記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【覚え書き】梨×大森時生『6』発売記念トークショー


梨さんの『6』発売記念トークイベントが、2023/7/17(月)に阿佐ヶ谷ロフトで行われました。
イベント会場まで行くのは難しかったので配信チケットで視聴しましたが、ホラーファンが集まった現地……いいな……
濃い空間だったんだろうな〜☺️

アーカイブ配信期間が終了してしまいましたが、自分用の覚え書きとして、印象に残った内容をメモとして残します。

玄光社さんのウェブマガジンにも、現地の空気感が伝わるレポート記事がありますよ!


トークイベントでは、梨さんの新作『6』の内容についても御本人が解説してくれていたり、今までの他の作品などについても沢山語ってくださってるので、ネタバレありきの内容です。

本記事は『6』を読了後に読むことをおすすめします。


◎会場の様子

・プロジェクターとスクリーンがあり、その前のテーブルにはテレ東・大森時生さんと『拠点C』と書かれたオブジェが鎮座している……

石が積み重なってて、アンテナが刺してあって、紙に『拠点C』と書いて貼ってある。
本を読んだ人には解る演出ですね〜😇

・梨さんは暗幕の向こうで話しているので、会場の挙手の様子がわからず、大森さんに教えてもらおうとするシーンの空気感が面白かった。
「えっ?大森さん、ちょっと私からは見えないんですけど、どんな感じですか?(早口)」

・梨さんは、心の鎧として『カミソリレターブレスレット』を装備してきたらしい。
えっ、物騒だけどこんな可愛らしいものを成人男性が……ギャップ良き💫


◎梨さんと大森さんがお互いを知った切欠

・大森さんは『瘤談』から、梨さんを知ったという。
2人がタッグを組んだ仕事は、『滑稽』の依頼が最初で、そのまま『このテープもってないですか』にも参加した。

・大森さんは、Aマッソ加納さんから誘われた”新しいお笑いライブ”について思い悩んでる時に『瘤談』を読んで、「コレとお笑いイケるな」と思ったという(笑)

・逆に梨さんが大森さんを最初に知ったのは『Raiken Nippon Hair』から。
梨さんから見て、大森さんは「テレビのフォーマットをいかに悪用できるか苦心している」ように見えてるらしい(笑)

・梨さんは『滑稽』のときはずっとZoomで顔出しせずに打ち合わせをしていたため、大森さんたちスタッフに直接顔を見せたのは東京公演が最初。
スタッフ一同で一列に横並びして梨さんを待ち構えて、怖がられていた(笑)


◎梨さんと大森さん2人での仕事

・大森さんは、梨さんの知識量や造詣の深さに、とても感心している様子。

・もともと梨さんは、地方のお祭りに潜入してフィールドノートを書く研究に携わっており、民話的なものを収集するメソッドを学んでいた。

この辺の話を聞くと、梨さんのSCP記事に反映されてる感じがしますね〜

・ネット怪談、洒落怖で民話っぽい話が流行っていたとき(2007〜2008年)、読者としても研究者としても親しんでいたという。

・梨さん、大森さんは、会議にて作品の異常に細かい設定を決めていたが、実際に本編で使われたのは一割程しかない。


◎『このテープもってないですか?』制作秘話

・『このテープ』は4:3の黒い帯をギミックとして使おうとして、そこから話を膨らませていった。

・VHSテープが持つ得体のしれない不気味さ、恐怖表現への使いやすさについて2人で語る。
VHSは、中間色が潰れるため、セピアでノスタルジーを感じやすくなる特徴があるらしい。

・鯉にエサをあげてるビデオは、スタッフの小さい頃の実際のホームビデオをそのまま使ったという。

え〜!あれが本物の映像だったのか〜😲
程よく不気味だったよね〜

・NHKが実際に視聴者にビデオを送ってもらうアーカイブプロジェクトも参考にされていたみたい。
ここに「全然テレビ局で放映した覚えのない番組混じってたら面白いな〜」と考えたのが梨さん!

・大森さん曰く、テレビ局にリアル怪文書みたいなの送られてくるのは、あるあるらしい……ほわぁ……😮


◎『6』について

・大森さんの第一感想は「本当に嫌なこと考えるなぁ」だったという(笑)
『かわいそ笑』はある意味「他人事」、でも『6』は「もう全部じゃん」とのこと。確かに😅

梨さんは「例外を作りたくなかった」として、人間共通の恐怖を描いたようです。

・梨さんは長文よりも短編のほうが得意なので、玄光社から6話構成の短編集という提案を受けていた。
そこで『6』という数字にまつわる話にしようと考え、六道輪廻に落ち着いた。

・梨さんの今までの作風と打って変わって王道ホラー小説になったのは、その方が怖いだろうと思ったのと、ギミックを使ってくるだろうと予想してる読者の意表をつくためだという。

ええ、どこで仕掛けられるのかと、途中までずっと疑心暗鬼で読んでましたよ😌 まんまと!

・梨さんの『6』と大森さんの『SIXHACK』
同じ数字を扱ったのは偶然だったらしい。すごいねー!
大森さん、『SIXHACK』は言えることと言えないことが沢山あるみたい……
めちゃ言いにくそうにしてた(笑)

・2人共クリエイターとしては、作品タイトルの検索しやすさとかは気にする、という話をしてた。

『6』は検索すると「梨6個セット」とか出てきちゃうと言って笑う梨さん。
梨「ふるさと納税かお中元ギフトセットしか出てこない(笑)」

・『かわいそ笑』とか『滑稽』は元々この言葉を使ってるツイートと、作品のパブサにちょうどいい割合を考えて名付けたらしい。
大森「Twitterでそういう単語使う人って、本当嫌な文章書くんで〜」

確かに……😓
だいたい人を貶してたりする文脈だよね。

・『6』は「他の人の感想を読まないで、自分の中で完結して嫌な気持ちになってほしい」という、梨さんの意向があって、あえて検索しづらいタイトルになっているようです。

でも、検索しちゃう🥺

◎小説の内容解説

・大森さんが詳しく内容について質問してくださったので、とても助かった☺️

・エレベーターというモチーフを使った理由は、階段と違って隣り合ってない階にも行き来できるから。
『6』の世界は、幽霊の自殺バグにより、違う世界に自由に行き来できるようなってしまっている。

・最初は気づかないが、最後まで読むと一番良い場所のはずの天界が、すごく嫌な場所だと気づく絶望。

・死んだあとの世界のことは誰も知らない。ゆえに……
梨「”救い”としての死後の世界という概念を潰したかった」

死ぬことが怖いかもしれないけど、死んでからが本番の怖さがあるかもしれない、ということか?

・『6』は章のタイトルも、フロアの名前が入ってる単語を意図していたので、先にタイトルを決めてから中身を考えるという、いつもと違った方法だったらしい。

・地獄界が”イメージにあるような地下”ではなく1階なのは、苦し紛れに飛び降りても1階の床で阻まれる、思い通りにいかないということを突きつけるため。らしい。
このあたり、よくわかんなかった……

・梨さんは、なるべく卑近な言葉を使った文章にすることで、身近で自分事として考えてもらえるように意図している。

・畜生界の話を書いてる時は、『滑稽』『カンテサンス』『おにかいぼ』が同時進行制作。スゲー!😳

・梨さん的には、「お元気さま」(『おにかいぼ』より)などのフレーズの、使ってる本人は真面目だけど、読者には笑えてしまうという、世界観のズレに興味があるらしい。

・梨さんには「人を終わらす台詞リスト」がある(笑)
(例:「もうとっくに駄目です」)
→ネットで切り取られて拡散されやすいキャッチーなキラーフレーズを意識しているという。

・第四話に出てきた「違うやつ」とは何か?

(梨さんの解説)
ファランステールの人々は、コックリさんを通して畜生界に属するものを呼び出そうとしていた。
しかし、幽霊の自殺によって輪廻というシステムにバグが起こり、畜生様ではない存在が喚び出されてしまった。
畜生様を呼び出そうとしたら、違うやつが出てくるという怖さは、梨さんの初期作品にもあるモチーフ。

畜生界はファランステールよりひとつ上の世界。
合一することによって、自分たちの世界で少し高い位置に属することができ、苦しみが軽減すると信じている。

ファランステールから枝分かれして出来たのが修羅界の罰当たりな人たち。
メタ的に修羅界の成り立ちを入れている。

修羅界の人たちは意図的に罰当たりなことをして、罰を当ててもらおうとしている。
罰を当ててくれる→見ててくれた→お近づきになれた。
(有名人にクソリプしまくってみてもらうの「地獄版」)


◎梨さんのホラー観

・梨さんの作業用BGMは「幻聴を再現してみた」
う〜ん、独特なリズム……すごく不安感煽られますねコレ。

・梨さんの「ホラー」との出会いはインターネット怪談、洒落怖が最初。

・梨さんがトーク中に出てきたSCPは以下↓
SCP-7179 
SCP-682
SCP-280-jp
SCP-1981 は『このテープ』の参考にされた。
大森さんとは、ホラー作品の固有名詞を例として出しながら会議をしていたという。

・背筋氏の『近畿地方のある場所について』がバズり始めた時、梨さんの別名義だと思った出版社が書籍化希望のメールをしてきたらしい。え〜(笑)
梨「人違いです」

・『近畿地方の〜』のバズった理由について。
怖い話の断片を拾って物語を作っていく形式は近年っぽいと感じている。
「没入感があった上で、自分の好きなタイミングで楽しめるというのが、モキュメンタリー手法と相性が良かった」のではないかと語る梨さん。

ananに取材を受けた梨さん……!

阿澄思惟『忌録:document X』はネット上でホラーを書きたい人の教科書になるんじゃないかと思っている。

◎梨さん、大森さんの最近良かったもの


梨→閉園後のサンリオピューロランドでやってるお化け屋敷みたいなコンテンツ(『オバケンナイトメアランド in サンリオピューロランド』)が面白かった。

大森→『アフターサン』という映画。
今後呪われるとかいうのではなく、過去を振り返った時に「あそこはもう終わっていた」と感じる恐怖に関心がある様子。

梨さん→A24の作品好き。
とくに『ミッドサマー』に影響を受けて、Twitterアイコンに花冠をつけるほど。
実は元に戻せなくなったからそのまま使ってるらしい(笑)

かわいくて良いよね☺️💐

※時間がなくて語れなかったもの
映画『smile』
『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』
→暗闇の中を歩くイベントらしい……


◎梨さんの持ち込み企画!

『梨おすすめのスイーツ』というワードに笑いが巻き起こる会場。
意外にも梨さん、スイーツに情熱を持ってるタイプなのね……
大森「思ったより女性のお客さん多くて良かったですね」

梨さんオススメのスイーツ🍨🧁を記しておきます……↓

恵比寿 「ダカフェ」
期間限定メニュー。
フルーツたっぷりかき氷。
オススメのフレーバーはメロン。

阿佐ヶ谷 「シンチェリータ」
会場入りする前に食べてきたというジェラート屋さん。
梨さんはピスタチオ味が好き。

西荻窪 「typica」
桃とスパイスのパフェ。
小さいパフェなのに16層くらい味がある。

恵比寿 「アクイーユ」
プルっとしたパンケーキの上にでかい焼きマシュマロが乗ってる。

大森「僕が唯一、梨さんに声を荒げられたのが”恵比寿の近くに住んでいるのに全然パフェ食べてない”といったとき」

梨さんのオススメスイーツ、機会があれば食べに行きたいな〜🤤

◆梨さんと大森さんへ自由な質問コーナー

ここで会場のお客さんからの質問コーナー。
特に縛りはなく、梨さんと大森さんに何でも聞いて良い雰囲気だった。
私は咄嗟に思考をまとめて話すことが苦手なので、会場で質問した方々すごいな〜と思っている。
どの人も良い質問してくれてるんだよ!!

だいたいの意訳で内容を載せておきます……↓


・「ホラーを書いているが、梨さんは霊障などに遭ったことはあるのか?」

→まわりの同業などからは、そういう体験談はよく聞くが、梨さん自身は全く経験がないそう。
むしろ体験できたら喜ぶ勢い。

大森さんから「心霊整体」の情報。
整体が終わったあとに「◯◯体憑いてましたよ」と教えてくれるらしい。

・「梨さんが今まで一番怖かったコンテンツ、その理由、また恐怖の定義とは何か?」

→一番は決めかねるので答えられないが、衝撃を受けた作品のひとつが「蛇囚人」さんの「イカフライの中身」という怪談。
蛇囚人さんは、話し言葉をそのまま書き起こしたような作風で、「この語り口だからこその怖さなんだろうなというところがある」そう。

創作か実話かはおいておいて『本当にあったかもしれない』と思わせるような生々しさが好き。

・「梨さんは作品とネット上での反応についてどう考えているか」

→ネット上で連載中にパブサの反応を見て、それが作品の続きの展開に反映されることはあった。

・「大森さんは不意打ちのモキュメンタリーを得意としてきたが、名前が売れてきた今、やりづらい状況であると思うが、今後はどうやって乗り越えていくか?」

→『SIX HACK』で大森さんを主人公として出すという禁じ手を使ってしまったので、次は真っ直ぐにフィクションをやりたいらしい。

・「私は『6』について、SCP-2718のような”死後の世界に救いはない”というテーマの再解釈というふうに捉えた。
梨さんの作品にSCPやホラーSFが与える影響みたいなものはあるのか?」

→SCPの世界観が舞台装置として面白い。
というのも、「話のディテールを何故知ってるのか、誰が見たり聞いたりしたのか」といった矛盾を「SCP財団というすごい団体だから」で解決できる。
むしろ、不可思議な現象を収容する団体だから、それに特化した研究者たちがいないとおかしい世界のはず。

・「梨さんは幽霊の存在をどれくらい信じているか?」

→「いたらいいよね」というレベル。
身体の生理的反応や幻覚が幽霊の正体だとされる事例もある中、個人が「なぜそれを幽霊だと思ったか」のほうに興味がある。

ここで大森さんにも話を振り……
黒澤清監督の『降霊』みたいな感じ。確実に存在するが、それを見える資質のある人がいるかどうかの話。

・「文体模写の精度を上げるコツは?」

→おじさん構文を書くうえで「絵文字は使わない」と決めていた。
文体ではなく思想をトレースする。
「私がおじさんにならないといけない」
ガワではなく思想をトレースするのだ!

・「『滑稽』の再演の予定はあるか?」

→やりたいけど、今のところは無い。

・「現代人が抱える新しい恐怖とは何かあるか?」

梨→ネット上で「名前も顔も知らない人から悪意を向けられる厭さ」
大森→ネタとして弄ってる側の慢心、薄い線引が崩れる瞬間の恐怖。
傍観者と当事者の壁が実は薄いということに気づいていない恐怖。

・「ホラーとは関係ないけど、ホラーに出来そうなものへの着眼点。また、そういったものは何か今のところあるか?」

梨→「私としてはノーガードのところから殴りに行きたい」
因習村とか廃校とか、いかにもな設定は読者の心のハードルを上げてしまうので、梨さんとしてはなるべく下げたいらしい。

フラっと歩いてる時に目についたもので、連想ゲーム的にホラーに使えるか考える。
最近だと、メルカリの「◯◯様専用」を悪用できないか考えてるそう。

大森→出産とか気になってる。

・「すごいと思っている、メタ的な、構造的なホラーの作品はあるか?」

大森→白石晃士監督の『世界で一番怖い夜』という生放送のホラー
梨→白石監督の『ノロイ』と、小説でいうと三津田信三の作品

・「大森さんの番組ではテレビ局を超えて色んな畑の人を起用しているが、その理由や、選ぶ規準などはあるのか」

→見て面白いと思った人に声をかけている。
テレビ番組は決まったメンバーで決まった流れをやるというようなセオリーが出来上がってしまっている。
なのでテレビ的ではないものでテレビを作るハレーションが面白いものに繋がるのではないかと考えている。

・「本編以外にサイトを作ったり、アカウントを作ったりして物語の補強をしていることが多いが、その理由は?」

梨→答えを明かさないこともあるが、一応の想定解は作ってある。
それを明かす、明かさないは想定解を明かすことで怖くなるか、面白くなるか考えて公開している。

大森→メディアを超えて自ら調べようと突き進む感じ、自分から動いて知ってしまうことの厭さを生み出したかった。

・「一緒に作った作品中の、梨さんと大森さんの担当比率はどんな具合か?
今後、やりたいと思ってることは何か?」

→お互いに書いた内容をアレンジし合って何度も往復して話を詰めていったので、分業という感じではない。
場所場所で2人の割合は変わっている。

→リアルイベントを拡張したい。
お化け屋敷など、逃げられない場所で何かしらで絶望させたいという思いはある。


◎最後に梨さんから一言

「開いてるかわからないけど、各自帰りにジェラート屋さんに行っていただいて。よろしくお願いしまーす」
苦笑する大森さん。

スイーツ男子、ブレない〜🤗


✝✝✝✝✝✝

……という感じの2時間でした。
めっちゃ濃い話が聞けて、お二人のファンとして大満足のトークイベントでした……✨

『滑稽』の実際のドキュメントファイルが見せてもらえたのは嬉しかったな〜
本編には反映されなかった残りの9割の設定も見てみたいですね〜(興味本位)

梨さんの姿は見えねども、声の爽やかさとスイーツ好きな点が、作風とミスマッチで……良い……☺️
女子はギャップに弱いんですよ。

大森さんも会場とお客さんに気を配っての進行、お上手でしたわ〜
お二人の人柄が滲み出てる、良いトークイベントだった。

今後の展開、イベントなど楽しみにしてます〜!


『SIX HACK』まだYou Tubeで見られるので貼っときますね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?