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しんどさと付き合うこと

2020年後半スタートの朝ドラ『おちょやん』は久しぶりに追いかけた朝ドラだった。朝は可能な限り寝ていたい私にとって、これはかなり大きなことだった。事実をベースにした主人公お千代の激動の人生が面白く、最後まで惹きつけられたままフィナーレを迎えた。

最終回、本当に色んなことがあったお千代(杉咲花さん)がアップで放つセリフ。

「人生はしんどうて、ほんまにおもろいなぁ…!」

圧巻だった。

人生はしんどい。なかなか結婚できなかったし、それでも離婚したし、12年で10回引っ越してるし、キャリアも思い通りにならないし…

しんどい。

しかしそのしんどさに振り回されて潰されてしまっては、1度きりの私の人生がもったいない。前世の記憶がない以上きっと生まれ変わる人生もないし、こんなにしんどい人生もう繰り返したくない。なんならもっとしんどい人生が待ち受けてるかもしれない。それは嫌だ。だから生まれ変わりたくない。

しんどうて、おもろい。息ができないほどのしんどさに風穴を開けるには、少し客観的になっておもしろがることかもしれない。波に飲まれそうになる自分を空から眺め、「おぉ、ようもがいとる。ようやっておる」と思うことかもしれない。そうすれば、遠くから船がやってくるのが見えたり、あるいは海の底からサメが迫ってきてるのが見えたりするかもしれない。

まぁ真っ只中にいるとその余裕がないのが人生のキツさだったりもするんだけど。

映画『ドライブ・マイ・カー』のラスト、手話でソーニャ役の女優が語るセリフ。

「しんどかったです。いっぱい泣きました。そう神様の前で言いましょうね」(※抜粋)

映画館で号泣した。マスク着用で号泣すると、ほんとに呼吸困難になると初めて知った。

もしかしたら私たちのしんどさは、最後の最後までなんらかの形で付きまとうのだろう。多分そう思っておいた方がいい。もがいて、小康状態を経て、また別の渦に遭遇するのだろう。そのプロセスを最後神様の前で吐露する。「よくやったね」と、ようやくその瞬間に褒めてもらえる。そう腹をくくってしまえば、「しんどうておもろい」と思えるようになれるかもしれない。ひとまず目の前のしんどさが、永遠に続くものではないと、全ていつか終わるのだ気付けるかもしれない。

そう、何事もいつか終わる。よくも悪くも。明けない夜もなければ、終わらない冬もなく、そして咲き続ける花もない。でも花はまたいつか咲く。季節を越えれば。

新しい季節へ。

お読みいただきありがとうございました。今日が良い日でありますように。