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【行政書士試験】令和5年度 問45(抵当権)の検証


1.令和5年度行政書士試験 問45

令和5年の行政書士試験は、去る11月12日の日曜日に行われました。
本日はそのうち、いわゆる記述式の問45(抵当権)についての検証をしてみたいと思います。

問45 AがBに対して有する貸金債権の担保として、Bが所有する甲建物(以下「甲」という。)につき抵当権が設定され、設定登記が経由された。当該貸金債権につきBが債務不履行に陥った後、甲が火災によって消滅し、Bの保険会社Cに対する火災保険金債権が発生した。Aがこの保険金に対して優先弁済権を行使するためには、民法の規定及び判例に照らし、どのような法的手段によって何をしなければならないか。40字程度で記述しなさい。

令和5年度 行政書士試験問題より

2.問われている内容

まずは、事実認定

1)事実認定


1.AはBに対して貸金債権がある。
2.当該貸金債権に債務不履行が生じている。
3.AはBから当該貸金を回収したい
4.AはB建物「甲」の抵当権者である。
5.「甲」は火災で滅失している。
6.「甲」には火災保険が掛けられ、Bが火災保険債権を行使し得る。


2)問われている内容


  • Aがこの保険金に対して優先弁済権を行使する

  • 民法の規定及び判例に照らす

  • どのような法的手段によって

  • 何をしなければならないか


3.内容の検討から答案作成へ

以上をもとに以下で検討していきます。

1)369条

(抵当権の内容)
第369条
1項 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2項 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。


Bの債務について「債務不履行」があるのだから、Aは「債務の担保に供した不動産」=「甲」について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利があるわけですね(民法369条1項)。
しかしながら、この「甲」は焼失してしまっているわけです。
なにかほかに方法はないのか探してみると、民法372条があります。


2)372条とその準用


(留置権等の規定の準用)
第372条
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。

準用先を参照してみます。

(留置権の不可分性)
第296条
留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。

(物上代位)
第304条
1項 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2項 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

(物上保証人の求償権)
第351条
他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。


304条1項が使えそうですね。
しかも条文番号の上のカッコ書き。これは「見出し」と呼ばれ、その条文の内容をコンパクトに表現したものなので、いわば民法上のキーワードともいえるものです。
したがって、民法の規定による「物上代位」という言葉は使えそうですね。


「物上代位という法的手段によって、」


民法372条の規定に基づく304条の準用においては、


➀ 先取特権「=抵当権」は、
② その目的物の売却、賃貸、「滅失」又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、
③ 行使することができる。
④ ただし、先取特権者は、
⑤ その払渡し又は引渡しの前に
⑥ 差押えをしなければならない。


とされているので、④~⑥を忠実に記述することになります。

「この保険金の払渡し前に、この保険金の差押えをしなければならない」


4.解答例

物上代位という法的手段によって、保険金の払渡し前に、この保険金を差押えなければならない。(44字)

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