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「#教師のバトン」炎上で、怒りの炎を向けるべき相手。

文科省が始めた「#教師のバトン」というプロジェクトが炎上している。

文科省のホームページによると、このプロジェクトは「教職を目指す学生や社会人の方に、現職の教師が前向きに取り組んでいる姿を知ってもらうことが重要」であり、「『令和の日本型教育』を担う教師の人材確保・質向上プラン」のためにスタートさせたのだそうだ。わかりやすく言えば、「教師という仕事の魅力を“教師自身に”発信してもらい、人材確保につなげよう」というわけだ。

ところが、これが炎上している。

文科省の目論みでは、教師たちがその仕事の「魅力」を発信してくれるはずだったのだが、彼らが実際に発信したのは耐えがたい「窮状」だったのだ。こちらをクリックしていただければ、怨嗟に満ちたツイートの数々をご覧になれるが、ここでいくつかご紹介したい。

これだけの悪条件を並べられて、誰がこのバトンを受け取ろうと思うだろうか。文科省の思惑は完全に外れ、「#教師のバトン」プロジェクトは人材確保に向けてのネガティブキャンペーンとなってしまった感がある。

まさに下のツイートが示す通りの展開となってしまった今回のプロジェクトだが、なぜここまで教師たちの不満は一気に爆発してしまったのだろうか。

ひとことで言えば、今回の文科省によるプロジェクトが「やりがい搾取」だと感じられたからだろう。「やりがい搾取」とは、経営者が支払うべき賃金や手当ての代わりに、労働者に「やりがい」を強く意識させることにより、本来支払うべき賃金の支払いを免れる行為のことを指す。

つまり、文科省が人材確保のためにすべきことは、ひとえに労働条件の改善であり、そこが改善されないなかで、「やりがいある仕事です!」というキラキラTweetで若者を集めようという手法に対して現場の教師たちが憤りを覚えた、というのが正直なところのようだ。

私自身も教育現場に身を置いていた時期もあり、このハッシュタグに連なる教師たちの不満には一つ一つ共感している。おそらく私自身、いまも教育現場にいたならきっと同じような感情を抱き、「やりがい搾取」だと批判の声を上げていただろう。

ただ、本当に問題を解決しようと思うなら、その怒りの炎を誰に向けるべきかは冷静に考える必要があるのではないだろうか。今回の件で言えば、怒りの矛先を向ける相手は「文科省」でいいのか。私は、そうは思わない。もう少し正確に言えば、文科省に怒りをぶつけるだけでは小手先の対策しかなされないだろうと思っている。

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