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黒毛のアン1 髭犬少女がやってきた 

ミニチュアシュナウザーという犬種は、その立派な眉毛と髭が特徴で、
どうも女の子がイメージしづらい。

我が家には、男の子のシュナウザーがいた。
1年半前に15歳で天に召された、むるお。
特に立派でもりりしくもなかったが、
髭と眉毛と、四角いフォルムは年をとっても美しく、
性格は、超のんびりで、じっと目をのぞき込み、包み込む優しさがたまらなく愛しかった。

むるお 12さいの頃

14年前に互いに子持ちで再婚し、
合わせて子供3人、ネコ2匹、犬1匹で総勢8人で始まった大家族も
子供達が巣立ち、むるおが天に召されたのを最後に
とうとう夫婦ふたりだけになった。
むるおは、召されてからもずっとそばにいてくれてた。
懐かしさはあったけど、不思議と寂しさはなかったのだ。

みんなが巣立ったらのんびりと二人で生きようと言っていたので、
むしろ やれやれお疲れ! と言う感じで互いを称え合って、
互いの趣味や、オトナ夫婦時間を楽しんでいるのだが。
互いの趣味や仕事が充実していくと
家で一人の時間に、孤独を感じてしまうようにもなってきた。
気がつけば、夫婦とも50歳をとうに越えている。

街でふとシュナウザーを見かけると
夫婦二人で笑顔になり、話しかけ、いつまでもむるおの思い出を語るのだ。
オトナも後半戦「老い」が見え隠れし始めている。

夫婦ふたりだけには、もはや必要のない2階建ての一軒家を手放して
小さなマンションにでも移ろうと考え始めた。
気がつけば二人の一番の条件は、今はいない「ペット飼育可」だった。

ローンもまだ残る一軒家を手放すことが難航していて、
二人して焦ったり、落ち込んだりが1年ほど続いた。
疲ればかりが目立ち始めたので、先にペットを迎えることにした。

アレルギーのデパートのような夫が、唯一添い寝も平気だったむるお、
シュナウザーしか選択肢はない。
いや、夫のアレルギーが商店街レベルだったとしても
私はシュナウザーしか迎える気がしていない。
だけど同じ犬種でも、むるおの面影を重ねるのはいやで。
私よりもっと寂しがりで、若い女の子が大好きな(語弊がかなりあるか?)の夫の為にも、
女の子を迎えることにした。

最初は、真っ白の女の子シュナを迎えようと思っていた。
のにである。
結局、黒毛に白靴下をはいた4ヶ月の女の子がやってくることになった。
むるおと一緒のソルト&ペッパーという毛色なので、
若い内は黒いが、だんだんとシルバーになってくるはずだ。
結局たぶん同じ感じになるのだろう。

決め手は、夫の呼びかけに脇目も振らず駆け寄ってきたこと。
毛の色云々よりも
むるおを亡くした日々を私以上に寂しがっている夫を
癒やしてくれる娘が何より大切だったから。

名前は アン 
夫のこだわりで、数字に関した名前を代々のペットたちにつけているから。
ナナ(7)、レイ(0)、ココ(9)・・・むるおは本名はジュジュなので10。
なので、フランス語の1でアン。
赤毛のアンが大好きな私もお気に入りの名前。
EのつくANNEで呼んであげなくちゃね。

アンが来て、1ヶ月半。
最初に望んだコとは違うのだけど、
時々むるおって呼んでしまうのだけど、
うちの寂しがり屋でおしゃべりが苦手なマシュー(夫)を
たくさん笑顔にしてくれる。
小うるさいマリラ(私)には、
グルーミングや歯磨きやしつけをイヤイヤされている。

二人きりとはやっぱり違う、賑やかさがある。
粗相を片付け回って、「あか~ん」と追っかけ回してヤレヤレなのに、
小さな尻尾をフリフリしてると笑顔になるし
抱きしめるとあたたかい。

あぁ、静かすぎたんだと気がついた。
人生でやっと手に入れた穏やかさをとても愛してはいるのだけど、
アンのいない毎日には、もう戻れない。

マリラの気持ちがリアルにわかる毎日なのだ。




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