ライターの筆置き

書くことは、まったく仕事と関係ない。得るものはないし、おそらく読んだところで元気にもな…

ライターの筆置き

書くことは、まったく仕事と関係ない。得るものはないし、おそらく読んだところで元気にもならない。そんな文章をわざわざ書く。書きたいから書く。それ以上の理由も見当たらない。

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  • #こちら沢登り不定期便

    沢登りにまつわるアレコレを不定期で発信します。沢登りに興味がある方もない方も、ゆっくりしていってください。

最近の記事

#01 沢登りってなんだ?

ヘルメットをつけたおっさんが滝壺に首まで浸かりながら笑ってる写真を見て衝撃が走った。 これが沢登りとの出会い。 世の中には山登りじゃなくて、沢登りという遊びがある。 遊びというにはデンジャラスすぎるけど、ほかに適当な言葉が見つからないので、とりあえず遊びとしておこう。 何をするかというと、沢登りでは流れに逆らって沢を遡上する。 これが基本。 沢とは、山奥にあって両側から斜面に挟まれている凹状の地形のこと。水が流れていることが多く、谷とか渓とか渓谷とも呼ばれる。

    • 優良参考資料

      原稿執筆は試行錯誤の繰り返し。興味を引くタイトル、キャッチ、見出し。飽きのこない全体の構成。読みやすくてグイグイ引き込まれる文章。 そのすべてがパパーっと脳裏に浮かんでくればいいのだけど、そんな才能はないわけで……。 毎回キーボードに向かいながら、頭を抱えるのが定番のルーティーン。 そんな苦しみから脱するために、というわけではないけど、最近いい参考資料を見つけた。 ほとんどの家庭にそれはあって、見るのは無料。しかも毎日毎日、違う内容の優良資料に出合えるから、これを活用

      • 山で遭難しないために意識していること

        このあいだ、山の遭難に触れる記事を書いた。その内容が暗いとの意見を頂いたので、ちょっと反省。 批判で終わらせず、どうしたら遭難しないで済むか、自分なりの考えをまとめておきます。 実は私、かれこれ20年近く登山を続けていますが、一度も遭難したことがありません。山に登る頻度は、ほぼ毎週。回数の割に遭難経験ゼロというのは、ちょっとした自慢です。 ただ、遭難しかけたことはあります。 たとえば、日帰り登山でのこと。甘く考えてヘッドランプを持たずにいたら、予想以上に下山が遅れて日

        • お先、真っ暗

          YouTubeはよく見るけど、登山系チャンネルはほとんど見ない。だからか、登山の遭難啓発系チャンネルというのがあって、一部で問題視されていることも知らなかった。 遭難啓発系チャンネルとは、山岳遭難の事例をいくつも紹介しているチャンネルのこと。 そこにアップされているいくつもの動画には、過剰に恐怖心を煽る言葉と顔にモザイクをかけた気味の悪い写真がサムネイルに使われていて、かなり目を引く。 そして、本編はAIによるナレーションに沿って、イラストと適当な写真、地図などを使い遭

        #01 沢登りってなんだ?

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        記事

          仕事の単価はどう決める?

          webの仕事で、1記事いくらでお願いできますか? と聞かれたら、なんて答えたらいいだろう。 文字数にもよるけれど、5000円じゃ安い気がする。では、3倍の1万5000円だったらどうか。自分が書く原稿に、そんなに価値はある? 自分の仕事に対する単価は、簡単に決められない悩みではないでしょうか? 仕事を教わった先輩に相談したら、かかる時間で考えればいいと教わった。 たとえば、年収600万くらい稼ぎたいとする。一月50万。一ヶ月20日働くとして1日2万5000円。欲張って3

          仕事の単価はどう決める?

          春を背負って

          幸せのカタチって、人それぞれ。 家族がいたり、彼氏彼女を作ったり、家を買ったり、車を持ったり、たくさんお金を稼いだり。 でもさ、人付き合いとは遠いところで、形に残らず、生活の足しにならない幸せもある。 雪で覆われた真っ白な山頂に座って、遠くの景色を眺めていた。 世界と山頂の境界線から、自分と同じ登山者が遠くのほうから、いく人も小さく顔を出す。 下を向きながら、ゆっくりゆっくり、こちらに向かって登ってくる。 その後ろには、名残惜しそうに雪をかぶる山々が両手いっぱいに

          やる気に水を掛けるなかれ

          登山を何年も続けていると、ついつい初心者の気持ちを忘れてしまう。 初めて登る山はどこがいい? 道具は何がおすすめ? そんな質問をされても、どこでもいいじゃん、なんでもいいじゃん、なんて乾いた言葉しか出てこない。 そんなそっけない態度でも、答えはあながち間違いではないし、別にいいじゃんと思っていた。ところが、たまたま初心者の気持ちを思い出す機会があったので、考えを改めようと内省した。 一歩も家から出ず仕事の虫になっていたある日の夜、無性に体を動かしたい衝動に駆られたので、

          やる気に水を掛けるなかれ

          春の雪山は暖かいぞ

          雪山に登っていると口にすると、すごいですね! なんて言われることがある。普段、山に登らない人だけじゃなく、雪がない時期に山を登っている人にとっても、雪山はハードルが高い遊びに映るみたいだ。 雪山は夏山より環境が厳しい。真っ先に脳裏に浮かぶのは、凍てつくような寒さではないだろうか? 猛烈な吹雪のなか、じっと強風を耐え忍び、顔の周りには霜が付着している。そんなようすを思い浮かべる人が多いのかもしれない。 そして、装備が不十分だと、凍傷にかかって指などを切断するはめになる。さら

          春の雪山は暖かいぞ

          書けるから詳しいへ

          ライターは文章を書くだけでなく、編集作業に関わることも多い。 ついこの間、雑誌である山域を紹介するページの編集を任されたとき、その山域に詳しいライターさんがいたら、原稿はその人にお願いしようと考えた。 ところがである。願いは叶わなかった。全然いないのである。グーグル、フェイスブック、インスタグラムなどで検索しても、いい人が見つからない。 ゼロではないけど、既にほかの媒体で書かれていたり、よく名前を拝見する人だったり、できれば違う人、新しい人材を発見したかったのだけど、あ

          書けるから詳しいへ

          正しい正しいと言うけれど

          正しい、という言葉につい反応してしまう。正しいザックの背負い方、正しいウェアの選び方、正しいテントの張り方、正しいピッケルの扱い方ー。世の中にはたくさんの正しいが溢れている。 最近は、正しい山の歩き方、というのをよく目にした。 しかも、よく目にしたと書きたくなるほど、たくさんある正しいは、ひとつのテーマに対していくつも存在することがある。あっちにある正しい山の歩き方と、こっちにある正しい山の歩き方は、内容が微妙に違う、なんてことは珍しくない。 そんなとき、いつも思ってし

          正しい正しいと言うけれど

          ゴム玉になりたくない

          人って、地面に落ちると、ゴム玉のように弾む。ボイン、と弾んで、バタッと、止まる。 書き出しからテーマがエグい。エグいけど、そんな凄惨な現場を2回も目の当たりにしたことがある。アイスクライミングって、やっぱり危険なんだな。 2回とも、八ヶ岳だった。 1回目は、初級ルートで有名な、裏同心という短い谷。いちばん初めに現れる滝を、命綱をつけずに登っていたおじさんが、突然グラグラし始めたと思ったら、凍った滝から引き剥がされて、真っ逆さまに落ちてきた。 地面にぶつかり、ボインと弾

          ゴム玉になりたくない

          窓明山とあんこう鍋

          福島県に立つ窓明山は、昨年の2月に計画して登れなかった宿題の山である。 敗退の原因は悪天候で、本州が完全な冬型の気圧配置に覆われた当日は、初日からひどい大雪だった。それが夜になると吹雪になり、降雪はますます激しくなる。 夜、トイレに行きたくなって雪洞の中で目が覚めたとき、入り口が完全に雪の下に埋まっていて、焦りまくったことを今でもはっきりと覚えている。スコップを内側に入れていたから、なんとか入り口を貫通させて事なきを得たが、一歩遅かったらどうなっていたことか、想像しただけ

          窓明山とあんこう鍋

          八ヶ岳アイス訓練

          年始一発目の山行は、八ヶ岳でアイスクライミグを楽しむことになった。もともとの予定では黄蓮谷右俣に挑戦する計画だったが、Hさんの経験値を上げる必要性が出てきたのと、大晦日に降った雪で雪崩のリスクが高まっていたため、予定を変更し、八ヶ岳のアイスクライミングの入門ルートでリードとロープワークの練習をしましょうという計画に落ち着いたのだった。 重たいテント泊装備を担いで、またしても赤岳山荘の駐車場を出発する。今シーズン、八ヶ岳を訪れるのはこれで4回目。うち1回は舟山十字路に車を駐め

          八ヶ岳アイス訓練

          3000円のぜいたく

          疲れていると癒しを求めて迎う場所がある。近所にある日帰り温泉だ。 ここは天国かと思うほど、癒しのサービスが充実している。 まず、食事処。ラーメン、そば、うどん、定食、丼ものを、だいたい1000円以内で食べられる。座敷とテーブル席があって、壁にかけられている大型テレビに近い座敷席で食事をするのがいつものパターン。 浴場の設備も充実している。内湯は適温とぬる湯のふたつ。野天風呂が源泉かけ流し(加温あり)で、こちらはぬる湯と熱湯のふたつ。ほかに壺湯、寝湯、お湯が流れる椅子に座

          3000円のぜいたく

          登山の魅力

          山のルートガイド本が売れないそうである。特別に驚くほどのことではない。いまのご時世、調べものはスマートフォンひとつで用が済む。気になるルートを検索すれば、記録はいくらでもヒットする。現地の様子を記録した写真も、標準コースタイムも、歴史や見どころや危険箇所の情報まで手に入る。殆どの人が、わざわざアナログな書籍に対価を払う気にはならないのは極めて自然な流れだろう。 しかし、便利だと思う一方で、溢れかえる情報の渦が山の楽しみをスポイルしている気がしてならない。 私が登山を始めた

          言葉のない世界

          11月中旬のこと、早くも雪化粧した斑尾山を訪ねたとき、雪面に小さな足跡が続いていた。 形から推測するに、おそらく足跡の主はキツネだろう。 ふと、キツネの気持ちを考えてみた。足跡の主は、この寒さで辛くないのか。お腹は空いていないのか。 そこで、キツネは言葉をもたないことに気がついた。 言葉は便利だ。意味さえ理解していれば、どんな事柄も口頭や文面などで伝えることができる。 そんな言葉が存在しない世界を想像したとき、僕たちは言葉で世の中を理解していることに気がついた。