見出し画像

米国血液学会・米国移植学会「造血幹細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんにおけるCOVID-19ワクチン接種」Section A

 今回は、米国から発信されている「造血幹細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんにおけるCOVID-19ワクチン接種に関する専門家の意見」を掲載します。

 前回までの欧州のものと合わせて、ご参考になればと思います。今回もそのままの和訳ではなく、要約+解説しています。

 Section AからDまであり長いので、まずはSection Aのみです。

緒言

 造血幹細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんにおけるワクチンの安全性と有効性に関するデータはほとんどありません。ワクチンによる抗体獲得の可能性は一般の人々と比較し低いことが想定されますが、米国血液学会・米国移植学会も基本的にはワクチン接種可能なのであれば、早期に接種することを強く推奨しています。


Section A: 造血幹細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんにおけるCOVID-19ワクチンのタイミング


Q. ワクチン接種推奨時期はいつですか?

 造血幹細胞移植あるいはCAR-T療法を受けた患者さんでは、抗がん剤・免疫抑制剤など様々な影響により治療後数か月間免疫抑制されます。それにより免疫応答が低下し、ワクチンの有効性(抗体を獲得する確率)に影響を与える可能性があります。しかし一方で、予防接種を遅らせることによって、これらの患者さんは万が一感染した場合、重症COVID-19のリスクにさらされます

 同種造血幹細胞移植患者さんにおける他のワクチン試験では、移植後3か月も6か月でも特に問題はありませんでした。COVID-19ワクチンにおいて、いつが最適な時期か、ということを決定するには、情報が不足していますが(まだわからないことが多いのです)、これらの患者さんは重症化リスクが高く、優先順位は高いと考えられます。

 早ければ移植後あるいはCAR-T療法後3か月以内に接種することもできるかもしれませんが、有効性を第一に考えると最適ではないかもしれません。なお、このとき、ワクチン製剤の差を考慮する必要はなく、患者さんは利用可能な製剤を受けることが奨励されます。

Q. どのような場合、ワクチン接種を遅らせることを考慮すべきでしょうか?

 造血幹細胞移植あるいはCAR-T療法、化学療法、B細胞機能を低下させる治療(例:リツキシマブ)は、ワクチンによる免疫応答の低下をきたす可能性があります。そのため、今後このような治療を予定している患者さんは、可能であれば、開始前または治療の合間にワクチン接種を行うことがすすめられます

 免疫グロブリン投与は、血液疾患および治療によってB細胞機能の低下により低ガンマグロビン血症になった患者さんに投与されることが多いです。新型コロナウイルス感染症が広がるにつれて、製剤の中にこのウイルスへの免疫グロブリンが含まれるようになると思われます(注:免疫グロブリン製剤は献血から製造されます。新型コロナウイルス感染症が広がれば、そのウイルスに対しての免疫を持つ方々が増え、その方々の血液からつくる頻度が増えるので、免疫グロブリン製剤中に新型コロナウイルスに対するグロブリンが含まれる確率が上昇します)。

 なお、免疫グロブリン投与を受けている患者さんにおいては、それだけの理由でワクチン接種を遅らせる必要はありません

Q. 1回目と2回目のワクチン接種の間に新型コロナウイルス感染症にかかった場合、2回目のワクチン接種は受けるべきでしょうか?

 2回目のCOVID-19ワクチン接種前に感染した場合、ファイザーもモデルナワクチンも2回目の接種を遅らせることをお勧めします

 症状が改善し、隔離が解除された時点で、2回目の接種を行うことができます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?