ブックガイド(117)「緋友禅」(北森鴻)
旗師・冬狐堂シリーズの三巻目。短編集である。
今回は萩焼、埴輪、友禅、円空仏をモチーフにした四つのドラマが冬狐堂・宇佐美陶子の目線で語られる。
前作の「狐罠」「狐闇」が長編のため失念していたが、作者は短編の名手でもある。陶子の語りでの短編は、当時のファンには「待ってました」感があったのではと思う。
どの作品にも共通するのは、レプリカと贋作の問題。同時に、芸術家の創作意欲が、そうじゃない一般人の欲望に利用される悲劇だ。職人気質や芸術家の矜持が、欲望に汚される構図は、何も古美術に