創作エッセイ(70)インターンシップの志望動機の書き方・伝え方【例文あり】

今回は2017年に書いたビジネス記事の採録。広告業界の出身ということで、そのような業界を希望する就活学生向けに書いてほしいという依頼であった。こんな仕事もしてたんだなと。

近年急速に拡大したインターンシップ。「就活は大学3年のインターンシップから始まっている」などとも言われています。またインターンシップによる就業体験を卒業のための単位として評価するケースも増えています。ただ受け入れる企業も無制限に学生を受け入れることはできません。業界を代表する企業、有名な大企業などになると希望者も多く、きびしい選考を勝ち抜かねば就業体験の機会すら与えられません。どの企業でインターンシップを体験したかが、翌年の就職活動での評価にもつながります。そこでインターンシップの「志望動機」の書き方・伝え方をみなさんにお教えしましょう。


1,志望動機を考える前に決めるべき3つのこと

志望動機とは、なぜこの企業でインターンシップをしたいかという理由。なぜ「この企業」の前に、なぜ「この業界」なのか。その意味を自分の中で明確にしましょう。

(1)社会に与えたい「影響」を明確にする
あなたが将来やりたいことはなんでしょうか?
人間は何らかの形で社会と関わり生きていきます。社会の中で、どのような役割を果たしていきたいか。
インターンも就職活動も、この将来のやりたいことに基づいて決めるものです。
「世界の格差をなくしたい」「日本の文化を世界に発信したい」といった大きなことでもかまいません。「地域の産業振興に協力したい」「公務員になって子育てを支援する」といったもっと具体的なことでもかまいません。
自分がやりたいことをコトバにすることが大事なのです。言語化することで、曖昧だった自分の目標を可視化するのです。

(2)影響を与えたい「ターゲット」を明確にする
誰に対して影響を与えたいのかを考えます。ターゲットとは、例えば「日本の高齢者」「世界の貧しい人」など「どこの、誰に対して」と言う部分です。これは「やりたいこと」を自分の日常に引き寄せてくる具体化の作業です。

(3)「将来やりたいこと」に繋がる、本当の志望業界を知る
「やりたいことを実現できる業界」はどこなのか?
その「実現」はストレートな実現だけではなく、側面から実現を支援することかもしれません。色々な実現へのアプローチを考えて業種を考えます。
その業種を絞った上で、その業界内で興味のある企業が解ってきます。その企業こそがエントリーすべき企業です。

この段階は、自分の本当にやりたいことが固まっているかどうかを改めて自問することに他なりません。もしそれが固まっていないとすれば、せっかくのインターン体験も「単なる社会人体験」で終わってしまうからです。

2,3ステップで書ける!インターンの志望動機の考え方

いよいよ、なぜこの企業でインターンをしたいのかを書く時がきました。しかし、その理由が単に「業界を代表する企業だから」では、多くのエントリーシートの中に紛れて採用は難しいでしょう。では、どうすればいいのでしょうか?その考え方をお教えします。

(1)【STEP1】その業界に興味を持つ、きっかけとなった経験を考える
例えば「コンビニのバイトで手書きのPOPの惹句やイラストで、売り上げが激変することを体験して、コミュニケーションデザインに興味を持って広告代理店を志望しました」など、自分の経験に基づいて業界に興味を持つきっかけを説明します。単なる思いつきや流行で志望したわけではない、というアピールです。
よく考えれば、必ずきっかけとなった自分の体験があるはずです。その体験は実体験である必要はありません。読書体験でもいいのです。自分の身に引き寄せることが重要です。

(2)【STEP2】志望業界の中で、なぜその企業なのか理由を考える
例えば、広告業界であるならば「宣伝会議」に載っていた、御社の「広告が好きな人お断り」というメッセージが心に残りました。「広告の目的は美しさやスマートさではなく、人を動かすことだ」ということが逆説的な表現でぐさりと伝わってきてずっと印象に残っていました。そこで今回、御社がインターンを募集していると知り迷わず志望しました。
など、なぜその企業でなければならないかの理由です。
ここは志望企業に対する「共感」のアピールです。企業担当が「それは弊社でなくてもいいだろう」とか「ちょっと弊社とは違うな」と思われてはいけません。逆に「よく知ってるな」「よく調べてる」と思わせたいものです。それは企業にとってうれしいことでもあります。

(3)【STEP3】志望企業のインターンで何を得たいか考える
例えば、訴求対象のターゲティングや、広告表現の考え方など、広告業務の現場に実をおいて、コミュニケーションデザインの考え方を学びたいです。など、「インターン内容」と「自分のやりたいこと」の共通部分から得たいことを導き出します。ここは、この熱意には具体的な目標という裏付けがある、勢いだけの志望ではないというアピールになります。これはその企業をよく研究していないと出来ないことなので、これが的確に語れるだけで「勉強してるな」と印象がアップします。

このステップの要は、業界とその企業に対する研究や事前勉強は、生半可なものではいけないということです。幸い今はインターネットで企業や業界のWEBサイトを見ることが出来ます。十分に研究して、面接などの際に逆に質問が出来るようにしておきましょう。

3,志望動機で採用担当者が見るポイント

いよいよ、志望動機を提出しました。
採用担当者はエントリーシートに書かれた志望動機、また面接でヒアリングする志望動機のどこに注意しているのでしょうか?

(1)エントリーシート
①論理的に書かれているか
文章が回りくどくないか。結論から書かれていて、その理由が簡潔に述べられるかどうか。内容に破綻がないか。文章の区切りなどに違和感はないか。あいまいな指示語で意味がぼけていないかなど、文章の内容面での注意点です。
ロジカルな文章を書く能力があるかを見ています。

②読み手を意識した書き方をしているか
誤字脱字がないだろうか、読みやすさを意識した適切な改行がなされているか。手書きの場合は文字の丁寧さ。また文法上の間違いはないかなど、文章の技法上の注意と同時に、他者を想定した文章を書いているか、他者が理解できるかどうかをイメージしているかを見ています。

(2)面接
①論理的に話しているか
回りくどくなく結論から述べているか。質問に対して的外れではない回答を簡潔にしているか。
話したいことを一方的に話していないか。破綻のない「話し方」だけでなく、相手のある「対話能力」を見ています。
例えば、アピールしたいことを自分から口火を切って滔々と語りがちですが、これは逆効果です。
もしアピールしたいエピソードがあっても、「~で仲間に助けられ勉強になりました」でとどめておく。担当が「それを詳しく」と促されて初めて話す、ぐらいで十分です。担当が興味を持たなければ、それはアピールに値しない話題だということです。

②自分の言葉で話しているか
「成長」「肌で感じたい」など陳腐でありきたりな言葉で話していないか。「サスティナビリティ」とか「ローンチ」などの横文字用語など「自分の身についていない言葉」で話していないか。
特に面接の場合、採用者は、「志望動機の内容」と同時に志望者の「人間」を見ています。
就職を自分の人生の中でどのように位置づけているのか?
仕事を通して、何を実現していこうとしているのか?
初対面の相手に対して、どのような態度で話すのか?
相手の質問に対しては、「簡潔に」「適切に」「自然に」答えることが重要です。
無理に自分を作ってしまいがちですが、今回のステップで「志望動機」を固めていれば、焦らず面接に挑むことが出来るはずです。面接担当に業界研究で抱いた疑問の質問をぶつけて、一つでも知識を得て帰ってやろう、ぐらいの意気込みでちょうどよいのです。

4.【業界別】インターンシップの志望動機・例文

次に、主な業界別にインターンの志望動機を語った例文を用意しました。今まで述べた要素とプロセスを元に参考にしてください。

(1)広告代理店
 高校時代にボランティアで不登校児童のいじめ問題に直面してなんとなく福祉関係の仕事を目指していました。そのころ、県の人権ポスター”わたしの「ふつう」と、あなたの「ふつう」はちがう。それを、わたしたちの「ふつう」にしよう。”を見て感銘を受けました。直接的な表現ではなくとも、見た人の心に、すっ、と入ってくる広告のコミュニケーションの力に驚いたのです。これをきっかけに広告やコミュニケーションデザインに興味を持ちました。広告の力で社会の役に立つ仕事がしたい。
 今回、私がインターンシップにエントリーするにあたり念頭に置いた企業は、この人権ポスターを扱った御社以外にはありませんでした。御社の広告業務現場で広告目的から訴求の手法までの広告の実際を目の当たりにしたい、学びたいと思っています。

(2)コンサルティング業界
 学生時代にバイク便のアルバイトをしていました。そのとき配送業務の中に、単なる物品の配送ではなく、バイクを移動の手段として複数の不動産物件の写真を写真撮影する仕事がありました。営業に聞いたところ、その依頼主企業の業務改善の手法として時間をとる割に生産性の悪いと言われていた物件調査業務のアウトソーシングを提案したとのことでした。おかげで「営業が本業に専念できると喜ばれた」とのこと。それが企業の問題を解決するコンサルティングという仕事に興味をもったきっかけでした。
 御社のサイトで紹介されていた業務の流れの中で、現場社員へのヒアリングが実にきめ細かいのが印象に残りました。コンサルティングにありがちな上から目線でなく顧客と共に作り上げるという姿勢に、ぜひこの企業でインターンをさせてもらえればと思いました。業務現場での問題点の洗い出しから解決までのカイゼン手法などを学びたいと思います。

(3)金融業界
私は子供の頃から発明や技術開発の物語が好きでした。ただ、中学・高校と進むにつれ、自分が技術・技能や理系的な能力には向かないことに気づきました。そんなとき水道器具の工場でバイトをしている際、その工場が新しいシャワーノズルを開発していくプロジェクトを見ることが出来ました。そこで、銀行のスタッフがその製品開発を支援して実現への道を開いていったことを知り、金融という側面からモノヅクリの支援が出来るのだと気づきました。将来的には様々な業種の企業や団体の支援を手伝える金融マンになりたい。今回のインターンシップで、御社の現場の人たちの心意気に触れたいと考えています。

5.まとめ

「志望動機を書く」ということは、自分の心の中の目標や将来を、他者に伝わるように「言語化」することです。当然、自分の中で、それが曖昧なままでは書けません。逆に「言語化」することで、自分の中で曖昧だった目指すべき方向を顕在化することができるのです。
そして、その内容と同時に、企業の担当者は「人間」を見ています。能力もさることながら「学びたい」という「意欲」と、その裏打ちとなる「具体性」に注目しています。
人間は「教える」ことで「教わる」側面があります。企業現場の「こつ」「経験則」を、改めて外部の人間に教えることで、受け入れる企業も大きな刺激を受けるのです。
自分の志望動機が、単なる思いつきや流行ではなく、「熟慮」と「熱意」の結果であると伝わるようにしましょう。

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