20年ぶりにピアノを再開した話1

僕がニュージーランドに来てから1番変化したことの1つが「ピアノを再開したこと」だ。子供の頃ピアノを習っていて週1でレッスンに通っていたのだけど、興味の対象が移り変わりやすかった僕は次第に情熱を失っていき、中学校に上がった頃に止めてしまった。その後何度か再開してみたいと薄っすら感じるタイミングはあったものの、結局実現しないまま20年の時が流れた。

状況が変わったのは昨年10月、ニュージーランド南島の田舎町にあるホステルに住み始めてからだ。ホステルのラウンジにあるピアノを見たとき「また弾いてみたいな」と、何となく、でも心の底から感じるものがあった。Youtubeで色々と楽譜を探し、最初は0.5倍速から、しかも右手だけで弾き始めた。習ったばかりの漢字に詰まりながら音読をしていた幼少期を思い出すかのように。それでも1回、また1回と弾いてみる。当然周りから見ても、まだ音楽とも言えないようなレベルだったはずだけど、不思議と恥ずかしさはあまりなかった。それよりも、1回1回少しずつスムーズに弾けるようになっていくこと、上達していく自分自身を見ることがとても幸せだった。

ピアノを再開してから10日くらい経った頃だっただろうか?素敵な出会いがあった。週末だけその宿に滞在していた方が、「コードを使って簡単に両手で弾くコツ」を教えてくれたのだ。子供の頃ピアノを習っていたから楽譜はしっかり読めたのだけど、コードは全く理解していなかった。少しコンフォートゾーンを抜け出す気分だったけど、一通り挑戦してみると確かに比較的楽に両手で弾けるようになっていった。そのあたりから、僕のピアノ練習は加速していった。

最初から沢山の曲をあれこれ練習するよりは「本当に魂の込められる曲を弾こう」と、2-3曲ばかりを繰り返し弾いていた。特に映画『千と千尋の神隠し』の主題歌だった「いつも何度でも」、それから中島みゆきさんの「時代」には思い入れがあるからか、練習をする度に心が震えていた。昔何度も何度も聞いて感動していた音を、下手くそなりにも自分の手で再生しているという事実がこの上なく嬉しくて、弾いていると自然と頬が緩んでいくのが自分でもわかった。

続く

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