KARA」の元メンバーのク・ハラさんが亡くなった。自殺だと見られているが、その原因としては元恋人からリベンジポルノを盾に脅されていたこと、ネットの悪質な書き込みに精神を病んでいたことなどが挙げられている。

また、韓国では今年10月、アイドルグループ「f(X)」の元メンバー、ソルリさんが亡くなっている。彼女も自殺と見られており、ク・ハラさん同様、ネット上の悪質な書き込みが原因でうつ病を患っていたという。

韓国は、こうして“顔の見えない殺人者”が大量に跋扈する社会になってしまっているようだが、日本だってそう状況は変わらない。先日、私が金曜MCを務める『AbemaPrime』で放送された特集が「はあちゅう vs アンチ」という企画。何かと炎上することの多い有名ブロガー・はあちゅうさんが生出演し、自身のアンチと直接対決するという企画だった。


電話で出演してくださったカトウさん(仮名)は、筋金入りの“はあちゅうアンチ”。すでにはあちゅう本人からブロックされているにもかからわず、はあちゅう専用アカウントをつくり、あらゆる手段を利用して彼女の発信にいちゃもんをつけるという徹底ぶりだった。

番組中、視聴者から寄せられた質問をカトウさんにぶつけてみた。

「もしカトウさんなどアンチのせいで、はあちゅうさんが自殺するようなことがあったら、どうするんですか?」

カトウさんは、こうお答えになった。

「今のはあちゅうさんだったら、何とも思わないです。正直」

カトウさんのこうした心情が、いわゆるアンチと呼ばれる方々に共通するものなのか、それとも特異なものなのかはわからないが、少なくとも韓国で起こっていることが、いつ日本でも起こるかわからないと思わされるやりとりだった。

かくいう私も、大量のアンチを擁することにかけては、決してはあちゅうさんにひけを取らない。例のスキャンダル報道以前から、いわゆる障害者らしからぬ振る舞いに反感を抱く人々が、いくらこちらが拒否しようとも、粘り強く関わり続けてくださっている。

彼らとの出会いは、もう20年以上前にさかのぼる。そう、『五体不満足』が出版されてすぐのことだ。当時できたばかりの匿名掲示板「2ちゃんねる(現在は「5ちゃんねる」に名称変更)」を何の気なしに覗くと、そこには私への誹謗中傷が並んでいた。

当時、大学生だった私は、パソコンの前で固まってしまった。血の気が引いていたかもしれない。世の中の善意に救われて生きてきた私は、こんなにも悪意が満ちた場所に触れることがなかったのだ。

でも、2ちゃんねるを覗く機会は、それが最後にはならなかった。むしろ、それからちょくちょく覗きにいくようになった。

2003年にブログに掲載した文章があるので、ここに再掲したい。

読者やファンの人から送られてくるメールや手紙は、そのほとんどが僕を誉めそやすものだ。街を歩けば、「いつも観てますよ」「勇気をもらってます」。若い女の子にキャーと言われれば、やっぱり悪い気はしない。

仕事先にはスタッフがいて、いつも気を遣ってもらっている。暑くないか。寒くはないか。のどが渇いてはいないか。黙っていても、快適な環境が自然と用意される。

若くして世に出てしまった僕に強く物が言える人がいないのは、僕にとって大きな不幸だと思っている。僕はそう強い人間ではないから、時折、このまま傲慢な人間になってしまわないだろうかと不安になることがある。

そんなとき、僕はパソコンを開き、「お気に入り」のフォルダから「2ちゃんねる」を選び出す。僕を悪く言う人々の書き込みを読む。薬みたいなものかもしれない。それまで持っていた自信や自尊心といったものが一気に崩れ去り、代わりに謙虚な心が入り込む。泣きたくなることもある。でも、それくらいがちょうどいいと思っている。

彼らの文言は、あまりに心なく、的外れなものが多い。けれども、時に足元を見つめさせてくれるものもある。「あんな文才のないやつが」と書かれれば文章を磨くことに貪欲になれるし、「障害があること以外に何のウリもない」と指摘されればウリを作ろうと必死になれる。

匿名だからこそ好き勝手に書けるけれど、匿名だからこそ本心が出る。僕をよく思っていない人たちの存在を知り、意見を聞くことで、見たくない自分の姿が見えてくる。そこから目をそらすことの方がよっぽど簡単でラクなことだとはわかっているけれど……。

名誉毀損をちらつかせながら彼らを黙らせることは、確かにできるのかもしれない。でも、それでは単に彼らの口を閉ざしたに過ぎない。誹謗中傷する人々の気持ちを少しでも変えるよう努力する。それは、僕にとって意味のないことではない。

いまから16年も前に書いた文章なので、当時から考えが変わった部分もあるが、少なくとも当時は真剣にこのように考え、自省や発奮を促すツールとして2チャンネルを、そしてアンチと呼ばれる存在の方々を活用させていただいていた。

さて、上記の文章を書いてから16年が経った。令和を迎え、韓国のアイドルが相次いで自殺し、『AbemaPrime』でアンチ特集を組んだ。そんな私が、いまあらためてアンチとの向き合い方を考えてみた。彼らとのいい付き合い方、程よい距離感って、ないものだろうか——。

あ、閃いた!!!

そうか、この手があったじゃないか!!!

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