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ケヴィン・ミットニック:かつてFBIから「最も恐れるハッカー」と呼ばれた男

おはようございます。自分の興味関心を満たすために、これからしばらくは世界的に有名なハッカーや、凄腕のサイバーセキュリティ専門家に注目をあてた記事を作ろうと思います。

第1章:ソーシャルエンジニアリングを用いたハッキング手法

ケヴィン・ミットニックはかつてアメリカのFBIから「最も恐れられるハッカー」と呼ばれていました。ミットニックのハッカーとしてのキャリアは幼少期に始まりました。10代の頃、彼はソーシャルエンジニアリングという手法を用いて、ロサンゼルス上で走るバスを無料で利用する方法を見つけました。

ソーシャルエンジニアリングとは?

ソーシャルエンジニアリングとは、文字通りに訳すと「社会工学」です。でもこれは、科学の実験や数学の問題を解くようなものとは違います。ソーシャルエンジニアリングとは、人々からの信用であったり、「友達である」というイメージを利用して、他者から情報を抜き出す手法のことを言います。

たとえば、あなたが友達に「宿題の答えを教えてくれる?」と頼み、宿題の答えを引き出すのも一種のソーシャルエンジニアリングになります。この技術は組織の秘密や重要な個人情報を抜き出す際に、悪用することができるのです。

どうやってバスを無料で利用することができたのか?

若かりし頃のミットニックは、ソーシャルエンジニアリングを用いてバスシステムを「ハッキング」しました。もちろん、これはコンピューターをハッキングするのとは違います。彼がしたことは、バス交通会社の利用している運営ルールを理解した上で、それを悪用したのです。

ミットニックは、バス会社が使っているパンチカードというシステムの欠陥を、見つけ出しました。これは、特定のパターンの穴が開けられた切符で、そのパターンによって情報を識別します。

ミットニックはバス会社に電話をかけ、新しいパンチカードを注文するフリをして、切符のパターンがどのように運賃と関連しているかを探りました。そして、その知識を元に、自分でパンチカードを作成したのです。自分で作成した切符をバスの運賃箱に入れることで、運賃を支払わずにバスに乗車できるようになりました。これが、ミットニックにとってのハッカーキャリアの始まりとなります。

第2章:ミットニックはどのように「最も恐れられるハッカー」になったのか

ミットニックはソーシャルエンジニアリングに卓越していただけでなく、プログラミングにも詳しかったため、より複雑なシステムへの侵入も行うことができました。ミットニックが「最も恐れられるハッカー」となるにいたった3つの事件についてお話します。

事件簿① デジタル・エクイップメント社へのネットワーク侵入

彼が最初に大規模なハッキングを行ったのは、DECという大手コンピュータメーカーでした。DECは、VMSという高度なオペレーティングシステムを開発する会社です。

彼はまず、DECの従業員に「自分は社内のシステムエンジニアです。」と身分を偽い、電話をかけました。そして、「ソフトウェアの問題を解決するために、VMSのソースコードを教えてほしい。」と伝え、いとも簡単にシステムの重要コードであるソースコードを盗み取ることに成功したのです。

ソースコードを手に入れたミットニックは、システムの脆弱性を見つけ出し、システムに不正侵入することができました。後に彼はこの事件を通して、初めて法的な問題と直面することになります。

事件簿② ノヴェル社のネットワーク侵入

ミットニックの次のターゲットは、ネットワークソフトウェア会社であるノヴェル社でした。ノヴェル社は、企業向けのネットワークシステムを提供していたため、ネットワークを経由して数多くの企業情報にアクセスすることができてしまいます

彼はノヴェル社に侵入する際、再びソーシャルエンジニアリングを用いることにしました。社内のエンジニアに電話をかけ、「私はエンジニアです。パスワードの再発行をお願いしたいのですが。」と伝え、いともたやすく管理者アカウントのパスワードを不正に取得するのです。当然、システム内に侵入する彼は、ノヴェル社のネットワークを通じて、数多くの企業情報を好き勝手に閲覧し、時に編集することができたのです。

ノヴェル社へのハッキングは、ミットニックがFBIに追われる大きなきっかけとなります。

事件簿③ サン・マイクロシステムズ社の侵入

ミットニックのハッキングで最も有名な事件として、サン・マイクロシステムズ社への侵入が挙がります。サン・マイクロシステムズは、パソコンやサーバー、ソフトウェアを製造する巨大な企業で、当時にしてはかなり高度なセキュリティ対策が施されていました。

彼はハッキングをするにあたり、サン・マイクロシステムズが開発する「Solaris」というシステムについて、焦点を当てました。侵入手法は、最初にサン・マイクロシステムズの従業員に電話をかけ、「私は、新人のエンジニアなのですが、プロジェクトが遅延しており、どうしてもSolarisのソースコードを確認する必要がある。」と伝え、システムの重要機密であるソースコードを不正入手したのです。

ミットニックは持ち前のシステムに対する知識を用いて、ソースコードの分析を行い、システムの侵入口を再び見つけ出すのです。そして、巨大企業サン・マイクロシステムズの内部ネットワークに侵入し、重要機密を盗み出すことに成功します。この事件を通して、ミットニックは遂にFBIに逮捕されてしまうのです。

逮捕後のキャリア

逮捕後、ミットニックは5年の禁固刑に服します。出所後のミットニックは、その過去の経験を活かし、サイバーセキュリティの専門家として新たなキャリアを築き始めました。

彼は自身の会社、「Mitnick Security Consulting」を設立しました。この会社では、企業向けにサイバーセキュリティのコンサルティングを行っています。彼のサービスは、ペネトレーションテスト(企業のシステムを攻撃することでセキュリティの弱点を見つけるテスト)や、セキュリティ対策のアドバイスソーシャルエンジニアリング防止トレーニングなどが含まれます。ミットニックは自身の経験を元に、企業が攻撃者からどのように身を守るべきかを教えています。

また、彼はこの分野の著名な講演者となり、世界中のカンファレンスやイベントでスピーチを行っています。彼の話は彼自身の経験に基づいており、聴衆は一般的なサイバーセキュリティの知識だけでなく、ハッカーの視点からの洞察も得ることができます。

さらに、ミットニックは著述家としても活動しています。彼は自身の体験を基にした本をいくつか出版しており、その中には「The Art of Deception」や「Ghost in the Wires」など、ソーシャルエンジニアリングについて詳しく解説したものも含まれています。これらの本はサイバーセキュリティの専門家だけでなく、一般の人々にも広く読まれています。

ミットニックの経歴は、一見、矛盾したものに見えるかもしれません。一方で彼はかつての犯罪者であり、その技術は多くの人々に害を及ぼしました。しかし、他方では彼は現在、その技術を用いて多くの人々をサイバー攻撃から守るために奮闘しています。


おわりに

ミットニックの物語は、ハッキングやサイバー攻撃がどれだけ破壊的な力を持つかを物語っています。そして、同時にその力を正しく使うことで社会全体を守ることができることも示しているのです。

サイバーセキュリティの専門家が求められている現代では、ミットニックのような経験を持つ人々がその能力を活用することで、我々はデジタルな世界でより安全に生活することができるのです。我々の社会がますますオンラインに依存するようになる中で、サイバー攻撃のリスクとサイバーセキュリティの重要性が拡大しているのです。

現在サイバーセキュリティの専門家は世界中で大幅に不足しています。企業や政府機関は自分たちのデータを保護するためのスキルを持つ人々を必要としていますが、それを満たすだけの人材がいません。これは大きな問題で、多くのシステムが攻撃に対して無防備な状態にあります。

サイバーセキュリティのキャリアを構築するためには、技術的なスキルと理論的な知識が必要です。特に、理論的な知識の箇所については、資格試験の勉強を通して補強することができるので、非常に大切です。また、転職やキャリアアップを目指す際に、資格があることは有利に働くことが多いです。是非これを機会にサイバーセキュリティへの関心を少しでも高めてもらえたら嬉しいです!


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