偏質的俳句鑑賞-第九十二回 鮎釣るや奔流(ほんりゅう)腿(もも)で押しつづけ-庄中健吉『凧』

鮎を釣る時に川の中に立つ。
それ自体を観察し切って作品にしたのがこの句だろう。
鮎を釣る動き自体は書かれないし、それは各々で補完してくれれば良いのだ。
この句で言いたいのはそれを支える足の力強さだ。
奔流というものに立ち向かうわけでもなく、押す。しかも、「腿」という場所でぐぐぐと押しつづけ耐える。
そのうちに鮎が釣れる。しかし、まだ腿で奔流を押す。鮎釣りが終わるまで腿は押しつづける。
「奔流」とは早い流れのことだが、漢字のイメージと雰囲気が合っている。完成されている世界が広がる。
それだけです。次回も良ければ読んでください。

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