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明石市長の原動力は、「復讐心」だった。

これほどショックなことはありません。明石市長の泉房穂さんが、来年4月に迎える明石市長選には出馬せず、「政治家引退」することを表明されたのです。その背景には、議会から出された問責決議案が可決されたり、敵対する市議会議員に「問責なんか出しやがって。ふざけとるんか」「お前ら議員なんか、みんな落としてやる」といった暴言を吐いたことなどが挙げられています。

泉市長は2019年にも暴言騒動があり、一度辞職してから出直し選挙に臨み、圧勝して市長に返り咲いたという経緯があります。そこから同じ過ちを繰り返さないようアンガーマネジメントを受講してきたり、本も読んできたりしてきたものの、今回こうして同じ過ちを繰り返してしまったということで、ご本人としては引退しかないと決意されたようです。

私自身、今回のことについてツイートしたところ、じつに4500RTを超える大きな反響がありました。「あれだけ市民に寄り添ってくれる政治家はいない。残念だ」という声もあれば、「自身の感情をコントロールできない人間は公職にふさわしくない」という声もありました。なかには、泉さんの引退表明を残念がる私に対して、「パワハラを肯定するのか」というお怒りの言葉も届きました。

もちろん、私とて暴言を肯定するわけではありませんが、それでも私が泉市長の引退表明にショックを受け、その決断に嘆き悲しんでいるのは、泉市長が子育て政策において類稀なる成功を収めていた稀有な政治家だからです。そして、何より私自身、参院選に立候補した際には、地方自治体と国という違いはあれど、泉市長が推し進めてきた明石市の政策を参考にさせていただき、街頭演説でも幾度となく明石市政の素晴らしさについて熱弁をふるってきたくらいなのです。

明石市政の何がそんなに素晴らしいのか。ご存知ない方に、少しだけご紹介できればと思います。

2011年に明石市長に当選した泉さんは、そこから徹底した「子育て政策」に取り組みました。

・中学生までの医療費無料化(後に高校生まで無料に)
・第二子以降の保育料無料化
・中学校給食の完全無償化(所得制限なし)
・公共施設の入場料無料化
・見守り支援員による「おむつ定期便」

こうした政策によって、明石市に何が起こったか。それまで減少傾向にあった明石市の人口が、市長就任から2年後にあたる2013年から増加に転じたのです。就任時に29万人強だった人口は、昨年時点で30万4千人。じつに1万4千人近くが増加したことになります。中核市における人口増加率では、なんと全国1位に当たるのだとか。

「明石たうんず」より引用

人口増に伴い、今度は何が起こったのか。当然ながら、税収が増えていきます。なんと7年間で30億円もの増収。これは人口30万人規模の自治体としては異例の数字です。これにより、明石市の財政基金は、泉市長が就任した2011年当時は約70億円だったのが、2020年には110億円を突破していることがわかります。じつに1.5倍にもなっているのです。

「神戸新聞NEXT」より引用

「子育て政策は、経済政策でもあるんです」

参院選で、私が何度も口にしていたメッセージです。もちろん、地方自治体での取り組みを、そっくりそのまま国政に反映させることは、そう簡単なことではないでしょう。しかし、「子育てしやすい社会になれば人口が増え、結果として税収が増える」という好循環は、国レベルでも必ず生み出せると思うのです。だからこそ、私は子育て世代のためだけでなく、この国に生きるすべての人にとって、「子育て政策」に力を入れるべきだと思っているのです。

しかし、私が泉市長を敬愛し、誠に勝手ながら「政治の師」と慕っているのは、なにも市長が「子育て政策のプロ」だからという理由だけではありません。もっと言えば、私にとってそれは副次的なことであり、私が泉市長を最もリスペクトしている点は、別にあるのです。そのことについて、泉市長ご本人は「復讐」と表現しています。

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「乙武洋匡の七転び八起き」
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