大切なのは、自分のことを理解して、自分のことを好きになること。

長い連休が明けた。今年は退職代行業者が大忙しらしい。そんな状況になるほど、今年の長い休みは「自分の未来を見つめる」時間を人々に与えたのかなとも思う。

社会人一年目の頃を思い出す。新卒のわたしは、希望していた業界にも職種にも就くことができなかった。そのこと自体に不満はあったものの、残業はなく、上司は尊敬できる人物で、目立った人間関係のトラブルもなく、最初こそ戸惑ったものの、客先との関係性も問題なく構築することができた。会社としては至極ホワイトな環境だったと言えよう。

それなのにわたしは心身を壊した。

まず壊れたのは身体の方だった。

会社に命じられて行った健康診断で、肝臓の数値に異常があった。わたしは基本的に飲酒をしない。本来であれば、肝臓の数値は正常なはずなのだ。

つまり、自分に何かの異常が起きている。

医師は至急近所の内科で検査をするようにと指示を出してきた。その足で帰宅して近所の内科で診察を受けた。専門機関に回された。一週間後、病名がついた。

その病気の原因は現代の医学では解明されていないが、ストレスが引き金になるという説がある。見ないふりをしていただけで、わたしの身体は少しずつストレスに蝕まれていたのかもしれない。起き上がれない日々が続いた。ただでさえ太りにくく痩せやすい体質のわたしは病気の影響でどんどん痩せていき、4キロ落ちて体力もなくなった。病院に行くのも一苦労だった。

ちなみにこの病気は、数値が安定するのに五年かかったし、数値が正常になった現在でも、経過観察のために、まだ服薬と通院が続いている。通常であれば服薬して一年や二年で数値が安定するはずなのに、だ。

そこまでかかった原因は、恐らく二つある。

一つは、数値が安定しないまま仕事に復帰したことだろう。

わたしは焦っていた。仕事で結果を出さなくては、誰かに認められなくてはと思っていた。非常によろしくないことだが、わたしは「薬さえ飲めば大丈夫だ」と上司に申し出て業務に復帰した。実際、その後数年は業務時間中はしっかり働けていた。代わりに平日夜と土日に寝込んでいたが、仕事は這ってでも行った。

もう一つは、精神的ストレスの増加によるものだと思っている。

その頃のわたしはプライベートの人間関係がめちゃくちゃで、信頼できる人が殆どいない状態だった。最初は仕事に集中することで乗り越えていたが、ある日、自分には全く関係のないことで客に罵倒されたことで決壊した。

「お前に価値はない」

そう吐き捨てて客は電話を切った。

普段のわたしであれば、「お前にわたしの価値なんざ決められたかねーわ!」とキレ散らかして、仲の良い先輩に愚痴って終わったと思う。しかしその一言は、その頃のわたしの中でいつもぐるぐると回っている言葉だった。自分からも他人からも否定の言葉を浴びせられて、未熟なわたしはどうしていいかわからなくなった。

その日から、何をしていても涙は止まらなかったし、喜怒哀楽の感情がなくなった。大好きだったメイクやファッションに興味が持てなくなった。突然飛び込んでしまいそうになるので、道路や線路を見るのが恐ろしくなった。次第に外に出るのが怖くなった。食事ができなくなって、さらに2キロ減った。唯一病院だけは行った。安定し始めた数値はガタガタだったが、不調はそれだけではないと言われて心療内科に通わされることになった。重度の鬱状態にあると診断された。退職を余儀なくされた。

幸い、休みを取ることで鬱状態は少しずつ軽減していった。少し回復したところで、わたしは別の会社に就職した。

しかしこれがまた厄介だった。前職に比べて仕事内容には満たされたが、会社は組織として成り立っておらず、社内の派閥の対立が激しく、パワハラが横行し、誰もが自分にそれが降りかからないようにと必死になっていた。誰も信用できない環境だった。

そんな重圧感で精神は磨り減った。わたしはそれまで基本的に怒ることがあまりなかったのに、他人、特に家族に対するあたりがきつくなるのを自覚した。元々家族に対して多少問題は抱えていたのだけれど、その我慢の決壊ラインが低くなったのだ。

それによって家族との関係も壊れ、そしてまた食事が摂れなくなり、わたしは生命維持ギリギリのラインで生きていて、それでも仕事に行っていたが、ある日倒れた。もうこのままじゃダメだと思った。わたしはこのままでは生きていけない。このまま生きてはいけない。

働き始めて数年で、わたしはボロ雑巾のようになった。

こうなってしまったのはきっと、自分のことを何もわかっていなかったからだ。

自分は本当は何をしたいのか。

自分はどんな風に生きていきたいのか。

自分はどんな人と付き合っていきたいのか。

退職を決めた。(かなり揉めたけれど)なんとかパワハラや重圧感からは逃れられた。冷静になる時間が欲しかったのと、大嫌いな街から距離をとりたくて、一人で暮らし始めた。まるで「凪のお暇」みたいな人生だなあと思っている。

しかし、その「お暇」をいただいたおかげで、少しずつ回復の兆しが見えている。長い絶食生活の所為で胃が小さくなったのか、少食はなかなか治らないけれど、2キロ取り戻したおかげか体調は良くなった。好きな街で好きなものだけに囲まれて暮らしているので、何もなくてもとても満たされた気持ちになるし、自分が本当に好きだと思えることや、やりたいことがわかるようになってきた。今までできなかったことができるようになって、自己肯定感が生まれてきた。気持ちの穏やかさが戻ってきたので、今は数少ない信用できる人とだけ付き合っている。やりたい仕事ができることにもなって、ずっと憧れていた街で働くことも決まっている。一つ流れに乗ると、良い方向に導かれるものだなとつくづく思う。

社会人一年目のわたしへ言いたいことは、一つだけだ。

自分のことを理解して、自分のことを好きになってください。

そうすれば、過去の社会人一年目のわたしのような失態は防ぐことができるはずだ。そしてやがて、良い波に乗るチャンスを掴むことができる。

わたしもまだまだ課題は山積みだ。しかし、昔のように落ち込むことはない。きっとどうにかなるだろう、気楽にそう思えるようになっている。

サポートは今後の記事のネタ作りにありがたく使わせていただきます。少しでも還元できるように頑張ります!!!!また、「スキ」もしていただけるととても嬉しいです♡