見出し画像

足ぺらの症状と対策について

フリースタイルフットボールをご存知ですか?
サッカーでやるリフティングをパフォーマンスにしたもの。足でやるジャグリングのようなものだと考えてもらえばいいです。You Tubeでたくさん動画が上がっているので、ご存じない方は一度見てみてください。多彩な技があってカッコいいです。

今回協力を頂いたkoji選手


・この記事についての注意

ここから先は、原則としてフリースタイルフットボーラーのためだけの記事です。それ以外の方が読んでもあまり意味がありません。

・足ぺらとは

足ぺらは、フリースタイルフットボール(以下フリースタイルと省略)で、よく発生する症状です。
症状は、演技時に足先に力が入りにくくなり、保持できないこと。また、思っているのと違う方向に動いてしまうことなどです。

大阪のフリースタイルフットボーラーkoji選手の協力を得て仮説と対策を考えています。

足ぺらの原因については、神経、あるいは脳に原因があるとする説(記憶、イップスなど)と、物理的な原因(疲労、損傷など)と考える説などがあります。今回は、物理的な原因について原因と対策を考察したものです。

なお、足に力が入らずに落ちてしまうことと、足の方向が狂うことは、この記事では分けて分析します。
まずは、脱力で足先が落ちることについて。

・脱力・足先が落ちる足ぺらについて

結論から言ってしまうと、主な原因は
「足を保持する筋肉が、過度の負担で弱ってしまうこと」
と考えられます。
その主な原因は、前後の筋力差と腓腹筋の構造です。

左・後ろ側の筋肉   右・前側の筋肉

足先を上げる(背屈)主な筋肉が、前脛骨筋と長趾伸筋。
すねの前側の筋肉です(以降「上げる筋肉」と称します)。
足先を下げる(底屈)主な筋肉は、腓腹筋とヒラメ筋。ふくらはぎの筋肉です(以降、「下げる筋肉」と称します)。

下げる筋肉には、全体重を軽く支えられるパワーがあります。ジャンプができることから考えると、もっと余裕があるでしょう。
一方、上げる筋肉は、私が実験した結果、2リットルのペットボトルを3本載せるだけで限界。
最低でも10倍、実際にはもっと差があると考えられます。

フリースタイルで使われる蹴り方の1つが、ちょんちょんリフティング。いわゆるちょんリフです。足首を固定するようにして蹴る方法で、比較的安定して操作ができることから、広く使われています。

足を固定するために前後の筋肉を締めて固めるのが普通ですが、上述したとおり10倍以上の筋力差があります。上げる筋肉にとっては1人と10人でずっと綱引きをしているようなものです。

前脛骨筋と腓腹筋の筋力差は10倍以上

・腓腹筋の構造上の問題

さらに、下げる筋肉の腓腹筋は、大腿骨(太ももの骨)と、踵の骨をつないでいます。そのため勢いよくヒザを伸ばすと、足先は腓腹筋に引っ張られて下がってしまいます。
これを防ぐため、上げる筋肉の負担は増えます。

なおヒザの他に、koji選手は太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)が張ると、足ぺらが起こりやすくなると感じているそうです。これも太ももの筋肉に対抗するために腓腹筋が緊張し(腓腹筋は膝を曲げる働きもする)底屈が起こるからだと考えられます。

・脱力現象の発生機序

では、どうして筋肉の負担が脱力を起こすのか。

筋肉は連続して力を出し続けるのが苦手です。筋肉が動くにも血液(酸素)が必要ですが、緊張させた筋肉は血管を圧迫するので、補給もできません。上げる筋肉は休みもなく、栄養や酸素も取れず疲労してゆきます。

疲労がある程度たまると、筋肉そのものが固くなって血行不良が慢性化し、力が出なくなります。さらに回復が遅れれば筋肉が細くスジ状になってしまうこともあります。

こうして弱った前の筋肉は十分な筋力が出せず、脱力状態になると考えられます。
とくに小指側を支える長趾伸筋は、指を動かす筋肉。前脛骨筋以上に弱く、疲れやすい筋肉です。そのため、外側が落ちやすいのです。

・では対策は?

上げる筋肉を筋トレで鍛えることも考えられますが、10倍以上の差を埋めるのは難しいです。考えられる対策は以下の通り。

1.腓腹筋をストレッチして伸ばす
これは比較的簡単な対策です。
ヒザを伸ばすことによって腓腹筋が踵を引っ張りますが、その度合は腓腹筋の長さに影響されます。腓腹筋が緩み、長くなるほど、足首に影響が出にくくなるのです。

2.ヒザを伸ばしきらない
ヒザを伸ばせば、腓腹筋が張って足先を落とします。そこでヒザを伸ばしきらないように使うと腓腹筋が緩み、上げる筋肉の負担を減らすことができます。
腰を少し丸くする(骨盤を後傾させる)ように使うと、ヒザを伸ばしきらなくても足先の角度を保てるようです。

3.足首を固定するのをやめる
ちょんリフのように足首を固定する蹴り方をやめることで、前の筋肉の負担は確実に減ります。
慣れた方法からの切り替えは難しいものですが、koji選手の足も、ちょんリフから切り替えて脱力による足先の落ちが少なくなったそうです。

・足先が正しく動かない足ぺらについて

続いて足先が意図した方向へ動かないタイプの足ぺらについて説明します。これは演技中に意図しない方向へ足先が動き、コントロールを妨げるものです。原因としては、イップスや、関節の貼り付きなどが考えられます。

イップスは、いわば脳の誤作動で起こる不正動作です。私はまだ見たことがありませんし、脳・神経系の話になるので、この記事では触れません。
ここでは、関節の貼り付きによるものを解説します。

・足関節の貼り付きによる不正動作

関節の貼り付きは、ケガや使いすぎによって起こる症状で、貼り付きの場所によって動きの方向がズレます。

内くるぶしが貼り付くと、内返しも外返しも極端になる

とくに多いのが内くるぶし周辺の貼り付きで、足の内返し・外返しが極端になります。バレエ・ダンス関係では足先を伸ばした(底屈)状態で足先が内を向くために悩んでいる人が多く、かま足と呼ばれます(足が農具のカマのように曲がって見えることから)
バレエ関係者のかま足については、関節の貼り付きをとることで、多くの方で症状の改善が見られています。

足ぺらで来院されたフリースタイラーでも同様に、内くるぶしの貼り付きが見られ、それを改善することで、ある程度の症状の軽減が見られています。
ダンスとの比較、臨床での結果から、フリースタイラーの足の不正動作についても、内くるぶしの貼り付きが関係しているケースが相当数あると考えられます。

・セルフ関節リリース

簡易なセルフ関節リリースについては、noteに書いた記事
「かま足 自分でできる関節リリース」https://note.com/hakkidou/n/n331040368420
に書いていますので、足先の動きが気になっている方は、一度試してみて下さい。内くるぶしが原因の場合には、ある程度の効果が見込めます(数日間行って変化が見られない場合は、本格的なリリースが必要です)

なお、関節の貼り付きは炎症によるものなので、予防には炎症を抑える必要があります。
方法として、練習直後に保冷剤などで冷却するのが有効です。とくに内くるぶしから足関節前面は伸筋支帯という腱を支える帯があり、リフティングで負担を受けやすい部分ですので、この部分を数分程度冷却することをおすすめします。

足ぺらについては、今後も対策を考えるつもりです。
フリースタイルを楽しむ方々が、末永く楽しめるように、これからも応援してゆきます。

八起堂治療院ホームページ https://www.hakkidou.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?