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もしNZに来ていなかったら今頃の僕は?

 ニュージーランドに来てから17カ月が経った。今のまま何も起こらなければ、ここを出る日はもうそう遠くない。少し前までここを出ることに非常に強い精神的な抵抗感があったし、「何としてでもここに残らないと、僕はまた引きこもりになるかもしれない」なんて本気で悩んでいた。今はそんな状態からも脱して、少しはニュートラルに物事を眺めている気がする。結局は繋がるべきところに人生が繋がるから。

 そもそも、こうやってNZに来られたのも半ば奇跡のようだった。1度はパンデミックで無効になったはずのビザが、一昨年3月に突如再発行されたのだった。条件は「半年以内にNZに入国すること」。この知らせは当時実家で引きこもっていた僕にとって、とてもとても大きな光だった。半年後にNZに行ける状態にしよう、と少しずつ社会復帰をしていった。あの半年間、当時の僕にとってはまだしんどいことも沢山あったけれど、久しぶりに何年間も枯渇していたエネルギーが少しずつ湧き始めるのを感じられた日々だったと、今では思う。

 それでも最初は、まさか自分がNZで半年や1年も過ごせるなんて想像すらできていなかった。「もしかしたら1カ月もせずに帰国するかも」、と常に思っていたし、「3-4カ月くらい居られたらそれで良いかな」「もしも、そこまで悪くなければ、もう少し長く居るか」くらいに思っていた。

 それがNZに来てから、特に2カ月目に南島の田舎に移ってから、自分でも驚くほどに状況が好転していった。正直言うと、「直前まで引きこもりだったおっさんだし、初めての海外って訳でもないし、もう酒も飲まないからパーティとかも興味ないし、そんな大して楽しめないかもな」とどこか冷めた目を持っていたのも事実だ。

 それでも自然豊かで気候も良くてスローなNZの風土が肌に合ったのか、自然と穏やかな気持ちで過ごせる時間が長くなり、そうすると不思議と人間関係にも恵まれ、何故だが宿にあったピアノを弾き始め、途中までは誰にも語っていたかった「直前まで引きこもりだったこと」も、徐々に周りに口にし始めた。自分のピアノを気に入ってくれる人も少しずつ現れたり、仕事にも運よく恵まれたし、旅行もNZの北から南まで様々な場所を堪能することができた。

 勿論時期によってはストレスを溜めて少し精神的にダウンしているときもあったのだけど、2-3年前に引きこもってほぼリアルの世界で全く人と関わらずにSNSだけを居場所にしていた人間だったことを考えれば、上々だと思う。短期間で一気に物事が動く局面もあるけれど、基本的にはそんなに何もかもが一気に良い方向に変わることは人生ではほぼないから。

 本当に今の自分の状況には満足している。そして、その状況に持ってこられたのには、沢山の関わって下さった方々のおかげで、本当に感謝してもしきれない。僕はとても幸運な人間だと思う。「あのとき奇跡的にビザが再発行していなければ、どうなっていただろう?」とは、300回くらい思った。まあでもそれを考えても仕方ないし、なるようになっただけなのだと思う。最初からこのシナリオを知っていたらあそこまで思い悩んで引きこもったりしていなかったかもしれないけど、これもまた人生の面白い部分だ。

 とりあえずあと少し。1日1日、穏やかな気持ちで過ごしていこうと思う。ありがとうございます!

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