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皺がれた桃

市場で皺がれた桃が150円で売られていた。レジに持っていくと、レジのおばさんが価格を打ち込みながら「冷蔵庫に入れたり出したりするとこうなってしまう」と言った。100円にまけてくれた。

家に帰って、台所でビニール袋から桃を取り出す。桃の表面には薄っすら毛が生えている。色は一色ではなく、よく眺めてみると黄や橙やピンクや茶など様々色が混ざり合っている。触るとフニフニしていて、甘い香りがする。

筋に包丁を入れる。桃はすんなり包丁を受け入れるが、中心まで来たところで硬い種にぶつかる。種に沿って包丁を回して一周する。

切れた表皮の部分に包丁を入れて皮を剥く。柔らかくて力を入れすぎてしまうと果肉の方までいってしまいそうだ。なるべく力を入れずにゆっくりと剥いていく。内側からみずみずしい果肉があらわれる。

皮を全て剥き、ぬるぬるした手で大きな種を取り出す。あとはテキトーに果肉を切り、小さな欠片を口に入れながら、ピンクの小さな器によそう。ピンク色の器と対照的に桃は、艶やかな黄色だ。桃はピンクではないことがよくわかる。

別の作業をして少し置いているうちに、くすんで変色してしまった。

あぁ、表面が皺がれていたのは、きっと最後まで中の身を守るためだったのだろう。