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風景写真のパンチ力


大切なことを忘れていた

ずっとひとつのことを集中して考えていると、わかっていたはずの基本的な要素を漏らすことがある。

美しさや、美しい風景写真について深く細かく考えるあまり、
もっと基礎的な写真の「パンチ力」の重要性をすっかり忘れていた。

人生初、上高地の写真

美しい風景写真を撮る重要なファクターである構図、幻想要素、光、色。それぞれにこだわり抜いて現像され出来上がった私の写真が下記だ。

上高地 大正池(2023/10/31早朝撮影)

美しい。はずだ。

最初はかなり自信があった。撮影したときの圧倒的な絶景、朝靄の幻想的な姿、紅葉の美しさを、何日もかけてじっくり現像し、抽出できたと感じた。

だがコミュニティで講評に出し、どうもパッとしない。
SNSでの反応も非常に薄い。
少しずつ私の自信は萎え、冷静になっていった。

冷静になってから改めて見ると、
『こちらが長野が世界に誇る上高地の"大正池"となります!』
といったアナウンスが聞こえてきそうな、要は「キレイな記録写真」にとどまっている、とも見れる。

冷静になってからの自己分析(辛辣Ver)

  • 細かい色味だの言う以前に、この風景、影多くて全体的に暗くね?

  • 暗すぎて紅葉の色よく見えんがな

  • リフレクション?確かにキレイだね!
    まぁ単に鏡写しになっているだけっちゃだけだけど。。

  • 朝靄?
    …あぁ!確かによく見たらうすーーく靄がかってるね。
    写真全体の中で占める割合が小さすぎて、ガスってるだけに見えた

  • 「雄大な」光景?そりゃぁきっとそうだったんだろうね。
    でも残念だけど、この写真ではどれだけ広大かちょっとピンとこないなぁ。。

  • で、この薄暗い絶景でアンタは何が伝えたいの?
    薄暗さに意味があんの?ちょっとよくわかんないわ

うぅぅ。。

撮影地の美しさで乗り越えられない壁

私は美しい写真を撮ろうと検討を始めた当初、早速気づいた点があった。
それは「写真のインパクト」であり、そのための「主題(副題)の明確化」が重要であるということだ。

この検討時に被写体として想定していたのは「花」なので、寄ったり引いたりすればかなり容易に調整が出来たし、風景写真を撮ろうと上高地などに赴いている際は、風景写真は基本的にそこはある程度許される、と、思っていた。だがどうやらそんな甘くはないようだ。

意味のないものを入れない

良い写真は、写っているもの全てに意味がある。
逆に意味のない目立つ要素は邪魔だ。

それがどういうことか、総合的に良い例として神々の風景写真を後述する。
その前にひとつひとつ分析してみよう。

アングルとハーフNDによる青空への対処

結論から言って「その風景写真にとって必要な空」でない限り、画角に極力入れるべきではない。

日の出、星景、マジックアワーの美しいグラデーション など、副題(何なら主題)として明確な意図を持った空でない限り、風景写真において空はむしろ邪魔とさえ言える。

いやいや「空を入れずに風景写真を撮る」なんて、意味不明だが、実際に良い風景写真はそのようになっている。どういうことか?

まずアングル
アングルの観点で色々な風景写真を横並べで見たとき、圧倒的に水平か見下ろすアングルが多い。結果的に空の面積は小さくなる。
 ※だから風景写真は山の上から撮影したものが多いのだ。。

つぎにハーフND
風景写真家が使うイメージだったが、なるほど。改めて見返すと、快晴なのに空と山の明度差が普通に撮影した場合よりだいぶ抑えられている。そのまま撮ると、明るすぎる空は白く映る。真っ青な青空は、空単体で撮影しないとそうならない。

自分の写真を振り返る(明度差のNG例として)

今回風景写真で最も苦しめられたのは、明暗差だ。
今一度自分の写真を見る。

再登場

画面上部1/4部分。空の明るさ、遠景の山の、朝日が当たっている部分。

まず空の光が強すぎる。
また反射光が強すぎて、木々や山肌の解像感が失われている。
逆に、明るさのコントラストが強すぎて暗い部分が死んでしまう。

現像でかなり調整はしたが、限界があった。
空自体はまだマスク選択のうえ明るさと色温度をいじれば補正出来たが、空飛隣接する稜線や山頂付近の山肌はどうしようもなかった。

湖面に反射する山脈の見れば明白だが、リアルの山脈の山肌はあまりに光が強くぼやけてしまっており、せっかくの美しい山肌が死んでいる。
これは現像ではどうしようもなかった。

太陽光の入れ方、とも言いかえられるが、仮に同じ時間同じ場所で撮ったとしても、フィルターひとつでもっと良い写真になったはずだ。
次回撮影チャンスまでには仕入れておきたい。

主題の渋滞、中途半端な副題

自然風景は情報の渦だ。本来ゴチャゴチャしている。
今回私が撮った大正池の写真は、人工物を排除し、人も動物も写していないプレーンな風景写真ではある。

一方、湖面リフレクションを主に、広大な山脈、紅葉、朝靄 と、色々入っている。それ自体は悪くはない。問題は、主張がそれぞれ中途半端であるがゆえに、結局何を伝える写真かがぼやけている(ごちゃついている)点だ。

私が伝えたかった紅葉と霧氷と朝霧といった要素は全て影の中で、画面上部の高コントラスト部分との対比も相まって目立たなくなっている。この風景全体の美しさも、伝えたかった要素も全部欲張った結果、究極的には紅葉が邪魔になってさえ見えてしまう写真となってしまった。。

最高の風景写真とは?

改めて様々な他の人の写真を見てみた。
これまで何となく見ていたが、なるほど。凄い。


自らの失敗から学び、もっとうまい風景写真を撮るためにはどうしたら良いか

結果論として、せっかく最高の被写体だったのに残念な風景写真を撮ってしまった。

前述の通り、主題の明確化、ハーフNDを使うなどのTipsは当然今後に活かすとして、そこになかなか気づけず、人の反応を見るまで疑いもしなかった私の問題も、今回の失敗から学びたい重要なテーマだ

これに対する再発防止策(チェックリストを作成予定)は別記事にて整理するとして、風景写真における主題の明確化は、一口にやると言ってもどうすればよいか。

余計な要素を画角に入れない とか テーマに沿った主題を排除する などは当然頑張るものの、どうしても自然風景なのでゴチャつくのは仕方ない部分もあり得ると思われる。そういった場合最も重要なのは真に自分が伝えたいテーマをシンプルに落とし込むことではないか?という考え方はどうだろうか。テーマ側の選別とも言える。

元々、私は
「①上高地の自然の雄大さ」、
「②早朝の朝靄、季節ゆえの木々の霧氷、湖面のリフレクション で幻想的な雰囲気をまとった様子」、
「③秋の紅葉と霧氷などの冬の到来という季節の変化」を伝えたかった。

ちょっとよくばり過ぎだ。

全部を一気に伝えられる写真は撮れなくはないと思うが、少なくとも風景写真初心者の私にはキツかった。

あと、何と言っても私が「伝えられた!」と思ったところで、それを見る側が受け止められるかはまた別の話。正直ややこしい。

①②まではゴールイメージが湧く。
ND使ってシャドーハイライトの差を縮め、より解像感をませばグッと増しになるはずだ。

だが③は単品でさえ厳しい。
「秋」を紅葉で表現したり、「冬の到来」を雪なり霧氷クローズアップで表現することはできても、その変遷そのものを一枚で分からせるのは至難だ。それを分かって挑戦するなら良いが、「それが伝われば…」程度では到底無理。

難しいテーマに挑戦する前に、もっとわかりやすく相手に伝わる風景写真を撮れるようになりたい。

あらゆる点で「あぁ、良い!」と思う「答え」とも言える写真は既に前述の通りだが、いきなりそこに到達するのは少々厳しい。

よって、敢えて「初見でパッと見た印象で、ちょっと惜しいな」と思う、ゴリゴリの完璧 とは言えないが「良い」と思うようなお写真(完全に私見)を選定し、そこから今の自分の潰していくべき課題を明確化していく。

検証1:パンチ力に欠けるけど、凄く美しい写真

はじめに申し上げておくと、ここから挙げるすべてのお写真は、私から見れば全て神写真だ。その上で、「主題の明確化」が成功している写真に共通する「見た瞬間のインパクト=パンチ力」の凄さ だけで振るいにかけた場合について、検証した結果を如何に示す。

じっくり見てはダメ
こんなの素晴らしいに決まっている。愚問。
今ほしいのはそこじゃなくて、見た瞬間のパンチ力の謎
見た瞬間のパンチ力はそこまで強いものではなかった
 ※ボディーブローみたいにじわじわ効いて、
  メロメロに惚れちゃう のは結果一緒なんだが。。

なぜだろう?

共通しているのは「主題が明確」ではあるが「暗め」という点か?
ということは「主題が明確」で「主題が明るい」ということがポイントか?

検証2:パンチ力はある「けど」うーん🧐と思う写真

「主題が明確」で「主題が明るい」写真で、見た瞬間「うおっ!」とはなる…のだが、じっくり見たら「あれ?うーん」となった写真をピックアップしてみた。

結論、主題のレア度の問題ではないかと思われる。
赤い紅葉ドン、紅葉キレイな道ドン、シャボン玉ドン、草(マジックアワー)ドン、浜辺ドンetc

いずれも「絵の美しさ」「撮影テク」「主題の明確化(テーマのダイレクトさ)」「主題の明るさ」はほぼ完璧ではなかろうか。ただ、その被写体であれば比較的容易に模倣可能(珍しくはない)という点で、私の琴線に触れなかった という私の嗜好の影響だろう。

検証1,2から立てる仮説

結論から、パンチのある風景写真を撮るには、下記を満たす必要がある。

  • 「主題が明確」で「主題が明るい」写真

  • 主題がレア(Option)

「主題が明確」

スマホ画面サイズにおける、これは答え かもしれない。
画面ちっさいから、分かりやすい主題がポン!といないと見えないのだ。

「主題が明るい」(写真全体の影の面積率)

主題「だけ」が明るい全体的には暗いものも、ちょっと暗く見える効果があるので、もう少し定量的に言うと影の面積の割合の大きさとも言える。

実際に神々の写真を見ても、陰になっている面積が余裕で半分を超えている場合、瞬間的な「パンチ力」が弱まっている?気がする。

主題がレア(Option)

本当は上記に加え、被写体のレア度も付与したい。

代表例が「ポツン構図」だ。
ハルニレの一本木などが代表例だろうか。

…遠い。。。

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