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戦場で聖歌をうたいつづけるZOC

 戦争反対!甘くてよく通る、でも耳が痛くならない。そんな声でZOCの巫まろさんが3月11日21時放送の「ランダムZOCちゃん」を締めくくった。
 11年前、3月11日。わたしは中学校の卒業式を終えた次の日だった。もう会わなくなってしまった当時の友達の家で呑気に戦国BASARAをやっていた時、とてつもなくでかいトラックが通って、揺れた。そう思った。地震だった。
 秋田県は1日だけの停電で済み、高校の合格発表日が一日延期になった。震度5強で、わたしたちはそれなりに大変な思いをしてるって思った。ろうそくの火を灯した夜、技術の授業で作った手回しラジオから聞く惨状を耳にするまでは。
 わたしの耳に大森靖子のうたが届くまでそれから2年かかる。

 11年たったいま、平和だろうか?みんなは間違いなくNOを突きつける。CO LO s Naと思うことがたくさんある。
 わたしの大好きな、いつか旅行したいと思っているキエフの行きたい場所は綺麗なまま生き残ってくれるだろうか?
 ニュースにもならないどこかの場所で酷いことをされている人はいなくなるのだろうか?
 人間はそもそも平等なんて嫌いだから、理性を伴わないと優しくなんてできないものだ…なんて諦めたくもなることが電波になって無理矢理に現実を飲み込ませようとする。情報の津波でいつも苦しくなる。

 同じ呪い。人間に生まれたからには同じ呪いが、みんなにかかっているのだろうか?

 殺伐とした世の中でも、ミュージシャンは、アイドルは、作家は、映画監督は、全ての創作者は走り続ける。殺伐とした世の中だからこそかもしれない。今、わたしの大好きなZOCは全国ツアーの真っ最中だ。渋谷公演と、名古屋公演には参戦できた。個人的な予定になるが、あとは豊洲、郡山、仙台、行けたら埼玉という楽しみがある。

 ZOC実験室で幕開けされたあの高揚感、召喚される少女たち。大森靖子という、超歌手あるいはもう哲学家の域まで来てしまった人間が少女たちを率いる。今回のRPGツアーのRPG風衣装も相まって、まさに救世主と天の使いという出立ち。
 歌われるのは主にアルバムPvPに収録されている曲たち。気分を上げさせてくれるものから、張り詰めた雰囲気で会場を呑むものまである。ただ、その全ての歌詞に金言があり、音楽理論等は何もわからないわたしでもグッとくるメロディーがある。
 日本にいたって戦場だ。どこにいたって戦場だ。そこでどうやって生きたらいい?そのヒントをくれる、天啓を授けてくれる歌たち。
 名古屋公演の際、わたしの大好きな大好きな巫まろさんのお誕生日だった。和やかで、まろオタにはたまらないセットリストで繰り広げられるライブを見ながら、ふとわたしは、このグループは戦場にいちばん必要なグループなのかもしれないと考える。

 彼女たちが歌うのは間違いなく尊い精神である。これは聖歌だ。

 雅雀り子さんの、family nameのときのシャウトを聞くといつも涙が出る。
 今さっき張りつけられた十字架からなんとか逃げ出し、釘を打たれた手足から血を流しながらもなんとか自分に科すことのできた自由に対する叫びのようだからかもしれない。縛り付ける十字架から飛び出して自由字架へ。

 ZOCを見るたび、まだだ、と思う。何がまだ?評価が、過小評価すぎる。このグループはもっとデカいところまでいける。もっとデカいハコにいける。武道館経験済のグループに思うのも変なことかもしれない。それでも、だ。日本だけで独り占めするにはあまりにもったいなくないですか?この人たち。この歌たち。
 戦場に満ち満ちた世界中に大森靖子が、ZOCが鳴り響き、手足から血を流しながらも笑顔で生きてることを良かったなあって思える瞬間がくればいいと、ばかみたいに本気で思っている。

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