偏質的俳句鑑賞-第五十九回 君となら落ちて見ようか蟻地獄-奥名春江『俳句 2023.7』

この心中のような感じ、痺れますね。
「君」という語がやっぱりいい。呼びかけているみたいになる。「君」に向かって提案しているみたいな感じになる。
もちろん蟻地獄に落ちれるほど人間は小さくない。多分二人で並んで蟻地獄を見ているのだろう。そこでぼそっと「落ちて見ようか」と言う。
そういう退廃的というか滅亡というかそういう恐ろしさを受け入れる気持ちがこの句には充分に満ちている。
小説のような絶望的な恋というものを感じさせる良い作品だ。小説にしたら良さが半減しそうだけど。
それだけです。次回も良ければ読んでください。

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