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豊胸で大炎上したてんちむがスゴすぎる。2か月で好感度を爆上げした理由

てんちむがすごい。すごいったらすごい。すごすぎる。
豊胸隠ぺいによる大炎上からわずか1か月で好感度を爆上げし、ファンを増やしたのだ。炎上直後は30%だった高評価が、12月頭には88%と約3倍になった。
炎上直後はチャンネル登録者数が2万人減って136万人だったが、復帰からわずか1か月で147万人と10万人以上増やした。11月26日現在、復帰から2か月足らずで152万人と150万人の大台も突破している。驚異的なスピードだ。

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YouTubeは100万人を突破すると登録者像のハードルがさらに上がり、伸び悩むと言われている。炎上によるイメージダウンという逆風の中、すさまじい再起力である。

本件から「炎上時の神対応」と「人気のメカニズム」を分析したい。

■てんちむ豊胸事件とは

てんちむとは天才テレビくんで人気だった「てんかりん」こと橋本甜歌さんのことで、現在はYouTuberだが、(おそらく)元親友経由で豊胸が暴露され、バストアップ商材を「自力でAカップから〇カップにした」と言って複数プロデュースしていたことから「詐欺だ!」と大炎上した。(このドロドロの暴露事件についても後日まとめたい)

女性がコンプレックスを抱きやすいバストに関する嘘だったことも「自身も貧乳をコンプレックスにしていたのに、人を騙すのか」と炎上に拍車をかけた。こちらの炎上後の謝罪動画は、高評価が5.2万なのに対して低評価は12万もついている。約7割が低評価だ。

お笑い芸人の宮迫さんのYouTube初回動画は再生数が555万回だが、てんちむの謝罪動画は628万回。トップYouTuberとはいえ、本件がかなり注目を集めたことは明らかだ。

今は謝罪動画のコメント欄が閉鎖されているが、詐欺師だ、逮捕しろなどと批判的なコメントが圧倒的に多かった。その後YouTube活動を1か月休止したが、YouTube復帰に対する賛否はちょうど半々くらいだったように思う。

ファンからも応援の声と失望の声の両方が上がっていた。ファンからもネガティブな声が上がったのは、てんちむがバストアップ商材に関して
「努力で豊胸した私が本気で作った商品」
と何度も言っていたからである。豊胸以外にもさまざまな努力を行ったのは事実とのことだが、豊胸したのとしてないのとでは当然大きな差があり、信じていたファンや購入者が騙されたと感じるのは当然だろう。

↑モテフィット販売時の告知動画

と、ここまで冷静に書いてきたが、何を隠そう私もバストアップ商材を購入した消費者の一人である。深刻な貧乳なのだ。(つらい)

炎上時、ネット上には
「ブラジャーとかサプリで乳がデカくなるわけないだろw騙される方が悪いwww」
という乳も涙もないコメントが山ほどあったが、これは貧乳の気持ちがまったくわかっていないノーデリカシー男性あるいは傲慢な巨乳の戯言である。(男性=ノーデリカシー、巨乳=傲慢という意味ではなく)

赤子じゃあるまいし、そんなことはわかっている。それでも「これで胸のサイズが1ミリでも大きくなったらいいな…」と願掛けのつもりですがるのである。
乳デカになれる・なれないじゃない。「乳デカになれるかも」という夢と希望を買うのだ。
宝くじと一緒、お守りと一緒、星に願いをと一緒。
夢見る乙女にはすべらかくやさしくしてほしい。いや、しなければならぬ。しろ。

そんなわけで、貧乳である私は応援していたインフルエンサーにない乳を抉られるような気持ちになり、なかなかにつらかった。

■炎上前は「ずるい美人」だった

炎上前、てんちむの動画はややマンネリ化しつつあった。
「金持ちだけど飾らない、がさつな美人」
というキャラクターなので、やる気に溢れた企画動画やロケ動画は多くなく、自宅でだらだらしながら撮る語り動画や、ウーバーイーツをただ食べる動画などが多かったのだ。

これらも「気楽に見れる」「親しみやすい」といった点ではプラスで、ローコストで作っているためコスパもいいが、その分「楽して稼いでいる」と捉えるユーザーも多い。

登録者数は100万人を超えていたが、高評価・低評価数はそれぞれ1万以下と、今ほどの反響はなかった。

そもそも、初期のてんちむはもっと好感度が低かった。「ビッチな金持ちゲーマー」というキャラクターで反感を買いやすく、民度の低いユーザーやアンチを集め、コメント欄は治安悪めだった。

そこから美容コンテンツを増やして女性ファンをつけ、自分の弱さやだらしなさを露呈することで徐々に好感度を高め、ポジティブなコメントやネガティブなコメントを上回るようになった時期に炎上したである。

炎上前、てんちむの好感度を下げていた要因は
家でダラダラしている(ように見える)のにブランド品だらけの金持ち
→楽して稼いでいる(ように見える)

というところにあったように思う。「ずるい人」に見えるのだ。

協調性の高さゆえに同調圧力が働きやすく出る杭は打たれる日本において、金持ちの好感度の低さたるや。てんちむは金持ち属性に口の悪さ(ギャルっぽさ)と美貌が掛け合わせることによって「なんか気に食わん」と妬みの感情を底上げしたと思われる。

そしてふつふつと潜在的な火種がくすぶっていたところに「詐称(詐欺)」という巨大な着火剤が投下され、ここぞとばかりに燃えた。

■人気を急上昇させた5つの要素

てんちむは9月2日に謝罪動画を公開して1か月休止し、10月2日からYouTube動画投稿を再開した。
ここからが本当にすごい。炎上直後の136万人からみるみるうちに登録者数を伸ばし、2か月足らずで150万人を突破してしまった。

炎上により失墜した好感度を回復させ、人気を急上昇させたポイントは5つある。

1、 土下座
2、 切腹
3、 都落ち
4、 重労働
5、 口コミ

日本人受けする要素をこれでもかと5点責めしている。それぞれ解説しよう。

1、 土下座

復帰第一弾の動画は、街角での謝罪企画。渋谷で一般人にてんちむに聞いて質問し、あとからてんちむが登場して直接謝罪するというもの。実際に土下座まではしないのだが、てんちむの表情を見るとメンタルがやられているのがわかる。

実際に登場する一般人を見ているとわかるのだが、実際に本人を目の前にすると石を投げる気が失せるものである。視聴者も画面に写る一般人には自身を投影しやすく、腹が立っていても「なんかもう許そうかな」って気になってくる。そもそもバストアップブラ購入者以外は関係ないし、そんなにてんちむに怒る必要ないよねっていう。

2、 切腹

てんちむは炎上時にプロデュースしたバストアップブラ「モテフィット」を自費で全額返金すると発表した。自分で決めたらしい。炎上直後に即手を打ったのは、炎上対応として花丸だ。怒りの炎を鎮火するには、とにかく早く謝ったほうがいい。

その後、ヒット商品であるモテフィットの返金希望者から販売会社であるキレイノワに問い合わせが殺到。電話はつながらない、メールは1週間たっても返信がこないと散々たる有様であった。

てんちむは販売会社にも豊胸の事実を隠していたようで、てんちむは販売会社に対して「返金額+販売会社への対応手数料30%」を自費負担すると公表し、返品された商品代×1.3を支払うこととなった。このほかにもさまざまな案件がとん挫したため、多くの違約金が発生した。

炎上時にすぐ自身で返金する旨を発表し、休止中も返金対応についてSNSなどでアナウンスするなど謝罪を重ねたことが功を奏し、復帰の報告動画では高評価が5万、低評価が2.8万と64%が復帰を好意的に捉えたようだ。

炎上直後が30%だったので、倍に持ち直している。

3、 都落ち

多くのトップYouTuberがそうであるように、てんちむも高級タワマンに住んでいた。さらに新築の高級マンションも購入し、頭金をすでに支払っていたが、返金や違約金が膨らんだことから平凡なワンルーム(しかも1階)に引っ越し、新築マンションの購入もキャンセル。入金済みの頭金はキャンセル料として相殺されるという。

住んでいるのは都内だろうし正確には「都落ち」ではないが、住環境のランクは格段に落ちている。ずっと高級マンション住まいを見ていた視聴者からすると衝撃だ。引っ越し当初は冷蔵庫すら置かず、クーラーボックス生活をしていた。

動画の高評価は8.1万、低評価は3.7万。高評価率は68%と順調に増えている。

4、 重労働

てんちむは禊企画の一環として、さまざまな「お仕事体験動画」をアップしている。炎上前はウーバーイーツを月20万円分も食べて動画にしていたてんちむがウーバーイーツの配達員バイトをしたり、飲食店バイトをしたり、レンタル彼女、ホスト(?)、キャバ嬢、SM嬢などなど。

「はーんなるほど、YouTube以外にも一般のお仕事を体験して、禊をしつつお金の有難みを再確認するってストーリーね、ハイハイ…やっぱりてんちむはブランディングがうまいな~」

なんて思っていたらその上をいくのがてんちむである。この「破産寸前になりました」という動画で、多くの視聴者が手のひら返しをした。

現時点で返金額と違約金で約2億円が飛んだらしく、12月の税金も支払えないとのこと。歩合制で大金を稼げる可能性がある銀座の高級クラブのホステスと、六本木にあるショー・クラブで実際に働くという。いずれも動画の企画で仕事体験した仕事で、給与体系を踏まえて入店を決めたようだ。

日中はYouTube撮影、平日の夜は毎日ホステス、土日の夜はダンサーとして働くそうだ。休みなしの重労働である。睡眠時間は数時間だろう。返金や違約金、税金を支払える目途が立つまでは続けるとのことで、すでにクラブでは働きだしており、てんちむ指名の客で満卓、初日から最高峰のワイン・ロマネコンティ(会計1000万円)が入り、とんでもない金額を稼いでいる。すごすぎる。

さらに、今まで爆買いしていたブランド品をメルカリで出品し、公開。切実感がすさまじく、ものすごくリアルだ。これらの行動により、好感度を下げていた金持ち要素がグンと減った。

ここまですると大体の人は何も言えなくなる。本件を伝えた動画は高評価が5.5万、低評価が1.8万。炎上直後は高評価が30%だったのに、75%にまで跳ね上がった。

5、 口コミ

「赤信号みんなで渡れば怖くない」と言うように、まわりに合わせる日本人は口コミに弱い。第三者の評価(他者評価)を気にするのである。心理学でも第三者の評価は信頼されることがわかっている。

てんちむはもともと交友関係が広く、炎上後はさまざまなYouTuberが声をかけてコラボし、てんちむを救う動画が多々公開された。これはもともとの人柄ありきだろう。

トップYouTuberが次々にてんちむに手を差し伸べる様子を見ると、一般視聴者も
「そうか、てんちむは実際はいいヤツなんだな」
と思うのである。

トップインフルエンサーばかりなのでみんな身の振り方を分かっていて、てんちむの好感度が上がるように、叱ったり禊企画をさせたりとあえて下げる企画をしている。やさしい配慮により、うまく「笑えるエンタメ」にしているのだ

こういうのをたくさん見ているとなんだか泣けてくる。親・親戚のような気になり
「悪いことしたけど、これからは反省して頑張ってね!」
みたいなやさしい気持ちになってくるのだ。

=(12.01追記)=

タイトルなし

てんちむが現時点での返金推定額が4億2000万円(手数料込)だと発表。すでに2億2000万円を渡しており、残り2億円ほど支払う予定だが、自身の手元には1300~1400万円しかないとのこと。この他にも他社への損害賠償金が発生しているそうだ。支払っている証拠として通帳なども公開している。
ていうか、モテフィットってとんでもなく売れてたんだな…

この動画で重ねて謝罪するとともに、クラブやショー・クラブでの勤務について述べ、高評価数は4.2万、低評価数は6000。なんと高評価が88%になっている!ほぼ9割じゃん。

コメント欄にも「たくさん広告を入れてくれ」「応援したい」という声がずらずら並ぶ。すごすぎる。

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■てんちむに学ぶ「人気のメカニズム」とは

まとめると、炎上時の神対応は下記だ。

・速攻で謝る
・何度も謝る
・経済的or 精神的痛手を負う
・自分が落ちた様をエンタメ(おもしろさ)にする
・自虐的キャラクターになる
・自演っぽくならないよう、周りにも協力してもらう
・上記を単発で終わらせず、一定期間継続する

これはつまり「めっちゃかわいそうなヤツになれ」ということ。
「かわいそうだな」と感じる相手にはやさしくしたくなるのだ。
そしてそれを「おもしろい」と感じるエンタメ、キャラクターにまで昇華できれば、炎上前より人気者になるだろう。

残念な美人、不器用な金持ちなど、なんらかの「かわいそう」を背負った人は、妬まれ要素があっても愛されるのだ。
かわいそうな部分こそ愛されポイントである。
真の人気を集める人とは、強い人ではなくかわいそうな人なのだ。

私はてんちむほどの美貌も財力も実力もないが、てんちむの再起から「ダメなところもさらけ出して生きよう」と学んだ。貧乳でも胸を張って生きるのだ!!

ダメな人も失敗した人も、何度でも再チャレンジできるやさしい世界になりますように。

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