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幸せな犬 懺悔篇

18:00

スチームサウナで考える。
noteの話である。
郡山の話、第1章を今朝アップした。
第2章~第7章まで出来てはいる。
全ての話も、最後まで一応は終わってもいる。
が、読み返せば筋と骨組みしかない部分や
あった事実のみ、事柄のみの所が目立つ。
そこには、心が記されていない。
これを紀行文とするには忍びない。

汗をぬぐう。

旅することは
そこで体感する事象へ心通わすことだ。
なにかを見ても見ただけでは旅とは言わない。

サウナを出て水シャワーを浴びる。

つぶさに書き起こすには記憶をたどり
精神状態を理解する必要がある。
意識の遡上自体は瞬間的なものだが
その先には長い時間の感覚と
膨大な情報の波を有している。

シャワーの水滴は止まって見える。

現実世界において、時間は有限だ
肉体的な稼働範囲も限られる。

体の熱が雑念と共に排水口へ流れていく。
蛇口をひねり水を止め少し体を拭く。
やめよう。難しく考えるのは。

湯船に浸かり、ぼんやりとする。
温まっていく身体を解す。

まぁいいか、出来る範囲でやってみよう。
もし出来なくても、それはそれだ。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

19:00

鑪ら場に到着。

買い太郎さんの企画
「幸せな犬」

地下への階段を降り扉を開ける。
店内の客席は上下2段になっている。
厨房横に階段がある。下の階も客席。そこに
丸眼鏡をかけた細身の人物が座っている。
私を見つけ、眼鏡の奥の瞳を丸くしている。

「あー、髪ぃ…!」

原田茶飯事さん。
5月のローリングマン移転オープンの
ライブ以来の再会。あの日も最高だった。
私がまだヘアドネーションする前で
髪の毛がべらぼうに長かった時期だ。
久々の再会、容姿の変化が著しいためか
とても驚かれている様子。

驚かそうと思って計画することは良くある。
けれど、ふとしたことで驚かれるのも
存外に、悪くないものである。
驚く相手に驚いて。少し照れる。

「うへへ髪切っちゃいました~」

気味の悪い笑顔のまま、受付をする。
お酒と揚げたホタテみたいなのを頼み
今日は2階で見ることにする。
急で狭い階段を上がり靴を脱ぐ。

2階は少しかがみながら歩く。
天井に頭をぶつけてしまうからだ。
秘密基地みたいで、これはこれで楽しい。
いくつかの小さな机と座布団が置かれている。

突き当たりまで行く。
目の前に大きなスピーカー。
ステージも上から良く見える。
ここに座ると人とはあまり触れ合えないが
音の対峙へ集中できていい。

程なく注文が届く。軒先からもらう。

ジャックの水割りとホタテみたいなの揚げたやつ

ライブ前に、顔見知り何人かに手を振る。
気が付く人、そうでもない人。。
みな、始まる前にウキウキしている。
気持ちがわかる。

ライブが始まる

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

藤山拓さん

冒頭、会場の雰囲気と気持ちの高揚を
そのままギターの音色と歌声にする。
即興はいつ聴いても新鮮だ。
毎回新しい風を連れてきてくれる。


上着と帽子を身に付けてのスタート
途中から暑くて脱皮

ライブ中、彼はとてもアグレッシブに動く。
爽やかな夏の風を、楽しむように
放課後の切なさを、振り切るように
観客の心が揺さぶられていく、そして
彼自信も音楽に揺さぶられていく。

「girl2」
「水面」
「ひかり」など。

即興やアドリブも良くやる。
むしろやらないステージに覚えがない。
過去、ムチャ振りもあった気がする。

今回もとある曲で、彼の悪ノリは発動する。
間奏に入り「トロンボーン!」と声をあげる。

知っている人は何が起きるか分かるであろう
茶飯事さん十八番「口(くち)ホーン」である。

実際にトロンボーンを吹くわけではない。
だが、極上のマイクパフォーマンス。
トロンボーンの形態模写…
いや、管楽器人間である。

藤山さんの、間奏に呼びたい!呼ぼう!
その気持ち、とてもわかる。
見たいもの、皆も。けど残念だったな!
茶飯事さんは演者控え室から出たばかり!

「(なんかありました?)」
茶飯事さんは状況を捉えきれていない様子。
僅かの間の後に、
「(あぁ、なんか呼ばれた気が…)」
「(みんなこっち見てるしなぁ…)」
と、何となく察してのっそりと
マイクのほうへ行く茶飯事さん。

表情は無に近い。ただ、目が笑っていない。

ギターの間奏を続ける藤山さんを見据え
おもむろに合わせてホーンを奏でる。

「気遣いの茶飯事」の異名もあるが
伊達じゃない。美しい旋律である。

後に、藤山さんは「打ち合わせしてない」
と供述しており、これに対し
茶飯事さんは「あとで説教やな」
とのコメントを発表しています。

話を聞くに2人は先輩後輩と呼ぶ間柄のようで
仲睦まじい姿に「成る程」と妙に納得する。

対バンの時は、一人の持ち時間が
だいたい均等になるよう決まっているが、
今夜の藤山さんは実に楽しそうに歌い奏で
みごとに持ち時間をオーバーする。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

原田茶飯事さん


鑪ら場には演者を見守る動物がいっぱいいる


羽毛のように軽やかな歌うたい

「後輩のケツをもつ原田茶飯事です」
冗談っぽく場を和ませて、歌が始まる。

「Ah you」
「モンスーン」
「カイピリーニャ」
「始発」など

「カイピリーニャ」は、茶飯事さん曰く
随分前に作った曲で、最近
歌詞を変えてみたところ
カイピリーニャって言葉がなくなったそう。

自分の作ったものを再編するエネルギーは
歌にも伝わってくる。
よく練られ、育てられた言葉や音楽は
酵母パンのように芳醇で「美味しい」のだ。

YouTubeに12年前の映像が残っている。
それで曲は知っていて大好きだったが
生で聴けたのは初だった。
よく練られ、熟成された歌。
それはそれは「美味しい」ものだった。
憧れと祝祭感に満ちたパッション。


乾杯!

歌を聴くと寿命が延びる、なんて話も
茶飯事さんの歌を聴いていると
あながち間違いではないと思わせてくれる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ドッグフード買い太郎さん


音の重ね方が、やたらかっこいい

10月に続き2度目。
シャボン玉のように軽やかな音楽
それでいてストレンジな音調も
聴いていて不快にさせないのは素敵だ。
歌い続けていく言葉の気持ちよさがある。

「犬も歩けばボーアモデル」
「夏を棒読み」
「閉店休業」など

音源と実際の歌声と普通に話す口調、
名前とSNSの発言と話してみた感触
なんだかどこを切っても別の印象で
とても掴みにくいのだけれど、確かなのは
めちゃくちゃ面白い人柄。

以前、鑪ら場の本棚をぶっ壊して
しばらく出禁になっていたらしい。
最近出禁が解禁されて嬉しい。
と、MCで懺悔していた。

確かに2年くらい前、私がライブハウスに
アンテナを伸ばし始めたころ
鑪ら場の入り口あたりの棚が壊れただの
SNS上で見かけた気がする。あれはあなたか。
解禁されてよかったよ。

軽やかに跳ねるように歌い、季節を飛び越えていく

また名古屋に来てほしい。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

アンコールは皆で即興。

幸せな犬たち


藤山さんは原田さんへの平謝りの果てに
土下座と言う名の逆立ちをし
最前列のテーブルへ倒れかかる。
あまりやりすぎると出禁になるぞ、と
藤山さんも、買い太郎さんも、原田さんも
優しく笑い、歌っていく。

皆、賑やかに、にこやかに、温かい夜。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

全ての演目終了後、買い太郎さんへご挨拶。
企画してくださったことへ感謝。
お話できて良かった。

どうやらあちらさんも
私を頭のおかしな呟きをする人と
なんとはなしにご認識のようであった。
ありがたやー。ありがたやー。

広島がホームだと話す買い太郎さん。
大阪に暮らしていた菅野さんと
よく対バンしている印象なのは
活動拠点が関西中心だからかもしれない。

茶飯事さんのライブで
何度かご一緒したお客さんとも再会する。
最後にお会いしたローリングマンでは
髪が長かったので、さっき手を振っても
なかなか私と気付けなかったと話す。

茶飯事さんや藤山さんらとも
会場お開きになるまで談笑する。

いつもありがとうございます。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

店長実貴子さんの
「時間です!!(帰れェ!)」の掛声で
蜘蛛の子を散らすように、お開きとなる。
帰れ!と言わないのは
実貴子さんの優しさだなぁと思う。

鑪ら場を出る。
だいぶ飲んだので名古屋(職場)で一泊…と
「今日のキャンプ地」へ歩き始めたが
よく調べたら終電に間に合いそう。

おうちの布団で眠りたい。
踵を返し、吹上の駅にいそぐ。

地下鉄の階段。
あら。前方に
さっきのお客さん。
よく会いますね。
お互い帰る方向が同じだったので
途中までご一緒させてもらう。

ライブの話をする相手がいて嬉しい。

帰り道まで楽しい夜。

ありがとうございます。

こんな夜が迎えられるとは思わなかったわ。

また、どこかのライブハウスで。


スペシャルサンクス「鑪ら場」



「幸せな犬」おしまい





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