栗林元

名古屋市出身。 広告会社で、営業、WEBディレクターとして勤務。 体験を生かした小説「…

栗林元

名古屋市出身。 広告会社で、営業、WEBディレクターとして勤務。 体験を生かした小説「神様の立候補」で、平成3年に第二回ビジネスストーリー大賞(テレビ東京/日本経済新聞)佳作入選。 現在は会社を退職し、マイペースで作品を発表しています。 近著は「不死の宴 第一部・第二部」

マガジン

  • 映画レビュー

    記憶に残った映画の記録として。

  • ブックガイドや書評など、

    自分のアンテナにかかった作品をご案内

  • 小説創作に憑かれた人よ!

    小説やシナリオなど、言葉で物語を描くことに関しての気づきや技に関する記事です。 「小説指南抄」は過去記事を、「創作エッセイ」は新しい記事をアップしています。

  • デジタル文芸

    栗林元の小説作品集。1997年から初めたWEBサイト「デジタル文芸」から名前を取りました。サイトは休眠中ですが、創作活動は継続中。

最近の記事

映画レビュー(95)「ひみつのなっちゃん」

 2023年1月公開の本作、岐阜県郡上市を舞台にしたご当地映画でもある。制作には東映と共に岐阜新聞映画部が加わっている。  ある夏の日になっちゃんが死んだ。ドラァグ・クイーンだったなっちゃんの後輩、バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)の三人はひょんなことから、なっちゃんの郷里・郡上八幡で葬式に出ることになる。車で郡上を目指す三人の珍道中が中盤のメイン。  自分たちの性癖を隠して葬儀に出ようとしている三人は、当初はぎくしゃくとした関係だが、やがて彼らはそ

    • ブックガイド(117)「シャーロック・ホームズの護身術 バリツ: 英国紳士がたしなむ幻の武術」

      「崖っぷちから落ちかけたぼくたちは一瞬ふたりそろってよろめいたんだ。 でもぼくは日本の格闘術であるバリツを少々かじっていて、何度もそれに救われたことがあってね。」 ――サー・アーサー・コナン・ドイル『空き家の冒険』より 当時の記事の翻訳!  ドイルの作品に出てくるバリツとは、イギリス人エドワード・W.バートン=ライトが日本の柔術にボクシング、サバット、ステッキ術を組み合わせて生み出した護身術「バーティツ(Bartitsu)」ではないかと言われている。  1899-1900

      • ブックガイド(117)「緋友禅」(北森鴻)

        旗師・冬狐堂シリーズの三巻目。短編集である。 今回は萩焼、埴輪、友禅、円空仏をモチーフにした四つのドラマが冬狐堂・宇佐美陶子の目線で語られる。 前作の「狐罠」「狐闇」が長編のため失念していたが、作者は短編の名手でもある。陶子の語りでの短編は、当時のファンには「待ってました」感があったのではと思う。 どの作品にも共通するのは、レプリカと贋作の問題。同時に、芸術家の創作意欲が、そうじゃない一般人の欲望に利用される悲劇だ。職人気質や芸術家の矜持が、欲望に汚される構図は、何も古美術に

        • 映画レビュー(94)「パルス」(2006年)

          アメリカ映画だが日本映画「回路」(2001年黒沢清監督)のリメイク。どうりで既視感あった。2006年の作品だが、あの当時のJ-ホラーの味わいが濃い。清水崇監督の「呪怨」が2000年、これも2004年にはハリウッドでリメイクされている。 インターネットとWEBの世界が、まだ不安とともに語られた時代である。その不安がホラーに影響与えたのであろう。ビデオの普及後に生まれた貞子(原作「リング」1991年)みたいなもんだなあ。インターネットが民間に移管されたのが1995年。それからまだ

        映画レビュー(95)「ひみつのなっちゃん」

        • ブックガイド(117)「シャーロック・ホームズの護身術 バリツ: 英国紳士がたしなむ幻の武術」

        • ブックガイド(117)「緋友禅」(北森鴻)

        • 映画レビュー(94)「パルス」(2006年)

        マガジン

        • 映画レビュー
          98本
        • ブックガイドや書評など、
          125本
        • 小説創作に憑かれた人よ!
          108本
        • デジタル文芸
          21本

        記事

          ブックガイド(116)「邪馬台」蓮丈那智フィールドノートⅣ

          北森鴻氏の未完の長編「鏡連殺」を、彼の構想ノートに基づいて浅野里沙子氏が完結させた作品である。そして、私の一番好きな蓮丈那智シリーズの長編でもある。 読み終えて大きな満足感に浸っている。よくぞ完成させてくれた。浅野氏と新潮社には感謝したい。 廃村から始まる謎 村に降りかかる殺戮の予感を思わせるプロローグで一気に引き込まれる。その村とは、鳥取県と島根県の県境にあった阿久仁村。明治の初期に地図から消えている。その村に残る「阿久仁村遺聞」という古書が雅蘭堂・越名集治の手で蓮丈那

          ブックガイド(116)「邪馬台」蓮丈那智フィールドノートⅣ

          映画レビュー(94)「スーパーヒーロー・ムービー !! -最'笑'超人列伝-」

           物語の構図は当時公開された「スパイダーマン」  そこにギャグを詰めるだけ詰め込んだバカムービー。かつての「フライング・ハイ」とか「裸の銃を持つ男」系ですな。レスリー・ニールセンも出てるし。ちなみに「裸の銃~」、嫌いじゃないのよ俺。  今作でもギャグの笑いはバカバカしさに満ちている。  オナラとかゲロとかの汚物ネタ。オッパイやお尻など下ネタなど、ギャグの内容がお下劣で、「ようやるわい」感。ビールでもやりながら観られる作品。元ネタのマーベル系コミックスに対する「リスペクトがゼロ

          映画レビュー(94)「スーパーヒーロー・ムービー !! -最'笑'超人列伝-」

          ブックガイド(115)「うさぎ幻化行」(北森鴻)

          2010年、北森鴻の遺作となった作品。  主人公はフリーライターの美月リツ子。自分を「うさぎ」と呼んでかわいがってくれた義兄が、航空機事故で死んだ。音響技師だった義兄は遺書とは別に、「音のメッセージ」も残していた。環境庁が選定した「日本の音風景100選」の録音データに残された音源を訪ね歩く「旅行き」モノのスタイルなのだが、そこで少しずつ明らかになる事は、同時にリツ子の過去と義兄の過去の縁に迫っていく。 鉄道ファンにも刺さる作品  鉄道旅と遍路など、後半は旅情をそそる展

          ブックガイド(115)「うさぎ幻化行」(北森鴻)

          映画レビュー(93)「ストレンジ・ネイチャー」(2024)

          プライムビデオで視聴。  ミネソタ州などで大量の奇形のカエルが発見された実話を基に創作された、と銘打たれているけど、実質はB級ホラー作品。面白く拝見した。  公害の原因企業たる農薬会社と、その税収に負うところ大な自治体に広がる謎の汚染らしき現象。犬などを経て人間の出生異常まで起きだす。無知や迷信が生む差別意識や暴力など、話の構図は公害問題に揺れる1970年代もかくや、という旧さ。1979年のジョン・フランケンハイマー監督作「プロフェシー/恐怖の予言」である。この作品のネイテ

          映画レビュー(93)「ストレンジ・ネイチャー」(2024)

          映画レビュー(92)「アステロイド・シティ」

           舞台劇「アステロイド・シティ」の舞台裏と劇内世界とを交互に描く構成である。フィクションのフィクションというメタ構造だが、既におなじみの手法である。メタフィクションは、80年代後半にはその新しさが受けた覚えあり。  物語は脚本家が劇を執筆するところから始まり、最後は脚本家の死で終わる。脚本家や役者の現実の思いとリンクする劇中世界。現実世界と心のコントラストが見事に描かれる。  現実がモノクロ映像で劇中世界が総天然色映像というところがミソかな。 「グランド・ブダペスト・ホテル

          映画レビュー(92)「アステロイド・シティ」

          ブックガイド(114)「顔のない男」北森鴻

          2000年の作品なのだが、面白い。本格推理の名に恥じない。ラストまで一気に引っ張られた。  原口と又吉の刑事コンビが全身の骨を砕かれた惨殺死体事件を捜査する。どうやら被害者は、空木という名の探偵らしい。しかし空木という人物は全く謎の人物だった。彼の残した調査ノートから二人は探偵の正体と彼の調査していた謎を追うことになる。 「犯人は誰だ」と同時に「探偵は誰だ」と。なんという挑戦的な話。各話の冒頭に一人称視点のエピソードを配置しているが、物語が混乱することもない。  あまりの面

          ブックガイド(114)「顔のない男」北森鴻

          創作エッセイ(68)活劇シーンについての考察

          小説執筆に関する気づき系エッセイ。今回は動的なアクションシーンについて考えた。というのも、ちょうど現在、執筆中の長編が、アクションシーンで苦戦中だからだ。そこで、小説作品内での活劇シーンに対する個人的な癖などを考察した。 脳内にセットを組む  私は活劇シーン、特に肉体的なアクションや銃撃戦など、キャラの立ち位置や物の配置まで、脳内にセットを組んで描写するタイプだ。逆に、そこまで脳内に準備をしないと書けないわけでもある。 例)引用「不死の宴 第一部終戦編 第五章」より---

          創作エッセイ(68)活劇シーンについての考察

          映画レビュー(91)「Scary Movie 5  最終絶叫計画5」

          安心して見られるおバカ映画。今日は疲れてたので、この手の作品でいいやと。  ホラーパロディ映画だが、主なネタ元は、「パラノーマル・アクティビティ」「ママ」「フッテージ」「死霊のはらわた」「インセプション」「ブラック・スワン」など。でも、細かなシーンに色々なお約束が潜んでいて吹いてしまう。  例えば、冒頭の方のセックスシーンには、大昔のイギリス映画「ドッキリ・ボーイ」(私が観たのは「教習所ドッキリレッスン」だけだが)シリーズのセックスシーンネタが出てくる。どこまで凝ってるんだ

          映画レビュー(91)「Scary Movie 5  最終絶叫計画5」

          ブックガイド(113)「親不孝通りラプソディー」(北森鴻)

          どうも「親不孝通りディテクティブ」という作品の主人公カモ・ネギコンビの高校時代の物語らしい。また、読む本増えたぜ(笑) 突き抜けたキャラたちの狂騒曲ストーリー  この物語の魅力はまずキャラたちの魅力。バカだったり、凶暴だったり、狡かったりといった連中が個性を競っている。  高校生の分際で美人局の被害にあったキュータが、ヤクザの後ろ暗い金を強奪してしまうことから、テッキも巻き込まれてしまう。謎の美女エンジェルとか、おかまバーのマスターとか。絢爛豪華な変人たち。 親不孝通り

          ブックガイド(113)「親不孝通りラプソディー」(北森鴻)

          映画レビュー(90)「セル」

           スティーブン・キングの2006年の作品の映画化。2016年の米国映画。監督はトッド・ウィリアムス。  ストーリーは、突然、何の前触れもなく携帯電話から発せられた謎の信号により、人々の大半が心を持たない凶暴な人間に変わってしまった世界で、ニューイングランドのコミック作家が、幼い息子と再会するために生死をかけたサバイバルをする物語。ゾンビものの変形である。今作ではゾンビではなくフォナーと呼ばれる。  暗澹たる物語で、ラストもダーク。  キング原作でも凡庸な作品にはなるという典型

          映画レビュー(90)「セル」

          ブックガイド(112)香菜里屋シリーズ(北森鴻)

          このシリーズは、バーマン工藤哲也が営むビアバー香菜里屋を舞台に展開される短編ミステリの連作である。 「花の下にて春死なむ」 「桜宵」 「蛍坂」 「香菜里屋を知っていますか」 連作ミステリのお手本  各話に共通するのは、悩みや謎や迷いを抱えた語り手が、ふと立ち寄った小さなバー香菜里屋で、その内容を語る。常連達が感想や意見を交わし、最後に工藤が「~と言うことかもしれません」と控えめに謎を解く。それは残虐な殺人事件でもなく盗難事件でもない。日常に潜む、当事者の心の決着であったり

          ブックガイド(112)香菜里屋シリーズ(北森鴻)

          映画レビュー(89)「オッペンハイマー」

           話題の映画「オッペンハイマー」見てきました。実は、拙作「不死の宴 第二部北米編」で1956年のアメリカ社会を舞台に物語を展開する上で、冷戦当時の米国社会を調べたいた。おかげで当時の核開発と赤狩りの関係など知っていたので、この映画は深く心に滲みました。 アメリカのプロメテウス  物語は、赤狩りでの聴聞会という名のつるし上げシーンと回想シーンとの往来で進行する。彼はドイツからの移民でナチスの原爆研究と対抗するためにマンハッタン計画を指揮しロスアラモス国立研究所の初代所長とな

          映画レビュー(89)「オッペンハイマー」