イグBFC2感想【グループJ】

イグBFCというイベントは自分にとってとても楽しいものでした。ここには、計88通りの狂い小説の可能性が眠っています。

草の根イグの一環として、狂いの可能性を探っていくために感想を書いていきたいと思います。もし何か問題がありましたら、灰沢までお問い合わせください。よろしくお願いします。

日本未来話『モジモジの木』

日本の未来話に、「うわ……私の文章少なすぎ……?!」というネット広告が残っているのがちょっと嫌だなと思って笑いました。面白いと思ったのは、下の文字だけでなく、上の文字がそのまま残されているということです。未来話においては、下を読むのではなく、上を読むことで成立する物語の可能性も残されている。誤読を誘発するバグがこんなにもあらわにされているというのが、未来感を感じさせました。基本的に下段です。というディレクションは、例外的には上段を読んでねというディレクションと読み替えられるわけです。ソーデスカ、ソレデアノとも読めるし、ペギニデダーエー、ペレデアナとも読める。その可変性というか、都合よく読み得るところが残されてしまっているのが面白いと思いました。「未来」を感じさせる文章を読むことができて、よかったです。

5つの♡♡♡

切れ痔という字を一生分見たように思いました。♡の理由がよくわからなかったのですが、これは♡ではなく、切れ痔そのものなのかなということを思いました。上向きのケツってことです。もし違うなら、ほんとうはなんなのか知りたいです。「だってあれは、世界に一つだけの、私が初めて自分の手で作り上げた切れ痔なのだから」という一節がありますが、ここはもう完全に切れ痔が無茶をしているなと感じました。わたしたちは切れ痔すらレディメイドなものとして消費しなければならないのでしょうか。誰かの押し付けでない、自分だけの切れ痔。世界に一つだけの切れ痔だから、SMAP→5人ということなのかもしれません。花屋の店先に切れ痔が並んでいる深読みを誘発させられて、よかったです。

文体練習練習

文体練習の練習ということは、これは文体練習とは違うものだということがまずわかります。よく読むと、途中から文体練習をサボり始めていることに気付きました。FF外から失礼する人は、文体練習をしていないわけです。意見すると文体練習の続き物に見えますが、実際はそうではないというところが入り組んでいて面白いなと思いました。文体練習の練習に失敗しているのに、形式としては文体練習のふりをしている。ぱっと読むと、文体練習の関連として読んでしまうわけですが、それは文体練習部としては、罠なわけです。仮に文体練習部の顧問がいたとしたら、これはもう罰としてグランドを走らされるだろうなと思います。既存作品の模倣の失敗という形で、一つのパロディとして作品が成功していて、よかったです。

うりふたつ

改作が公開されていたので、それを基に感想を書きます。
素直にすごいと思ったのが、「大喜利として面白いと読者が明らかに認識できる答え」と、「大喜利として微妙な感じの答え」をかき分けられているという点です。そこがこの作品の前提を担保しているので、そこを当たり前にクリアしているところがすごいなと思いました。双子というモチーフの使い方とストーリーの展開がうまく掛け合わされていて、堅実に作られているなと感じます。特に最後の「うりふたつ」さを示すシーンはオチとして完璧に機能していると感じました。はじめは双子っぽくないシーンを積み重ねてきたのは、このためだったといえる納得感のある展開で、作者のコントロール能力の高さを強く感じます。別の賞に応募されているようですが、短編としても幅広い人に読まれうる作品だなと感じました。受賞できるといいなと思います。とてもよかったです。


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