大魔神92(二次創作ストーリー)

(1997年 デジタル文芸「デジブン」掲載)
このストーリーは当時(1992年)、大魔神リメイクにあたりストーリー募集が行われると聞いて、大急ぎで書き上げたものです。レベルとしてはシノプシスとか箱書きレベルだろうか。

週刊プレイボーイの記事では、「舞台を現代のアメリカに移し」とあったので、自信満々で書き上げたのですが、いざ応募となった時、「設定は時代劇であること」と変わっており、大いに落胆しました。
だってそれじゃ今までの焼き直しじゃん・・・。

自分としては過去の特撮モノに対する思いと伝奇趣味をすべてぶち込みました。
ごゆっくりお楽しみ下さい。
大魔神の名称は、大映・徳間書店などが版権を持ってますが、こっちは営利が目的ではないので目をつぶってね。

ストーリー「大魔神92」

作者・栗林 元

主な登場人物
西森 伸一・・・・・考古学者
南川 広・・・・・・民俗学者
シキアルク・・・・・イヌイットの少女
青年 ・・・・・・イヌイットの青年
長老 ・・・・・・イヌイットの長老
ロバート・バックマン・・・・日米合弁企業アラスカリゾートトラスト社長
宮城 孝司・・・・・アラスカリゾートトラストのプロジェクトリーダー

(1)アラスカの工事現場

大地を削り土木機械が土地の造成をしている。
アラスカリゾートトラストの看板。
一台の車が現場に入ってくる。乗っているのはプロジェクトリーダーの宮城。
現場の外では、生活の場を奪われようとしているイヌイットの人々が手に手
にプラカードを掲げて抗議行動をしている。
待ちかねていた様子の現場監督が宮城に、
監督「ボス、こっちです」
車を降りた宮城は足早に監督を追う。
現場には土木用の有人ロボットが動き回っている。
キャタピラの足。腕の部分はクレーンやユンボ、掘削ドリルなどに付け替え
がきく。
(ま、ガンダムとか、エイリアン2に出てきたパワーローダーみたいなやつをご想像下さい。特撮好きなら作者の狙いは、もうおわかりですね)
人夫「溶岩台地に発破をかけたら出てきたんです」
人夫が指差す方を見ると、そこには発破で崩れた崖があり、巨大な岩がころがっている。
崩れ落ちた巨大な武人像であった。

タイトル 大魔神’92(仮題)

(2)アラスカの空港
考古学者西森と民族学者南川。機内から空港内までを追うように映しながら以下のような会話。
南川「ほう、するとやはりあの武人像は日本のハニワと同じ起源だというわけですか」
西森「あくまで仮説ですがね」
南川「僕もね、古代人は何度も海を越えて新大陸へ来ていたと思うんです」
西森「文化伝播ですね。南米とポリネシアで可能性があるならアラスカと日本列島とでも可能性はありますよ。古代日本にも海部という漁撈・海運の一族がいたんですから」
二人はリゾート開発で発見された巨像の調査に加わりに来たのだ。

(3)工事現場
プレハブの研究棟が立っている。その中に入る西森と南川。
コンピューターのモニターが並んでいて一見すると考古学とは関係ないよう
に見える。
モニターには巨像の3次元映像が映っている。
南川「まるでNASAだね」
西森「おいおい地下レーダー探査法だよ。日本の黒井峯遺跡でもやってることさ」
*地面の下に向けて電磁波を放ち、その反射波を捕えて地下構造を測定する。
堅いものと柔らかいものとの境界を明瞭に映すことができる。実在の測定法である。
宮城がやってきて二人と握手。
宮城「このリゾートから世界的な発見があって光栄に思っています。いいスタートが切れそうだ」
そう言われながらも、二人は窓の外を見て複雑な表情。
外には抗議行動をするイヌイットの人々の姿が見える。
宮城「彼らもこのリゾートが完成すれば、アザラシを殺して非難されることもなく、近代的生活ができるのですが・・・・」

研究棟の外では

南川「昔からの生活を捨てさせるってことは、文明の暴力だよ。近代生活で何を得るというんだ、アル中が増えるだけだぜ」
(ここでは、開発を非難するだけでなく逆にヒステリックな動物愛護・エコロジーなどにも醒めた批判の視点を持ちたい。どちらも人間のエゴには変わりがないのだ*くどくならない程度に)
南川は西森と別れて、部落へ向かう。

(4)イヌイット部落
リゾート開発反対集会が開かれている。
過激な若者たち。リーダーは「青年」。
長老とその孫娘であるシキアルク。13歳ほどの美少女がよい。
昔からの生活をかえたくない事情。武人像の出た聖地について。ここで南川は長老から聞かされる。

(5)記者会見(ニューヨーク)
アラスカリゾートトラストの社長ロバート・バックマンほか、日米の役員たちを各国の記者が囲んでいる。
社長「この武人像を我が社のシンボルとして、ニューヨークの本社に実物大のレプリカを飾りたい、云々」と言ってミニチュアの武人像を掲げる。
フラッシュの嵐。

(6)崩れた武人像の前
西森と南川と長老がいる。フィールドワークの最中。
長老「かつてこの像はあそこにありましたんじゃ」と、すこし離れた山の斜面を指差す。
ちょうど、像の抜けた後のような窪みが崖となって残っている。
長老「わしのじいさんがまだ子供の頃。火山の溶岩から村を守るために、あの神様がここまで歩いたんじゃ」

(7)その山の斜面
南川と西森が登っている。南川は少し苦しそうにあえぎながら、
南川「あの一族の言い伝えでは、彼らの祖先は海を越えてきたらしい」
西森「やっぱり・・・」
南川「言葉の体系も通常のイヌイットと一括りに分類するのは苦しいものがある」
西森「あの一族は俺達と共通の祖先をもってるのかな」
二人は崖の下に到着する。
窪みの前には祭儀のあとがある。
*沖ノ島の祭儀遺跡を参考にするとよい。
地面を調査していた西森が小さく叫ぶ。
南川「どうした」
西森は拾い上げたものを南川に渡す。
碧玉製のまが玉である。

(8)工事現場にて
イヌイットの若者たちが崩れた武人像の前で座り込み、ハンガーストに突入した。現場監督たちも、外国からの取材陣の手前、手荒なことができず、腕を組んで苦り切った表情。

(9)アラスカリゾートトラスト本社
親会社の高層ビル。
10階ちかくまで吹き抜けになったロビーを社長のバックマンと宮城が歩いている。
社長「何としても、9月のオープンに間に合わせるんだ」
宮城「お言葉ですが社長、現地民の反対が意外と強くて云々」
社長「手段はいくらでもある。なんのためにお前をやとっているんだ」
宮城はつらそうに頭を下げる。何かを決意した目。
二人のたちどまったところには、親会社が作っている有人型土木工事ロボットが展示されている。
頭がコクピットになっている。高さ15メーターほどの巨大ロボ。(ここは伏線ですのでさりげなくロボを描写しておくこと)

(10)イヌイット部落(夜)
長老の家。
南川がやって来る。
道路に止めた4WDに座っている男が南川に気づいて驚いたような顔。
少女の叫び声。
家の影から男が二人、少女シキアルクを横抱きにして飛び出してくると車に飛び乗る。
南川が驚いて駆け寄ろうとすると、運転席の男が銃を抜きためらうことなく南川を撃つ。
「見られたからな」
吐き捨てるようにそう言って車を出す。

(11)病院
南川が寝ている。死にかけている。ベッドの傍らには、西森、青年、長老。
南川が西森の手を握り起きようとする。
南川「やつら・・・、リゾートトラスト・・・」
そのまま眠るように死ぬ。

(12) 崩れた巨像の前
像の前で青年が祈っている。
西森「こんな崩れた像に何ができるというのだ・・・」
西森は意を決したかのように天を仰ぐと、その場から去る。
入れ替わりに長老が現われ、青年に新聞を示す。
「アラスカの武人像を再現、来月完成予定」の記事と写真。

(13)酒場
回想シーン。
警察へ行く西森、機上の西森、ニューヨークの日本の新聞社支局に駆け込む西森。
アラスカリゾートの本社ビルでガードマンとやりあっている西森。屈強な男たちに叩きだされる。
一連の映像が、西森の徒労を物語る。
(だれないように)
カウンターで酒をあおる西森(顔には殴られた痣)に二人の男が寄り添う。
洋装した長老と青年だ。
驚く西森。

(14)ダウンタウンの倉庫街
地図を見ながら長老・青年・西森がやってくる。
やがて、ある倉庫の前に足をとめるとお互いにうなずく。

(15)アラスカリゾート本社ビルの一室
捕われた少女が、つまらなそうにTVを見ている。

(16)倉庫の中
天井から注ぐピンスポットの光の下、まだ荒削りの武人像のレプリカが立っている。
西森「よしんばあなたたちの魔法が利いたとしても、こんな未完成の像ではどうにもならない。第一これは偽物なんだ」
長老「聖なる力は、その形態に宿るのですじゃ。限りなく本物に近い偽物は、本物と同じなのじゃ」
長老は、トナカイの皮の袋から、まが玉を取り出し首にかけた。そして、ゆっくりと呪文をとなえはじめた。
ぼんやりと聞いていた西森は、はっと顔を上げる。
西森「こ、これは”先代旧事本紀“の一節だ!」
*別に、この書でなくともよい。架空の日本の古書の方がよいかな。まあエヴァにおける、死海文書みたいなもんですわ(笑)
呪文が進むにつれ、倉庫が震えはじめ、武人像の表面がぼろぼろと欠けていく。
やがて、古い皮を脱ぎ捨てるかのように、荒削りの像は、完全な姿に変わっていく。
長老の呪文が突然やんだ。
変貌を終えた像が静かに立ちつくす。
驚きの表情で見守る西森と青年の前で長老は力なく肩を落とした。
長老「わしが覚えているのはここまでじゃ」
落胆する若者の前で、西森はつぶやくように小さく、しかし、徐々に大きな声で続きを唱える。
長老「な、何故・・・」
武人像は完成し、きしみながら腕を上げた。そしてその穏やかな表情は、青ざめた怒りの表情に変わったのだ。

(17)倉庫の外
静かな夜の町。浮浪者が歩いている。
突然、倉庫のシャッターが紙のように破れて、巨大な魔神が姿を現す。
あっけにとられる浮浪者。
通りかった車が急ブレーキを踏んでスリップし歩道に乗り上げて消火栓を折る(いかにもなシーン)。
吹き上がる水。大魔神の姿が濡れて、不気味に黒光り。
倉庫から出てきた西森達、遠ざかる大魔神の後ろ姿を、茫然と見送る。

(18)夜の街
ゆっくりと進む大魔神。摩天楼をバックに巨大感はない。
車を捨てて逃げ惑う群衆。車を踏み潰して進む魔神。ビルの窓から見た大魔神の姿。(まるでキングコングだ)

市警本部の一室。
「身長15メーター?ジーザス」とかなんとか無線とやり合う警官。
交通ヘリコプターからの映像に一同どよめく。
「いったい、どこの製品なんだ」
*空から見た魔神は小さく見える。
無人と化した街頭で大魔神の前に立ちふさがる警官隊。
パトカーで道路を塞ぎ、散開した警官達が一斉に銃を発砲。
魔神は大きく手を開くと、打ち合わせてかしわ手を打つ。
たちまち突風が走る。次々と割れるビルの窓。車は風で地面を滑り、警官達は飛ばされる。(このあたりラドンですね)
空にはみるみると黒い雲がわく。
市警本部。
「巨大ロボットは、*ブロックを東に向かって前進中。」 市長と警察は、ついに軍の投入を決意する。 (軍の前に警察の特種部隊を投入してもいいですね、つまりダイハードの世界)

(19)アラスカリゾート本社
TVの映像を見守る社長と宮城。
「軍隊がなんとかしてくれる。云々」

魔神の後を追う西森ら三人。

長老「動き出した魔神様は、もう止められん、善悪を超越しておるからじゃ」(おお、これはモスラのセリフ)

(20)街頭(魔神の視線で)
戦車部隊が角を曲がって魔神の前に現われる。
上空には対戦車ヘリが3機。
戦車が一斉射撃。
激しい弾着の炎に包まれる魔神。
飛び散った破片に血がついている。
(「大魔神」第一作の杭打ちシーンを想起)
魔神は剣を抜くと足元の地面に突き立てた。
緑色の電光が剣から大地に流れ、魔神の足元から戦車隊までの路上のマンホールの蓋、消火栓などが次々と吹き上がった。
次の瞬間、アスファルトが一斉に陥没して、戦車隊を飲み込んでしまう。

「ガッデム!」とヘリの隊員。 ヘリのバルカン砲が一斉に火を吹く。 魔神は剣を上空に向けて掲げる。 剣の緑の電光が黒雲に吸い込まれる。 雲の中で何度か稲光が明滅し、次の瞬間、雲間より数条の稲妻が落ち、ヘリを直撃する。

(21)アラスカリゾートトラスト本社
軍隊がやられてしまう映像を映すTVに、声も出ない社長以下宮城たち。
窓からは、かなり近くにその街の炎が見える。
宮城が席を立つ。
社長「どこへいくんだ」
宮城「やつをたおすんですよ」

別室。 TVを見つめる少女。

少女「魔神様・・・」

一階ロビー。 エレベーターの扉が開き、宮城が足早に出てくる。展示してあるロボットに近づくと、コクピットに這い上がり、乗り込む。 ハーネスで体を固定しキーを回すと、コックピットに灯が点る。フューエルもFを指している。エンジンの音とともに震えだすマフラー。

(22)ビルの外
近づく魔神がビルの壁に映っている。
モーター音とともにその壁が左右に開いていくと、壁の内側に、魔神と同じくらいの大きさの異形のシルエット。
例のロボットである。
(ここはエイリアン2の決闘シーンですね)
中と外とで対峙するロボと魔神。
ロボのランプが点灯し、魔神の顔を照らす。
威嚇するかのように両腕をもたげると、キャタピラを動かして魔神に近づいた。
両腕先端の掘削用ドリル(おおドリル兵器!)が回り始める。
魔神の滑らかな動きと、ロボの機械的なぎくしゃくとした、しかし正確な動きが、はっきりとしたコントラストを生むようにする。
ロボは油圧か空圧で動くことにするとリアル。(ここらはロボコップ2)

アラスカリゾートの本社ビルに入っていく西森他三人。振り返ると、ロボと魔神が戦い始めている。
ドリルの腕を突きだしながら魔神に突進するロボ。 魔神がそれを受けとめる。攻撃のそれたドリルがアスファルトとコンクリートを削って火花を散らす。
魔神の拳がロボットのボディを叩き、金属にいくつもの凹みができる。
魔神が剣でドリルを切り落とすと、宮城は素早くロボを後退させ、腕からドリルの残りを脱落させ、背後に装着した削岩機のパーツに付替える。
魔神の剣が大地を刺して地盤沈下を起こさせた。
地中に引き込まれるロボット。

 あっけなく勝負がついたかに見える。

(コクピットの中)

宮城「ああっ、」
素早く操作盤を叩く。
油圧で変形するロボのパーツのアップが、カットバックで素早く描写。

大地に開いた穴の横を通り過ぎようとした魔神の足を、穴の中からロボの腕が払う。
ロボはキャタピラの足を収納して歩行用のモードに切り替わっていた。
魔神とロボは縺れ合うように組み合ったまま、アラスカリゾートのロビーへ戦いの場を移した。

(23)吹き抜けロビー(というよりアトリウムといったほうが適当)を見下ろす10階の回廊
西森たち三人とはち遇わせした社長。
拳銃を構えて少女を楯にしている。
眼下では魔神とロボが格闘している。
投げ飛ばされた魔神がロビーの支柱に激突。
ビルが大きく揺れ回廊の一部が脱落する。
社長は足を滑らせ手摺りに捕まってかろうじて体を支えている。少女は這う
ようにして長老のもとへ。

魔神たちの戦いでロビー中央の人口樹木の大木が倒れかかる。社長はその幹を伝って地上へ先回り。 一階まで降りてきた4人の前に立ちふさがる。 そこへ魔神に押し倒されたロボットが倒れかかり社長を下敷きにする。
4人は激しい戦いのためロビーを通って表に出ることができない。
魔神の拳がコクピットの上半分を叩き潰した。
キャノピーの破れた穴から宮城の血にまみれた顔が見える。歪んだ操縦席の中で負傷したのだ。
魔神は、動きの止まったロボを頭上に持ち上げ投げ捨てようとしたが、ロビーの端で立ち尽くす4人に気づいて動きを止めた。
ロボを持ち上げたまま、じっと少女たちを見ている。

少女「魔神様・・・」(このセリフばっかやね)
やがて魔神は大きく一回うなずいた。
4人は魔神の横を擦り抜けて表へ脱出する。

ロボットの操縦席で宮城は脱出を試みている。
しかし、体に食い込んだハーネスは外れない。 インパネには故障を告げるメッセージが点滅。
4人の脱出を見届けると、魔神はロボを投げ捨てた。
ゆっくりと宙を飛ぶロボット。
操縦席の宮城の絶叫。
ロビーの噴水の塔を倒してフロアに沈み込むとロボットは大爆発を起こす。
ビルは大きく揺れ、崩れ始める。
脱出した4人が振り返る。
コンクリートの塊の降り注ぐ中で、魔神の腕が交差し、穏やかな表情に変わっていく。
武人像に戻りたたずむ魔神を降り注ぐコンクリート塊が崩していく。 そしてその姿も、崩れるビルの下へ埋もれてしまったのだ。

(おわり)

*妙なイメージソングで海外の失笑を 買うようなことは辞めましょう。(新ゴジラがいい例) 教訓めいたセリフも遠慮したい。(いや美女が野獣を倒したんだよ等)


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