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【行政書士試験】令和5年度 問46(請負の担保責任)の検証


1.令和5年度行政書士試験 問46

続きまして、いわゆる記述式の問46(請負における)についての検証をしてみたいと思います。

問46 Aは、Aが所有する土地上に住宅を建築する旨の建築請負契約(以下「本件契約」という。)を工務店Bとの間で締結した。本件契約においては、Bの供する材料を用い、また、同住宅の設計もBに委ねることとされた。本件契約から6か月経過後に、Aは、請負代金全額の支払いと引き換えに、完成した住宅の引渡しを受けた。しかし、その引渡し直後に、当該住宅の雨漏りが3か所生じていることが判明し、Aは、そのことを直ちにBに通知した。この場合において、民法の規定に垂らし、Aが、Bに対し、権利行使ができる根拠を示した上で、AのBに対する修補請求以外の3つの権利行使の方法について、40字程度で記述しなさい。

令和5年度 行政書士試験問題より

2.問われている内容

まずは、事実認定

1)事実認定


1.Aはその所有土地上に建物を建てる。
2.建物については注文者Aが請負人Bとの間で請負契約を締結している。
3.材料はBが提供し、設計もBが担当する。(Aの指示はない)
4.請負代金の支払いとともに、仕事の目的物はAに引渡された。
5.仕事の目的物には雨漏りが発生している。
6.Aは、Bに直ちに雨漏りの事実を通知している。
7.Aは、Bに対して何らかの権利行使をしたい。


2)問われている内容


  • Aの権利行使の根拠

  • 修補請求以外の手段で権利行使できるか


3.内容の検討から答案作成へ

以上をもとに以下で検討していきます。

1)636条

(請負人の担保責任の制限)
第636条 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

(有償契約への準用)
第559条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

(買主の追完請求権)
第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

(買主の代金減額請求権)
第563条 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
 履行の追完が不能であるとき。
 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
 前3号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。


➀636条は、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときについての担保責任の制限に関する規定で、材料提供を注文者が行った場合、いわゆる「契約不適合責任」を追及できないと規定しています。

②とすると、本件事案では材料提供が請負人なので、636条1項の後半部分は適用がありません。

③したがって、本件事案では559条による準用で562条以下564条に従い、
 ⅰ)追完(修補)請求
 ⅱ)請負代金(報酬)減額請求
 ⅲ)損害賠償請求
 ⅳ)請負契約の解除
の4つをAはBに主張し得ることになります。


2)637条


(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第637条
 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。


637条1項にいう「前条の場合」というのは「請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき」に該当します。
改正前の民法は
「引渡しから1年」
でしたが、見直され、
「不適合を知ってから1年」
となりました。


以上から、
➀請負の目的物について欠陥のあるものを引渡されている
②引渡し直後に雨漏りの事実をAは知った。
③Aは、雨漏りについて直ちにBに通知した。
という事実が認定され、


  1. 追完請求(修補請求)

  2. 代金(報酬)減額請求

  3. 損害賠償請求(ただし、請負人に帰責事由がなければ請求不可)

  4. 請負契約の解除(ただし、不適合の内容が軽微なら解除不可)


となりそうです。
一方で、問題文中に、


AのBに対する修補請求以外の3つの権利行使の方法


とされているので、上記2~4を忠実に記述することになります。


4.解答例

契約の内容に適合しないものとして、代金減額請求、損害賠償請求及び請負契約の解除ができる。(44字)

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