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【漫画感想】藤本タツキ先生の「ルックバック」「さよなら絵梨」を読み返した

最近、仕事で落ち込むことがあり、ストレスから漫画を大量に買った。
おすすめに表示され、そういえば買っていなかったなと思い、「ルックバック」と「さよなら絵梨」を買い物カゴに入れた。

2冊とも読んで、どこかに感想を書きたくなったので本記事を作った。
深い考察とか批判は無く、読んで思ったことをばーっと書いた。

ルックバックの方はジャンプ+で冒頭だけ読めるようになっている
未読の方はぜひ読んでほしい。

以下ネタバレ注意。


ルックバック

自分の才能に絶対の自信を持つ藤野と、引きこもりの京本。田舎町に住む2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。月日は流れても、背中を支えてくれたのはいつだって──。
唯一無二の筆致で放つ青春長編読切。

ルックバック (ジャンプコミックス) | 藤本 タツキ | Amazon.co.jp

まずルックバックを読んだ。

公開当時、かなり話題になっていた作品だ。
自分も当時読んではいたが、あまり刺さらなかった。

Twitterやジャンプ+のコメント欄を見ると、絶賛している感想をよく見かけた。特に、多くの現役漫画家の方が言及していたことを覚えている。
創作で心身削って努力したことがない人生だったから刺さらないんだろうか、などと当時は考えていた気がする。


今回の再読では話の内容は大まかには覚えていたが、昔読んだ時よりも強く心が揺さぶられた。143ページをいつの間にか読んでいた。

藤野が京本から漫画が褒められて顔がにやつかないように堪えてなんでもないフリをしちゃうとことか、つい漫画賞を狙っていると嘘ついちゃうところとかは可愛いかった。小学生の頃、絵が褒められて調子に乗ってた頃の自分を思い出した。
雨の中嬉しさで変な歩き方になってしまう見開きのシーンが好き。初めての理解者でありファンを獲得した彼女の強い喜び・興奮が伝わってきてこっちも嬉しくなった。


途中から始まる京本が亡くならない世界の話は色々な解釈があると思うが、私は、落ちている4コマ漫画を見つけた藤野の「こうだったらいいのに」という彼女の想像の世界だと解釈した。

藤野の部屋の窓には4コマ漫画が貼られていたが、一箇所だけテープだけ残っているスペースがある。そこから外れてドアの下に滑り込み、廊下に落ちていたのだろう。

「藤野」は割とよくありそうな苗字なのに小学生の頃の藤野先生と結びつける強引なところとか、最近漫画を描き始めてアシスタントを京本に頼む都合の良い展開も、藤野の想像だからと思えば納得できる。

暴漢に襲われる京本を藤野がキックで助ける、という4コマ漫画は「藤野とまた会いたい」という思いで京本が描いていたものなのではないだろうか。学校にある日テロリストが来る妄想はよくあるものだし、キックの構図も藤野の部屋に貼られたシャークキックのポスターの構図と似ているし。

ルックバック 128ページ

犯人に対して藤野が飛び蹴りするシーンでは、京アニ事件だとかを含めた「理不尽な暴力」に対するタツキ先生の怒りが込められているようにも感じた。


京本の部屋にあった何冊もあるシャークキックの単行本と書きかけのアンケートを見てうるっときた。少しでも貢献しようと少ない身銭を切って応援していたんだろうな。

廊下と通じる扉に掛けられたサイン入りの服に少し泣いた。
自分を外に出してくれた恩人であり、戦友だった人の名前を外に出ていくたびに見て、今日も頑張ろうって奮い立たせてたんだろうか。

だいたい漫画ってさぁ… 私 描くのはまったく好きじゃ無いんだよね
じゃあ藤野ちゃんはなんで描いてるの?

という問いかけから最後のページまでの一連の流れでまた泣きそうになった。

藤野はただ京本が喜んでくれるのが嬉しかったことを思い出し、歩き始め、また漫画を描き始める藤野の背中を映して物語は幕を閉じる。

京本が隣で楽しそうに自分が描いた漫画を読んでくれたのが、藤野が漫画を描き続けることにした1番の理由だったんだろうな。
このシーンはかなり好きで何度も読み返した。

ルックバック 138ページ

当時、犯人の描写で批判があり、一部変更されたことを読んでいる途中で思い出した。
批判する人の理論について思うところはあるが、ここでは詳しく語らない。ただ、作品から言葉にできない大事な何かが少し抜けた気がして、寂しいなと感じた。


なぜ、今読むルックバックにはこんなに心揺さぶられるんだろう。
何か自分の中で価値観が変わる出来事があったのか?
気分が落ちているときに読んだからだろうか?

分からない。いつか分かる時が来るのだろうか。


あと、自分も何か物語を創ってみたい、と思った。

さよなら絵梨

私が死ぬまでを撮ってほしい──病の母の願いで始まった優太の映画制作。母の死後、自殺しようとした優太は謎の美少女・絵梨と出会う。2人は共同で映画を作り始めるが、絵梨はある秘密を抱えていた…。
現実と創作が交錯しエクスプローションする、映画に懸けた青春物語!!

さよなら絵梨 (ジャンプコミックス) | 藤本 タツキ | Amazon.co.jp

爆発オチなんてサイテー!!!

こちらの作品も公開当時に読んだが「どういうこと???」と混乱したことと、「藤本タツキじゃなかったら評価されてないだろ」という誰かの感想は覚えている。

今回の再読でも混乱はしたが、面白かったと思う。

どこまでが映画で、どこからが現実なのかが分からない入れ子構造に、まず「そんなことしちゃっていいんだ!?」とは思った。初めての読み味。漫画って私が想像していたよりずっと自由なんだ。

私は「絵梨は病死。彼女が死ぬまでの映画を皆の前で放送してブチ泣かせた後、吸血鬼の絵梨と出会って大爆発するまでの映像を追加し、私たちに見せてくれた」と解釈した。

絵梨の友人からお礼を言われるも「ファンタジーがひとつまみ足りない」「あなたの映画っ 超っ〜!面白かった」という絵梨の言葉を思い出し、自分が作りたかったのはやっぱこれなんだ、と思ったんじゃないだろうか。

母親と同じように優太を利用して美化させようとすることに対する怒りも最後の爆発に込められてそう。

優太の大人の姿はお父さんにやってもらったんだと思う。

192、193ページの大人優太と昔の絵梨、蘇った絵梨と昔の優太という構図が好き。

さよなら絵梨 192ページ

ルックバックは「読者の心に届け、響かせるにはどうすればいいか」ということを真面目に考え、自分自身の気持ちに向き合って描いた作品で、「さよなら絵梨」はとにかく藤本タツキの趣味を詰め込んで読者を思いっきりぶん殴った作品なのかな、と思った。
この作品を世に出した瞬間ってめちゃくちゃ気持ちよさそう。

高圧的で理不尽な女性と映画が大好きなんだな、タツキ先生。

チェンソーマン第二部を読んでいるので、最後は「あのシーンだ!!」と少し嬉しくなった。

最後に

2冊とも読み返して良かった。
当時とは違う感想が抱けたりするのが再読の面白いところだ。

藤本タツキ先生の作品が読める時代に産まれてよかった。
もっとこの人の作品が読みたい。

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