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ビジョンがない経営者ってのはバレる

ロベルト・ベルガンティ教授の『突破するデザイン』を読んだ。

一言でいえばイノベーションにおける「量 < 質」の重要性を説いた一冊で、


量より質、
アイディエーションより批判、
ユーザーインタビューより自分のビジョン。


わかる。

数年前に一部の人間だけが布教に勤しんで嫌な顔をされていた「デザイン思考」がいまやそこかしこで叫ばれるようになった。

仕事柄顧客の声こそが神であると脳内に植え付けられた僕たち(UXデザインとかを生業にする者たち)からしたら、ユーザーインタビュー?凡人乙🖕と言い放つ(言い放ってないけど)この本には、「何を言ってくれるんだ」という気持ちにもなるだろうが、しかし個人的には「やっと言ってくれたか」という気持ちが隠せなかった。

ユーザーだとか顧客の声だとかいう亡霊に取り憑かれて、そこそこのモノをつくったり、誰のためでもないキメラをつくるのはもうやめよう。

デザイン思考でうまくいったら80点のものはできるかもしれないけれど、イノベーションって1000点のことでしょ。


……って、僕はデザイン思考をある意味自分の中で否定しながら、とはいえいいとこ取りしてきたわけだけれど、そのいいとこ取りってのがどういう基準だったのかが言語化できていなかった。

それがこの本のおかげでできた。

アイデアがあふれてしまっている今の世の中ではもはや「問題解決」の方法を探っても仕方なくて、イノベーションを起こすには何かの「意味」を変えるしかない。

ヤンキーキャンドルがロウソクの意味を「明るくするもの」から「雰囲気よくするもの」に変えたように。
スナップチャットが写真の意味を「記録するもの」から「会話するもの」に変えたように。
Wiiがゲームの意味を「バーチャル世界へ没入するもの」から「現実世界で交流するもの」に変えたように。

で、デザイン思考は「問題解決」の手法としては優等生だけれど、「意味」のイノベーションは起こさないから、それだけじゃダメ。

ということだった。
心にスッと落ちた。

(※「意味のイノベーション」がなにかというのは、Takram渡邉さんが訳したこの記事よめばOK)

僕が次なにかしらで起業するときは、別に原体験も思い入れもビジョンもないけどユーザーインタビューした結果イケそうな市場だったからその領域で挑戦して上場を狙うみたいなスタートアップゲームはしたくないなと思う。

そもそも自分が飽き性なのでそんな感じだったら続かないし、ビジョンがない経営者ってのはバレる。

未来の僕のビジョンに共感してくれる人とモノづくりがしたい。


ところでこの本の原題は『Overcrowded』で、日本語で「大混雑」みたいな意味。

アイデアが大混雑してる世界の中でイノベーションを起こすためには「意味」が必要で、それこそが『突破するデザイン』ということだけれど、こういう邦訳は好きじゃない。

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