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秘密組織

秘密組織

「1958年に、 アメリカの主要人物が手紙を受け取った。  例えば、フレッド コッチ氏(Fred Koch)だ。  コッチ氏はコッチ企業の創設者で、世界有数の富豪である。」

「手紙の送り主であるウェルッシ氏(Welch)は、キャンディ製造会社の創設者社長で、引退後秘密の組織を作ろうと動き始めた。」

「沢山の書類を小脇に抱え、秘密組織の初会合に姿を見せた。 彼は会の議長を務め、自分の意見を出席者を前に披露した。」

内容の要約は、共産主義の恐ろしさを強調、赤の恐怖を捲し立てたのだ。

「共産主義者達は、真っ向から軍事力で対決するのではなく、ありとあらゆる卑怯な手段を使って攻め込んでくる傾向が強い。」と、演説。

「赤は、米国市民の間に忍び込む手法を最大限に利用する。 例えば、 政党内、教会内、 学校内、労働組合内、慈善団体等、内部から切り崩す手法を用いるのだ。」と、続けた。

「この会では、 米国南部に根深く残っている人種偏見を煽り、 「今にも内戦が勃発する。」と、脅す手法にでたのだ。」

「米国市民の大多数が、この分野に関しては無知である事を逆手に取り、彼らの頭の中に、恐怖心を煽るような演説に終始した。」

ロシアが人工衛星、スプートニック打ち上げに成功すると、その事実でさえ歪曲した解釈で、「後追いになった米国は、軍事費を急速に巨大化し、自国の経済を結果的に弱体化させてしまうだろう。これが敵の思う壺だ。」と、ウエルッシ氏は述べた。

また、ウエルッシ氏は演説の中で、「遅れを取った米国救済のためには、真っ当な戦い方では勝ち目が薄いので、あらゆる汚い手を使って戦いを挑む必要がある。  勝ちさえすれば、どんな手段も許される。」と、続けた。

その後、 ウエルッシ氏は極秘の計画を出席者達の前で説明した。

「今回の出席者達で、秘密組織を形成する予定だ。 米国を転覆しようと企む輩と、真正面から戦いを挑むための組織である。 外部からに侵入を妨害するためにも、この組織では全ての権限を組織創設者である、ウエルッシ氏が務める。そして会長が組織の政策を策定、方針の最優先順序も決定する権利を有する。」と、演説を続けた。

「最終的に、重要な事は、赤に打ち勝つのが、この会の目的である。」と彼。

「この会の名称は第二次世界対戦後、共産軍の犠牲になった我らが英雄ジョン バーチ会(John Birch) と名付ける。」と、演説を結んだ。」

「この最右翼の会は、創設以来数年で、会員数が2万人から10万人に増大した。 しかも、重要な点は、この会が共和党の生命線的役割を担ってしまった事だ。」

「この会の発足で、今まで保守派の片隅で小さくなっていた考え方に過ぎなかった極右翼的思想が、保守派政治の最前線に躍り出て来てしまった。」

「ウエルッシ氏は、もともと人体に悪いキャンディを売るまくった人物で、退職後冷戦に慄く米国民の心理を手玉に取り、共産主義への恐怖心を煽った。」

「ジョン バーチ会は、米国民扇動のため、多くの本屋を経営、自宅学習会を全米で展開した。」 

「また、多数の出版物を発行、無数のパンフレット、録音テープ等を作り、右翼的思想を広め続けた」

「その上、ウエルッシ氏はデチ上げた陰謀論の逸話を広げまくった。」

「例えば、1960年のジョンバーチ執行委員会の報告会で、「米国の連邦政府職員の多くは、すでに文字通り、共産主義者の手中に落ちてしまっている。」と、説明した。」

「有名なジョン F. ケネディー氏を含め、他の高官を名指しで共産主義者であると決めつけたり、少なくとも、「共産主義に同意する傾向が強い人物である。」と、述べた。」

「ニューヨーク州出身の、かの有名なネルソン ロックフェラー氏でさえ、標的にされてしまう始末だ。」

「偏り過ぎた考えの持ち主であったが、ウエルッシ氏の演説に耳を傾ける聴衆も多かった。」

「1956年、ロシアがハンガリーを攻め、ハンガリー動乱が勃発した。 その上、翌年の1957年、 世界で初めて人工衛星、スプートニック打ち上げに成功した。」

「このような背景のもと、1961年、上院議員バーリー ゴールドウオーター(Barry Goldwater)
は、率先してこのような根拠のない極右の考え方を支持した。大統領選で勝利を勝ち取るために多数の票が必要であった。」

1960年に、 ゴールドウオーター氏は「保守派の良心」と題した薄手の書物を出版した。

この本は、出版後直ぐに大反響を呼び、右翼派の「座右の銘」的役割を担った。 

この本がきっかけで、 共和党の党方針も大きく方向転換をする事になったのだ。

「秘密組織である、ジョンバーチ会もゴールドウオーター氏を大統領候補として後押しする。」

「票を獲得したい為、 心とは裏腹に、ゴールドウオーター氏は、「ジョンバーチ会は尊敬に値する会である。」と、公言して憚らなかった。」

「票数を増やすためと選挙戦中の手助けが必要であったからだ。」

「ジョンバーチ会は、汚い政治的陰謀論を拡散したばかりではなく、人種差別の激化、ユダヤ人排斥を強く標榜してしまった。」

学校の授業で学び、優秀な成績を取った学生達が有名大学に進学、有名な企業に就職して、生活を安定させるのが夢である人々が多い。

私もその一人。 為政者が教育制度を逆手にとり、自分達に取って扱い安い国民を育てるのに、躍起になっているのかもしてないが、小、中、高、大と生徒、学生生活を過ごしている内に、自分も為政者にとって扱いやすい人間になっていった可能性も否定できない。

人生の最終段階で、やっと本当の意味で自由時間を取得、頭の体操にと、読書に時間を費やし、ユーチューブなどで、有識者の講演を聴きまくって、自分の無知加減さに一人で呆れ返っている今日この頃だ。

参考文献 「American Psychosis」
      著者 David Corn
      出版 2022年


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