南アフリカ旅行記 ①クルーガー国立公園で感じたこと
イースター休暇に南アフリカに行ってきた
ドイツから1回の乗り換えで飛行機に乗ること約12時間…
「アフリカのサファリに行く」というヨーロッパ滞在中のバケットリストを叶えるべく、南アフリカを1週間旅してきました。
ケープタウンの絶景、ワイナリー巡り、そしてクルーガー国立公園のサファリ… と非日常的な体験をしたの後に、最後はヨハネスブルグでアパルトヘイトという残酷な過去といまだに色濃く残る現実を目の当たりにするという、多面性に満ちたとても良い旅になりました。
ご参考までに、旅程はこちら。
今回はまず、中盤で訪れたクルーガー国立公園の体験記について記そうと思います。
サファリのメッカ、クルーガー国立公園
ヨハネスより車で5時間ほどの場所にあるクルーガー国立公園は、サファリツアーのメッカであり、世界中の動物愛好家を魅了し続ける、アフリカを代表する野生動物保護区の一つ。
なんと日本の四国まるまるほどの面積を誇るそうです。
私もこの旅で初めてそんな単語を知ったのですが、クルーガーでは、サファリで特に人気が高い動物群の呼称「BIG5」に出会える可能性が高いことで有名なようです。
私たちは、クルーガー国立公園の私有保護区の中にある以下のロッジに2泊して、朝5時(!)と夕方4時にあるゲームドライブに参加しました。
結果、自分でもいまだに信じられないほどの様々な動物を見ることが出来ました。
そこで見た動物の生きざまと光景は、一生忘れられません。
↓ちなみにこのロッジは後ほど述べるスタッフさんも含めとても良かったのでおすすめです!!
以下より、印象に残っている4つの動物を、人間のエゴな観点から見て感じたことを共有したいと思います。
サイ~無骨で奇妙な愛らしさ~
サファリを心から楽しみにしていた私ですが、実際のところ「すべての動物を愛す!」とは言い切れず、無類の動物好きなわけではありません。
幼少期も、興味がなかったわけではないのですが、夢中になって動物の図鑑を読み漁った記憶もありません。
代わりにいつも読んでいたのは犬の図鑑でした笑。
そんなアニマル素人の私がサファリで一番見たかったのはサイです。
理由はよくわかりません。あんなに面白い見た目をしているサイですが、ゾウのように動物園にも頻繁にいるわけではなく、キャラクター化されているわけでもなく、なんとなく少しミステリアスで遠い存在だったからでしょうか。
2回目のゲームドライブで、3匹のシロサイがひょっこりと現れたのです。
地面に砂埃を立てながら、雑草を一心不乱に食べている時でした。
とても穏やかで、おそらく視力も悪いので私たちの存在もわかっていないのでしょう。草を食べるのに没頭するサイたちを私はひたすら眺めておりました。
動物のなかでもとりたてて分厚く、硬い言われているサイの皮膚は、鎧のよう。
ライオンのようにお顔がかわいいというわけでも、ヒョウやチーターのように毛並みが美しいわけでもない(そもそも、毛がない?)
体は勿論大きいけれどもゾウほどに巨大なわけではなく、決して華やかな見た目でもない。
そんなサイのちょっとした「無骨さ」に私は心を打たれてしまいました。
分厚い皮、短めのぽてっと脚、玄人感に満ちた顔…なんでかわからないのですが、砂埃を巻き起こしながら黙々と草を食べるサイを見ると、力強さと同時に、胸をなでおろすような落ち着きを貰えるのでした。
そんなサイの無骨さ、そして形容しがたい「奇妙な愛らしさ」に魅了され、「一生サイを推す!!!」と誓った私。
サイ好きという予想が、確信に変わった瞬間でした。
無類の犬好きである私ですが、好きな動物と聞かれたら、今度からは「犬とサイ!」と答えようと思います(笑)
カバ~その巨大な口は何のため?~
改めてサファリでいろんな動物に出会うと、童心にもどって改めて三者三様違いすぎる、各動物の個性に驚きます。
ある程度は「ゾウの鼻が長いのは…」「キリンの首が長いのは…」と、ダーウィンの進化論に裏付けされた論理や進化の過程があると思うのですが、実際にサファリで改めてすさまじく個性豊かな動物を見ると「いやなんでこうやねん!」と思わず突っ込みたくなるような非合理的な特徴があるなと感じました。
広大な自然の中でのびのびと生活している野生の動物を間近で見ると、そのような超根源的な問いを持ってしまうのです。
それを体感したのがカバでした。
カバは観察対象としてとても面白かったです。
池の水面からひょっこり出たお目目がかわいかったカバ達。ゲームドライブでは2,3回程見れました。
赤ちゃんのカバが明け方に池辺で、ぽてっと寝ているのもかわいかった。
といいつつ、実はライオンよりも狂暴というのだから恐ろしい!
平常時は池でのんびり穏やかに過ごしてるカバですが、口を開けた瞬間「人間も簡単に飲み込まれてしまいそう」と思ってしまうほどの獰猛性・迫力を感じます。
本気出すと激コワなカバですが、勿論ライオンなどのように肉食動物ではなく、植物食で草や木の葉などを食べますよね。
改めてガイドさんの説明と共に巨体なカバを見たときにシンプルに思ったのです。
「あんな特大な口と立派な牙があるのに、どうして肉食じゃないんだろう?そのでかい口はなんのため?」と笑。
サファリでは、様々な動物の特徴・違いに触れてダーウィンの進化論を実感するととも、逆に説明不可能な矛盾・突っ込みどころ(非合理性)を発見・再認識するのも面白い経験でした。
きっとあらゆる生き物がなんらかの非合理的な個性、「不用の美」を秘めているのかなと思いました。
人間含め、生き物の全ての構成要素が理にかなっている、fit-for-purposeではない。
でもそんな説明できない特徴が、代えがたい個性や魅力に変わるんだろうなぁ…とカバを見てにやにやと感じたのでした。
キリン~はーい、キリンが通りまーす~
見た目はあんなにアイコニックで華やかなキリン殿ですが、彼らの出現率は見事に100%で、毎回のゲームドライブで現れました。
そのキリン殿の毎度の登場の仕方が、個人的にはお気に入りでした。
キリンにとってはただいつも通り歩いているだけで、人間のエゴな解釈なのですが、個人的に私が出会ったキリンに勝手にキャプションをつけるとこんな感じです↓
こんな感じです。
あまりにも突然横を素通りする彼らと出会うたびになんだか笑ってしまいました。
あんなに目立つ見た目をしておきながら、あたかも自分の外見に自覚がないような親しみやすすぎる振る舞い。のほほんとした絶対的な安定感。
おかげ様で私にとってキリンは、みんなの調子を覗きに来るシュールで愛嬌あふれるキャラクター、のような解釈になりました(笑)
ヒョウ~孤高のスター降臨~
他サファリと比べても多くの動物が見れるクルーガーですが、ヒョウは、ライオンやチーターと異なり単独で行動していてシャイな性格の為、出会えるのはかなり難しいそうです。
クルーガーは他の国立公園と比べてヒョウが見れる可能性が高いことで有名ではあるのですが、1週間滞在しても見れない場合も多いそう。
私たちも計4回のゲームドライブのうち、最初の3回のゲームドライブでヒョウは見れませんでした。
「今回こそヒョウが見たいな」という期待感のもとに迎えた最後のゲームドライブで、最初はなかなかその他も動物も見れず「今日はそんな日かな」と思いながらずっと車を走らせていたら、
ガイドとトラッカーのトーマスとアーネストが、バッファローによる警戒の鳴き声をかぎつけて、ヒョウが近隣にいると勘付き、車をインディージョーンズばりに大大爆走。
車を揺らしながら爆走すること15分。
ついにヒョウ様がひっそーりと現れました。
その出で立ちの厳かさ・神々しさたるや。
動物に詳しくない且つ事前勉強すらしていなかった私は、(ほぼ毎回見れた)チーターを見るたびにヒョウかと勘違いしていたのですが笑
ヒョウを見てから、チーターとの明確な違いが理解できました(遅い)
まず驚いたのは、月並みですが大阪のおばちゃんご一行が好きでたまならい、毛柄の端正さ・華やかさです。
何も手入れしていない自然のありのままの姿とは思えない美しさ。
どうして自然の条理で、一点の淀みもない、こんなに芸術的で豪華絢爛な柄ができるのか。
「ヒョウ柄」という確固たるブランド力で世に羨望のまなざしを向けられていることが納得でした。
足が速く線が細いチーターと比べても、ヒョウはインパラなどの餌をも木の枝まで持っていくくらい力が強いので、筋肉隆々で、なんとも逞しい。
百獣の王といえばライオンだと思いますが、ヒョウの華やかさと「ひとりで黙々と行動する」という孤高のスター感を最後のゲームドライブで目の当たりにし、私たちのサファリ体験の最高のフィナーレになりました。
現地で育った敏腕ガイドさんとの出会い
計4回のゲームドライブでは一貫して、毎回専属ガイド(兼ドライバー)とトラッカー(動物の足跡や鳴き声をてがかりに動物を突き止める人)がついて、他2組のお客さんと一緒になって回りました。
クルーガーといえども、まさかたった2泊でこんなにすべての動物を見れるとは思ってもいませんでした。
宿泊していたロッジに勤める、ガイドとトラッカーのトーマスとアーネストはいつも直前に「What are you looking for today? 」といってお目当ての動物を聞いてくれて、ゲームドライブ中に必ずといっていいほどそのお目当ての動物のもとに連れてってくれるのです。
私営保護区といっても広大な敷地。
動物たちは常に移動し、(カバ⇒池などは除いて)特定の生息地はないらしいため、改めてふたりの力量と他ゲームドライブ一行との情報連携・チームワークに拍手喝采でした。
ガイドのトーマスとの交流で印象に残っていることがあります。
一緒だったドイツ人カップルと、あまりに動物を見つけ出すスキルが巧みで毎度見たかった動物に出会えるので、感動してしまってトーマスに「どのくらいこのお仕事やっているの?」と聞いてみたんです。
そしたら「前は他の仕事をしていて、この仕事は2週間くらいかな」と、
たったの2週間???
たった2週間で、こんなにも私たちが見たいといった動物のもとにほぼ100%導いてくれるとは。
驚きを隠せず「いやジョークでしょ」と突っ込んでいたら
「僕はクルーガーのbushだらけの小さな村で生まれ育って、おじいちゃんに沢山動物のことを教えてもらったんだよ」と微笑みながら教えてくれました。
なるほど…と妙に納得してしまいました。
彼の素晴らしいガイドは、座学やトレーニング等で得られたものではなかったんだと。
彼の人生そのもの、おじいちゃんから受け継がれ、生きてきた軌跡そのものだったのです。
あそこまで見事に動物を見つけ出すという仕事は、トーマスがクルーガーの小さな村で育ってきたからこそ、この地に根を下ろした人だからこそ成せる業なのではないかなと思いました。きっとどれだけ博学な生物専門家では到達できないような、経験と直感の賜物なのだと思います。
ちなみに、動物と出会うたびに沢山面白い解説をしてくれたトーマスですが、個人的にトーマスが一番生き生きしていて忘れない瞬間があります。
休憩で車から降りて談笑していた際に、すぐ近くの蟻塚に連れて行ってくれたときのことです。
トーマスは蟻塚の穴から木の枝でシロアリをほじくりだして手で少し潰し、ばくぱくっと何個も食べていたのです笑
最初はええええ!と動揺していたのですが、
とあるアメリカ人が、「僕も食べてみる!!」と。それを機に、「私も」「私も」と他メンバーが続き、夫と私も食べてみることにしました!
結果、白アリは特に美味しいわけでもなく、全く味がなかったんですが(笑)
「これをよくおかゆに入れて食べるんだよ、ほらみんな食べてみて!」とぱくぱく食べながら、生き生きと語っていたトーマスの表情が忘れられません。
ゲームドライブという、観光客向けにある程度商業化された非日常体験のなかで、このような素朴で日常的な体験を共有していた時のトーマスが楽しそうで、勝手ながらほっこりしてしまいました。
虫にあまり苦手意識はないので食べるのもそこまで抵抗がなかったのですが、トーマスと、そんな日常のひとかけらを共有できたことが嬉しかったです。
五感で動物と対峙するサファリ体験
上記の通り、サファリでの動物と人との出会いは、何事にも代えがたい最高の経験になりました。
普段の生活では人間が世界を支配しているように見えますが、サファリで規格外の動物を超至近距離で見て、改めて人間のちっぽけさを感じました。
改めて振り返ると、クルーガー国立公園の3日間は、動物に疎い私にさえ、時に打たれ強く、時に脆く儚いであろう野生動物の世界を守らなければいけないという実感を与えてくれました。
これまではライオンキングやマダガスカル等で見てきたような「ファンタジーで遠い世界」を近くで実体験できたことで、なんとなく世界への想像力の幅が少し広がったような気がしました。
見世物としての動物園と違い、大自然の中で、足跡をたどったり、動物の息遣いに耳を傾けたり、動物が一心不乱に草を食べまくる様子を無言でずっと観察したり...五感を研ぎ澄まして動物と対峙した贅沢な時間でした。
五感の中でも、特に「聴覚」、音の存在が大きいと感じました。
動物園では、ライオンなどの肉食動物のゾーンは分厚いガラスで覆われていますよね。
動物たちの時に些細、時にダイナミックな「音」を肌で感じることができるか否かは、天と地の差があると思います。
将来もし自分に子供が出来たら、数回分くらいのリゾートを我慢してでも(笑)絶対に連れて行ってあげたいと思いました。
【後日談】南アフリカ政府の”Integrated mega landscapes"構想
ちなみに、クルーガーを絶ってヨハネスブルグまでの飛行機で、クルーガーの現地の新聞を読みました。
さすがクルーガーの新聞なだけあって、動物関連の記事が多くて面白かったです。
(公用語が英語だと新聞などで少し現地の動向も覗けて有難い!)
新聞の一面で、南アフリカ政府が先月発表したIntegrated "mega landscapes" 構想に関する懸念の記事を目にしました。
土・山・海等のあらゆる生態系が一帯となってホリスティックにエコツーリズムの活性化に注力することが書かれているらしいのですが、なんとその中にはBig 5 のトロフィーハンティングの拡大策も論じられているそうです...。
あんなに生き生きと暮らす野生動物たちの尊い命が、人間の私利私欲・娯楽のために搾取されてはならないと、心から思います。
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