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送信取り消し

仕事を終えて、部屋でソファにもたれていたら、突然の吐き気。


これはやばいと思いながら、走ってトイレへ向かった。


トイレと睨めっこ。便器に顔を近けたが、吐けなかった。
朝から6時間、飲み物を飲んでいない。ご飯も食べていない。
間違いなく、脱水症状だろう。


飲み物が部屋になく、同期に部屋の前に飲みものを置いてと頼んだ。


水道水を何杯も飲んでいくうちに、ようやく吐けた。


2度吐いてから、同期からミネラルウォータの配達。


彼氏に脱水になったかもとラインを送って、ぼうっと、トイレを眺めた。


ああ、そういえば、昨日、彼氏が用事があると言っていたのに、10分ほど電話をしてくれた。


私は次の勤務地へ向かうため、荷物をまとめながらの会話だった。


「もう切るね」と言われたときに、彼氏の話をまともに聞けなかったことに気がついて、「少ししか電話できなかった。ごめんね」といった。
その後、戸惑った彼の声。


あ、間違った。
少しでも電話をしてくれたのに、
これじゃ、まるで、もう少し電話したかったと、当てつけで言っているみたいじゃないか。


まずはありがとうだったなぁ。
そう思っていたら、電話が切れた。


トイレの水が揺れている。


電話の後送ったラインの返信がないのは、今日友人と出かけているからであって、彼は昨日の電話の内容を気にしていない。


わかっているのに、「脱水になったかも」を送信取り消しした。




甘えてばかりではいけない。
私の負の感情を共有してばかりで、最近楽しい話をあまり出来ていないし。


私はもう社会人だ。


目の前のトイレがぼやけていく。
私の心はまだ大人になりきれていない。

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