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『リリイ・シュシュのすべて』観ました

本日、以前から多方面からお勧めされていた岩井俊二監督のリリイシュシュのすべてを観ました。

結論から言うと、めっっっっっっっっちゃくちゃ苦しかったです。

忘れかけていた、と言うか忘れるべくして忘れようとしていたあの思春期をこれでもかと言うほど見せつけられて、なかった事にしてんじゃねーぞと言われている様な感覚にかなり近い。
修学旅行、合唱コンクール、埃っぽい教室、靴下の長さとかスカートの長さ、片田舎の鬱屈した感じ、冬の寒さ、自分じゃない代の卒業式の前のなんとも言えない空気の読み合い、嫌いな女の子だけやけに可愛かったりするスクールカースト、中途半端に形成途中みたいな男女の顔付き、変声途中の掠れ声、恋愛至上主義、教室内でのスクールカースト。

全部全部全部、もう綺麗さっぱりなかったことにして、十代じゃなくなったから、あんなに歪んで無理矢理取って付けていたもの無かった事にしてしまう大人の狡いところ、なんか本当に全部、ギュンって心に戻ってきて、その情報の多さと分厚さにぶん殴られて、でもそれって目も当てられぬほど不誠実に美しくて美しくて、穏やかじゃなくて、泣いてしまいました。

ああ、忘れたふりして本当は全部意図的に心のゴミ箱に押し込んでるんだなあと分かってしまいました。
たまたまこの舞台と同じく、栃木県で生まれ育った自分からすると本当に全ての解像度が高くて居た堪れなかったです。
思い出も、なりたかった姿も、空想の中も小説の世界も何もかもビジュアル化するとこの映画です。
今、写したくとも私は裏切ってしまったから、もう写すに写せない私たちの思い出のバックグラウンドです。

最近、私の脳内を支配するのは成人するまでの体感と、過ぎた後の体感の長さは一緒だという仮説についてです。
人伝に聞いたので信憑性は定かではないけれど、もう自分が哀れすぎて苦しいです。

あの鬱屈した日々の中、憎たらしい男子、母が買ってくれたしまむらの服、冬の制服、携帯で初めて会ったけれど怖くなって逃げて帰った日曜のショッピングモール、アイドルにはなれなかった、必死に作った可愛いなんてブサイクで、真っ白な、それはもう真っ白な校則、私のことが嫌いな顧問、私のことが嫌いなあの子、親友を思いきり傷つけた保健室、ズル休み、私のいつも少しズレた歩幅、一人になりたくないな、昼休み、屋上の前の踊り場、二人だけの秘密、ゆらゆら揺れた夕焼け、なんとなく付き合った彼氏、もうあんま顔覚えていなくて、肌に浮かんだニキビとか。
母が帰ってくる前に観ていた映画しか私を救ってくれないとか思っていたり、全部がクソダサくて、惨めで、屈託して綺麗じゃない私の思春期が私の人生の半分だなんて、それはもう浮かばれないなと。

あ、あとこれをみて若ければ若いほど死が近いなと思いました。
精神もそうだし、年齢も含めて本当に未熟っていうのは簡単に、ふっとした調子にあちら側にいってしまうのだと思います。
それ程までに全てが、価値観と選択が乏しいその時だからこその視野の狭さが簡単に人をあっち側に連れていってしまうのだと思います。と言うか思い出しました。
台風の轟音渦巻く真っ青な教室で母が迎えにきてくれた時に線が切れるみたいに泣き出した事とか、ノートに死にたいって書いたの忘れて同級生に見られた事とか、下卑た笑顔で馬鹿にする男子の歯が嫌に真っ白だったり、機嫌がいい時だけ挨拶してくるみゆの事、本当は大っ嫌いだったこととか。
友達なんて、教室でたまたま会っただけなのに仲良くしなきゃいけなくて、長縄、私が突っかかった時の女子の言葉とかああ、本当に全部覚えているなって。苦しいですね

大人になってからが人生で、それまではふるぼけて滲んだ水彩絵みたい。だって誰も丁寧じゃないし、優しくない。私は子供が怖い。
性と聖を全て兼ね備えた子供は怖い。
あなた、何考えているのかわかんないって、あんなに大人に言われてきたのに、今度は私がおんなじこと言っていて怖い。

つまんない大人になる前に親友と手繋いで、屋上から飛び降りて一生誰かの記憶にこびりついてエゴイズムで人の心を殺して一生学校の幽霊になっていたかった。制服を着たまんま。
中学でも高校でも。でもなれなかったね。

この感覚、本当に久しぶりです。
映画だと19歳の頃に母と観た『スタンドバイミー』のフェニックスが「誰も自分を知らないところの行きたい」と言っていた以来です。
それぐらい、忘れるって、大人になるって簡単だ。
だって人類はそう言うように推奨されているから。
ああ、あんなに私は一生思春期でいるはずだったのに、君の言っていたくそつまんない大人になってるよ。
メイクして、あーだこーだ恋だとか並べて、全然崇高じゃないよ、大人になっちゃったよ、どうするの。それで君は救われたの。男子のこと、大っ嫌いだった君は、ねえ。

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