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On the border〜知らない世界に会いにいく〜ハマカワフミエ篇(後編)

ハマカワフミエによる、北九州取材旅行記、後編です!

美味しいパスタを食べたりスーパーで買い物をしたり劇場を見学したり豚バラ串が美味いと叫んだり宮村耳々さんと生配信したりした、一日目を記した前編はこちらから↓↓


後編では、二日目の模様をお届けします。
それでは、どうぞ!



一夜明けて、北九州の朝。この朝、私にはどうしてもやりたいことがありました。

それは、午前中の「旦過市場」をぶら歩きすること!!
これをどうしても外したくなくて、ホテルも旦過市場から1本道で行けるところを取ったくらいです。チェックアウトして、いそいそと旦過市場を目指します。

そろそろかな、と思った頃、国道沿いの歩道に、Apple Store新製品発売日くらいの勢いの長さのメチャクチャな行列ができていることに気づきました。なんだ、これ?列を追って歩いていくと、それはそのまま旦過市場の入り口まで続いていました。先頭付近まで近づいて分かったのですが、この列、旦過市場の中にある海鮮丼を朝食で出しているお店の行列でした!凄まじい人気。ビビりました。

旦過市場は全国でも珍しい、川の中に梁を立てた、半分水上に張り出したような設計の、市場街です。「北九州の台所」と呼ばれ、戦後闇市の流れから現在に至るまで、一般市民から料理人まで多くの人に愛されてきたとのこと。去年2度にわたる火災があり、多くの面積が焼失してしまいましたが、それらの区域は現在、跡地にプレハブの店舗を仮設して復興に向け営業を行なっています。
アーケードになっている入り口から中を覗くと、そこには古くからのお店が軒を連ねてずらり並んでいます。八百屋さん、魚屋さん、お肉屋さんはもちろんのこと、立ち食いそば、韓国の食べもの「ホットク」や「キンパ」のお店、漬物やかまぼこ、小倉名物「ぬかだき」のお店など、小さなお店が肩を寄せ合うように並ぶその様はまさに壮観。商店街でもあり、市場でもある。そんな光景でした。
特筆すべきこととして、野菜が安い。ぶっ壊れた安さです。まるまるとふとったつやつやのゴーヤが、1本100円。キャベツが1玉120円。心配になる安さです。良いんでしょうか、そんなお安くて!?

ここで私は朝ごはんをいただきました。入ったのは「ごはんやさん ロカンタ」。あさごはんセットなる和食のご飯をいただきました。パリパリに焼かれたウインナー、目玉焼き、きんぴらとお味噌汁、お漬物と、博多明太子。明太子大好きなハマカワ、この組み合わせは感涙です。ぬかだきなんかもそうですし、昨夜の豚バラもですが、北九州の美味しいもの、白いご飯が欲しくなります。完食しました。ごちそうさまでした!

そしてこの日の北九州案内人は、九州沖縄版で町屋要を演じた、青野大輔くん!
青野くんと小倉駅で待ち合わせ、電車に乗って目指したのは北九州の海運の要地、門司港です。

実は、青野くんとハマカワには共通点があります。それは、「電車好き」ということ。青野くん、Xのプロフィールに「初めて喋った言葉はパパママでんしゃ」と書いているくらい筋金入りの鉄オタさんなのです!対するハマカワは流石にそこまでの熱量ではないですが、若干乗り鉄の気があり、寝台特急や地方ローカル線など、普段乗らない電車に乗る機会を降りに触れ伺っているのです。乗ったのはJ R鹿児島本線。地方の電車に乗った時は車内広告なんかも目を凝らしてしまいます。ハマカワ、密かに、ウッキウキでした。
そんな青野くんに連れて行ってもらった門司港駅、レトロですごく風情たっぷり・・・!駅舎の細かい作りにキャーキャー言ってしまいました。門司港駅周辺もそうなのですが、街を挙げて「レトロ」を演出している地域のようで、大正ロマンな雰囲気が漂います。改札を出たところのロビーなんか、東京駅の丸の内南口みたいな雰囲気でしたよ。

降車するとちょうどお昼の12時。時報がわりに動いているという、駅前の噴水が噴き上がる瞬間を見ることができました。


青野くん 門司港ってもう、本当に貿易拠点の港湾都市なんですね。五市合併の前は門司市っていう独立した市だったんです。この目の前の、関門海峡って、狭いところで800mくらいしか幅がないんですが、ここが海運として使えなくなると、東京も大阪も青森の北の津軽海峡を回り込んでじゃないと海路では行けなくなるんです。
 え!?青森回り・・・!?あ、でもそうか、そうですね。
青野くん そうなんです、要所中の要所で。だから第二次世界大戦中は、この辺り、かなり機雷を撒かれたりしたらしいです。物資止まる、流通止まる、で、攻撃する側から考えたら攻めない手はない、というか。
 やっぱりそれも、八幡の鉄が。
青野くん そうですね。あの、昔はほんとうに、鉄が強くて。今、福岡市の方が人口多いですが、官営八幡製鉄所、というのが影響やっぱりすごくあって、北九州の方が「上」って感じあったんです。北九州市は百万都市と言いつつ実際の人口はもう結構前から百万人を割り込んでて、おそらくもう福岡市を人口で上回る日は来ないと思います。
 青野くんは今は福岡市在住なんだよね?
青野くん そうです。実家は北九州と福岡の中間くらいのところで、大学は北九州で。
 ここ(門司港)は、見てるとなんか、むしろ山口県の方が近いのかな。
青野くん あ、でも実際距離的にはそうですよ。あの向こう岸に見えてるの山口県ですから。門司の人たちは「門司の言葉は小倉より標準語に近い」って主張したりします。笑
 うん、確かにこの距離感なら、遠泳できる人は泳げそう・・・
青野くん や、無理です無理です!潮の流れすごい速くて激しいんで。死にます。
 し、死ぬ!?そのレベル!?
青野くん 死にますよ。あの、岸のところに赤い点滅してる「W」とか出てるの見えますか?あれ、潮の流れが変わりまくるので、今どっち向きの潮が流れてる、っていうのを表示してるんです。あ、今「E」に変わりましたね。
 本当だ。ああいう表示が船舶に必要なくらいの海流、ってことなんですね。


このあと、「門司港グルメといえば焼きカレーが定番です」とのおすすめを受けて、すごく可愛い作りの焼きカレー屋さんへ!
この、焼きカレーを食べる青野くんのお姿は、実は映像で見られます!
スーパーマチヤの町屋要さんの弟、町屋望くんとして、スピンオフ映像にご出演いただきました。望くんは大学卒業後萩島を離れ、北九州で就職、兄に送る手紙、という内容で、小倉、門司港周辺でたくさん撮影させていただきました!安藤理樹と青野くん、本当によく似てるんですよ。顔が。
そもそも青野くん、九州沖縄版では町屋要を演じていたこともあり、この兄弟キャスティングはなかなかの見ものです!こちらからぜひ、ご覧ください!


小倉へもう一度戻り、今度は昨日お会いした鄭くんが合流です。

ここ行った、あそこ行った、とハマカワの行動履歴をヒアリングした鄭くん、「結構あちこち行かれたんですね。あとは・・・平尾台行くか。」
青野くん共々車に乗っけていただいて(ありがとうございました)、平尾台、というところを目指します。私にはこの時点で、情報ゼロ。

「カルストです」「鍾乳洞があります」「田舎の方の北九州です」と断片的な情報は教えてもらいましたが、田舎の方で鍾乳洞があるカルストなんだな・・・?と聞いたままのことしかわからず。今の時代、手元のスマホで調べればいくらでもわかったんでしょうけれど、せっかくなので、何にも知らない状態で到着することにしました。

車で行くこと1時間ほど。道中、明らかにどんどん風景が田舎になっていきます。最初にビルが消え、その次に大きな建物が減り、田んぼや畑が少しずつ増えて、最後は民家もまばら、国道沿いのコンビニやガソリンスタンドも思い出した頃にぽつりと姿を現す程度の、せいせいした風景が広がり始めました。
車は山の中をゆく細い道に入ります。相当にきついカーブをいくつもいくつも曲がりきり、どんどん標高の高いところへ上がってゆきます。

「着きましたよ」と言われて到着したそこには、こんな風景が広がっていました。





見渡す限りの、カルストの草原でした。石灰岩が顔を出し、小高い丘の中腹を這い遠くまで連なりさざなみを打つような、一面の野原とつぶつぶたち。あいにくの曇天でしたが、これ、晴れている日に来たらどれだけきれいな光景なんだろう。そう思いました。


青野くん ここ、今いい感じに茂ってますけど、毎年野焼きするんですよ。
 野焼き?って、大文字焼きとかのあの、わざと焼くやつ?
青野くん そうです。毎年春先に、焼いてます。
 そんなバーベキューみたいな。
鄭くん 焼いて、綺麗にするんですよ。
ハ 私、全然わかってないんだけど、野焼きって綺麗にするために焼くの・・・?
青野くん 冬越した後に、一回焼くんですね。それで茂りすぎた草木とかを焼いて綺麗にして、草原を保ってるらしいです。
 焼かないと、森林になっちゃうってこと・・・?
鄭くん まぁ、そうですね。焼けすぎてほぼ山火事みたいになっちゃったりもするんですけど。それでも野焼きする時は決まってるんで消火はすぐ出動できますけどね。
 あ、飛び火したりとか?!それは怖い。
青野くん 去年も一回火事なりましたね。そんなにひどいことにはならなかったですけど、一時避難した住民の方はいらっしゃったみたいですよ。
鄭くん あと、ここの鍾乳洞は、一応国の天然記念物です。見たいです?ハマカワさん。
 え、見たい、けど、厚底サンダルだなぁ。大丈夫かな?
鄭くん はい、やめ。無理です。
 残念・・・今度はスニーカーで来ます・・・


小倉駅周辺の都会ぶりと、このカルストや鍾乳洞が同じ一つの市内にある、北九州市の顔の多彩さに驚きを隠せませんでした。平尾台は地元の小学生の遠足にも選ばれるコースだそうで、この風景を心のふるさとに持って大人になれることを、なんだかちょっと羨ましく思いました。

平尾台からの帰り道、小さなカフェを道すがら発見。ちょっとお茶でもしていこうか、と思ったらあいにくのclose。しょぼん、としたものの、中にいらっしゃった店主さんが「もう閉めようと思って散らかってたのであれなんですけど、もしそれでもよければどうぞ」と、店内に入らせてくださいました。

これが、このお店が、私が想像していた、苗山さん営む「カフェ・プリエンティ」そのものでした・・・!坪数、天井の高さ、席数、カウンターがあって、テラスも少しだけ、木の味わいのテーブルや椅子、そして漂う、スパイスの香り・・・!!

「明日の営業のための、カレーの鶏肉を仕込んでたところです、お出しできないんですこれは、ごめんなさい」と微笑む店主さんも、どこか苗山さんのイメージに重なります。
そして注文した、ブルーベリースムージー。これがまた美味しくて・・・!
平尾台で採れたブルーベリーを使用した地産地消メニューだそうで、控えめな甘さ、果肉と果皮をしっかり目に感じられるちょうどいいあらごし具合の一品でした。美味しすぎて、「グラスからなくならないでほしい・・・飲んでもなくならなけりゃいいのに・・・なんで無くなるの・・・減らないでよぅ・・・」と呟き続け、青野くんにも鄭くんにも「飲まなければ無くならないんですよ」とつっこまれ続けました。ふらり立ち寄ったお店で、こんなに苗山さんを、自分のお店、プリエンティを感じることがあるなんて。旅の醍醐味、ここに極まれりでした。


ひつじcafé



小倉駅まで送っていただき、帰路。福岡空港を目指します。鄭くん、本当にどうもありがとうございました。

博多駅を目指す特急列車に乗る道中、青野くんにJ R九州の実態や車輌のお話、立体交差駅のあれこれなども伺いましたが、この辺りちょっと鉄ヲタみが強くて、あまりにも趣味の話すぎるので、割愛させていただきます。青野くん、ごめんなさい。私は聞けて楽しかったよ!笑
そして、博多駅で青野くんともお別れです。青野くん、あちこち一緒に回ってくれて、本当にありがとうございました。ハマカワ、一人になって福岡空港へ移動し、東京行きの飛行機に乗り、見慣れた羽田へと帰ってまいりました。




東京から飛行機で1時間半。ほんの一眠りすれば着いてしまうような場所ですが、そこは確かに違う文化の根付いた、地方の暮らしのある街でした。旅先で、誰かの暮らす街、誰かの育ったふるさと、「地元」で生きる人たちの姿、こんなふうにじっくりと意識してまなざして、旅をしたことはこれまで多分、ありませんでした。よそからの来訪者に自分の街のことを話す時、表情の中にいちだん柔らかく深いものが混じる、あの感じ。地元の仲間同士で、あの店が、とか、そこの通りの、とか、お互いには通じる固有名詞で会話が続く時にそこはかとなく漂う、ひそやかな親密さ。地元の友達、というつながりから離れてずいぶん久しい私には、そのささやかでパーソナルな、静かに脈を打つような部分を覗き見させてもらえたことこそが、何よりの取材成果だったような気がします。

一泊二日の弾丸旅行でしたが、宮村さん、青野くん、鄭くんにご案内していただいたどの場所も、本当に心に残りました。いつかきっとまた行きます。その時はまた、遊んでね。

本当に、どうもありがとうございました。

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