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誰より深い内省で自ら獲得したオーナーシップ。「究極、社長が反対してもやり抜く」という決意

 こちらからのほとんどの質問に対して、よどみなく無駄のない回答をすらすらとするのは、DXシステム事業部に所属する渡辺 健太。過去に教育研修事業会社で講師をしていたから?と最初は思いましたがそれだけではありませんでした。転職初期の落ち込んだ経験と、その理由を何度も深く内省したことで自ら苦しい状況から浮上した、豊かな経験のなせる技だったのです。

パートナー物流DXシステム事業部 営業G
渡辺 健太 Kenta Watanabe
大学院卒業後、2011年から約7年間、トーマツイノベーション株式会社(現・株式会社ラーニングエージェンシー)で法人向け営業や営業マネージャー、セミナー講師、新規事業開発責任者、産学官連携PJプロジェクトマネージャ、営業企画など幅広い領域で活躍。その後、2年間は上海現地子会社の数慧光(上海)商务咨询有限公司にてCOOとして総経理と二人三脚で経営にあたり、新規事業の立ち上げやPMI業務で社内環境整備などを経験。2021年11月にラクスル株式会社(現在はハコベル株式会社所属)に入社し、物流DXシステム領域の事業開発を担当。

「お客様に会える」ようになって飛躍的に課題の種類や質が変化した!

—— 社内で見かける渡辺さんは、常にキャリーケースを携えて全国忙しく走り回っているといった印象です。いまどういう仕事をしているのでしょうか。

 SaaSビジネスのグロースをなんとしても実現する、Biz dev.として関わっています。営業側面が現在非常に多忙ですが、グロースを実現するためになんでもやるというのは自分として揺るぎのないポイントです。SaaSはこの2年間ほど、新規顧客獲得がずっと課題なので張り付いている感じですね。それでも22年8月のセイノーホールディングスさんとのジョイントベンチャー設立以降、ブレークスルーの兆しをつかみ始めているので、この兆しとなっている「営業の必勝法則」を形にできて、ある程度回せるようになったら誰かに移譲できるかな、とは思っています。

 私の仕事では、もうなんと言っても22年8月のセイノーホールディングスさんとのジョイントベンチャー設立が大きな転換点でした。これを機に得られるチャンスが段違いに変わったので、この意思決定をした代表はすごいな、といまでもつくづく思ったりします。

 DXシステム、正直まだ勝負のタイミングです。日清食品さんやミツカンさんという超大手に導入いただく事例ができ爆発的に広がるかなと思ったのですが、そう簡単にも行かず、一定導入いただける会社は増えるものの、グロースへの手ごたえはまったくない状態でした。多くのメンバーを抱えて、開発投資もして、それで大きな事業成長ができない…、これはもう本当に瀬戸際でした。

 この状態の1番の要因が、結局お客様に出会えないという事でした。まだまだ紙と電話が主役の世界なので「車両手配のシステムが欲しい」と考えるお客様なんてほとんどいないうえに、「ハコベル」なんて聞いたこともない会社には本当に誰も会ってくれませんでした。ですが、セイノーさんの手引きで「セイノーグループのなかに、こういう面白い企業があるから1回会ってくれませんか?」とつないでいただくと、山ほど会ってくれるようになったんです。それを潮目にいまちょっとずつですけど、上向きの兆しが見えてきて。

 お客様とお会いできるようになると、やはりどんどん改善のヒントが得られ、いろんな可能性が見えてきて、「お客様にどうしても会えない」というこの課題を華麗に解決したジョイントベンチャー設立という一手には、もう言い表せないくらいに感謝しています。

—— 「お客様に会える」ようになったことで、課題の種類や質が変わっていくわけですね。

 ええ、もう全然違います。いまの課題はシンプルかつ前向きなものになっていて「いかに早く、システムを入れたいと考えるお客様に出会うか」です。これはセイノーさんと組む前からの経験を通して痛感しているのですが、「システム?要らないです」というお客様に一生懸命説明しても「確かに!うちに必要だ」とはならない。その点はどうやっても覆せなくて、お客様側で「やらなくては!」となったときにお話させていただく機会をいただくことが大切です。なので、いまは「確かにこれはやりたい、これを求めていた」というお客様に、いかに早く出会うか、というのがカギとなっています。

 もちろん1度ふり向いていただけなかったお客様のニーズを顕在化することも重要ではあるのですが、今はとにかく多くのお客様とお会いすることにコミットしています。先日もとあるメーカー企業様が説明を聞いていただき、即「導入したい」という反応をくださいました。いませっかく兆しをつかみ始めていますので、もうしゃにむにやるしかない!と腹をくくって毎日訪問を繰り返しています。

なにを言ってもスベっていく。苦悶から浮上した「これをやる」という腹決め


—— 機会をモノにする!という意気込みが伝わってきます。物流DXは難易度の高い事業のように見えるのですが、入社当初から今の勢いで事業を牽引してこられたのでしょうか。

 そうでもないです。入社して半年から8ヶ月ほどは、ダメダメでなんにもできないっていう感じだったんですよ。ただ、とにかくオーナーシップというものをハコベルに来てからめちゃくちゃ鍛えてもらって、それが今につながっているなと思っています。
 当時、私が入る前にDX事業部を中心的に回していた方々がいくつかの事情が重なって相次いで離れてしまい、入社してすぐの自分と2~3ヶ月前に入ったもう1人と2人で事業を進めていかないといけないという状況になりました。

 DX事業責任者候補として採用いただいたこともあって「渡辺さんがDX事業を伸ばしていってください」という期待を伝えてもらってはいたのですが、事業は全然伸びなくて。受注はできないわ、お客様とは会えないわ、他のメンバーも誰この人?って感じで見ている気がして。全然社内の信頼も得られないし、社内のシステムも物流のこともよくわからないし、結局6ヶ月くらい時間を無駄にしました。いやもう、ダメダメで本当にどうしようかと思っていました。

 今でも覚えているんですけど、そのときある施策を私が立案してがんばって進めたんですけど、2ヶ月くらい経ってもまったく成果が出なかったんです。事業全体の振り返りの場である方が「これってしかるべき人がちゃんと入って進めていたら、予見できた失敗だと思っていて、私は2ヶ月むだにしたと思っています」と言っていて、まったく返す言葉がなくて死ぬほどつらかったですね。そのコメントは誇張でもなんでもなく、私も「ホントそう思う」と感じたので非常に落ち込みました。

 他にも当時、経営会議にも出させてもらって、発言する機会もあったのですが、なんかずっと違和感がありました。自分が言った言葉スベっているな、と。誰からもなにも返ってこないな、一体これはなんなんだろうな、とずっと思っているのですがどうしたらいいかわからない。そんな状態でした。

—— なにを言っても手ごたえがなくスベっていく感じ、つらいですね。どこできっかけをつかんだのでしょう。

 しばらくダメですよ(笑)。あまりにも私が空回ってうまくいかない状況から、執行役員の田島さんに1on1MTGの時間を定期的につくってもらえることになりまして。そこでのやり取りが状況を変えていけるきっかけになりました。あるとき田島さんから、「なににコミットするか、スタンスを決める事が大事だ」という話をしてもらったときに、「これがすべてにおいて足りていないのでは!?」とピンときた気がしました。

 ハコベルって、ちまたでよく言われる理論・理屈とか、フレームワークみたいなことをすごくきらう風土があると思うんです。そうではなくて、一次情報、自分で汗をかいて、自分で現場に行って、自分で試して得られた情報から組み上げていけっていう風土です。私はずっと頭でっかちだったんで、理論としてはこうだ、他の会社はこうだ、SaaSとしてはこうだ、みたいなことをやってずっとスベり続けていた、ということにようやく気付けました

 発言なんかも、とにかく反対されないようなことをなんとか言おうと思っているものだから、それはスベるよなぁと思い至りました。誰も賛同してくれなくてもいいし、みんなに反対されてもいいから、「自分としてこう思うんだ」ってことを発言する、発言したからには自分でやりきって正しさを示す、というのを腹を括ってやることが大事だと気づいてからは、周りの人ともギアがかみ合いだして、手ごたえが増してきたんです。

 「オーナーシップ」は、究極社長が反対したとしても「おれはこうだと思うからやるんだ」という腹決めであるということがわかった瞬間に、いろいろなことが回り始めました。成果につながるヒントは人から教えてもらえるようなものではなく、自分が体験してつかむしかない、そこでやっとわかったんです。

 ハコベルの直前にいた会社で私は上海に赴任していて、そこで一緒に仕事をさせていただいた社長に今度ハコベルにBiz dev.として転職すると伝えたら、「渡辺さんはすごく優秀です、だけどあなたは波が立たないプールは泳げますけど、海ではおぼれますからそこだけ気をつけてね」って言われたんですよ。今になってみるとそのコメントが、うー、これかぁ!って(笑)。

 その後、ボードメンバーの方々との会議などでも、「この場で求められていることはなんだろう?」とか、「いまの立場としてどういうことを言うべきか?」ではなく、「私はこう思います」という話をするように意識しました。すると、すごく会話がスムーズにいって、「あ、なるほどな」と、感覚をつかんでいった気がします。

 ハコベルでは「この会議って誰がオーナーですか?」とか、「その後は誰が玉持ちますか?」とやり取りするシーンが多々ありますよね。オーナーシップという言葉の意味合いがわかってから、こういう会話がものすごく大事だなとわかりました。「で、誰がやりきるの?」という話が決まっていかない限り、まったく事業は進んでいかないということを身をもって理解しました。そこら辺がガチ!っとはまって、壁が突破できたなと感じています。

「3ヶ月前にできなかったか?」の問いに込められた真意に触れた衝撃

—— 胸を打つ話ですね。他にもハコベルで経験された印象的なエピソードなどあればぜひ聞きたいです。

 これはハコベルのすごいところだと思っていますが、オーナーシップを持って進めたことの失敗は、当然振り返りはするんですが、変に責められることはないんです。たとえば、今年の初めごろ、とにかくもう私が先陣を切って西濃運輸の各支店さんを訪問して「DXの営業を一緒にさせてください!」と軒並みお願いしていた時期があるんです。アクションを通していろいろヒントは得られていたんですがまぁ、すぐには成果につながらず。

 その報告をするMTGのときに「今この会社のなかでDXをセイノーさんと売っていく覚悟を持って1番支店を駆け回っているのは渡辺さんだし、誰よりも高い解像度を持っているんだから、渡辺さんがこれをやる、というなら思い切りやっていいから、任せる」と言われたんですよね。ああ、こういうことかって。それはすごいありがたいなと思って。

 もうひとつ、なにか良い成果があったときに狭間さんによく言われるのが「これって3ヶ月前にはできなかったかね」ってコメントなんです。最初は「うわぁ、厳しいな…」と思っていたんですが、どうやら遅いことを責められているのではないな、とあるとき気づきました。

 「自分もこのあたりをしっかり見れていなかったのだけど、会社としてもっときちんと向き合えていれば、もしかしたら3ヶ月早くここにたどり着けたんじゃないかなと思って」というコメントを聞いたとき、「ああ、この人は良い成果を得たときにも、それでよかったねではなく、更にふり返りをしてるんだ…!」と気づいたんです。

 自分自身の行動や会社としての動きにおいて、自分がこの判断を3ヶ月前になぜできなかったんだ?できたとしたら?あるいはできなかった理由はなんなんだ?とか、おそらくご自分のなかで甘えだとか、優先順位の話とか、内心気にはなっていたけど見過ごしていた、とかを徹底してふり返りをなさっているんだろうと思ったのです。それで、「3ヶ月前にできてなかったかね?」という問いは責められているのではなく、今後より早く成果を出すためにはどうすればよいかという前向きな問いであるとわかったのです。

—— その解釈ができる渡辺さんに感動しました。ふつうは単に責められていると受け取りますよ。それもまた、渡辺さん自身もふり返りをしてきたからなんでしょうね。

 まだまだ全然足りていないです。私が思うハコベルの良いところは「行動と思考の強度を求められる」ところです。急成長フェーズの事業・会社においては時間が勝負なので、今日持ち上がった課題はなるべく今日解決していかないと成長機運に乗りません。そうなると、行動・アクションのスピード、徹底レベルが重要。日々の行動と思考にきわめて高い基準を求められるので、大変ですけど楽しいなと感じますし、自然と日々の行動と思考を振り返る機会が増えました。事業をグロースさせるにはやはりここまでやらなくてはいけないんだなと日々実感しています。これは成長安定期に入った会社では絶対に起こらないリズム感なので、このリズム感を経験できていることがすごくありがたいです。

 とはいえ大変ハードであるのも事実でスピードも尋常でないので、ちょくちょくふり返りの時間を取るようにしています。モヤモヤが溜まってきたときにそれを一気にバーっとメモをして、メモを見ながら、「いま自分はここにモヤモヤしているんだな、ここの部分はただの自分のやっかみで、ここの部分はちゃんと仕事でアクション起こした方が良い部分だな」などと、整理するようにしています。

 ハコベルに入社するにあたってなにができるか、なにを知っているか、またはなにをやって来たか、というのはもちろん大事なんですが、結局ハコベルでなにがやりたいか、自分がどうしていきたいか?ということこそが、ものすごく大事なことだと思います。

 ハコベルに入るまで物流にはまったく関係のない業界にいたのですが、物流について知れば知るほど、人々の生活になくてはならない存在でありながら、根深い課題も残っていて、奥が深い業界だと感じます。もっとこうしたほうが良いのではないかとか、日々の仕事をしながらも自分のなかから湧き出てくるんです。大げさに言うと業界に対して自分なりにオーナーシップを持てている証拠だと思いますし、これだけ「自分がこうしていきたい」と思える仕事ができることは実に楽しいことだと感じています。






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