見出し画像

初めて「真空管アンプ」に出会った日


音楽を聴く習慣がなかった

「普段、どんな音楽聴いているの?」

約3年くらい前まで、何故このような質問をさせるのか分からなかった。

私には音楽を聴く習慣がほとんどなかったからだ。

私 「音楽って、そんなに聞く場面ある?」
Aさん「歩いているときとか」
Bさん「電車に乗っているとき」
Cさん「ドライブしてるときもね」

ほとんどの人はスマートフォンにワイヤレレスイヤホン等を併用して、
気軽に音楽を楽しんでいるらしい。

当時、大学一年生だった私は、
世の中のほとんどの人は日常的に音楽を聴いているという事実を、初めて知ったのである。

暮らしに欠かせない「音」

私が音楽を聴くようになったのは、2020年以降。
コロナパンデミックの影響で、大学の講義がリモートで行われるようになった。
大学に行かなくてよくなった代わりに、家に居る時間が圧倒的に増えた。

当時住んでいたのは、六畳一間のワンルーム。
食事をして寝る以外の用途がなく、まるで模範囚の独房のような部屋であった。

こんな味気ない部屋に一日中いたら、気が狂ってしまう!!

危機感を抱いた私は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)をあげるべく、
急速に部屋の環境整備を進めた。

まずは、断捨離、次にインテリア。
女子学生が住んでいるとは思えないようなシケた部屋が、
一気にシンプルで快適な部屋へと変わった。

でも、何かが足りない。

植物か?
観葉植物をおいてみた。雰囲気はよくなったけど、物足りない。

ライトか?
すごくムーディーになったけど、やっぱり何か足りない。

香りかな?
嗅覚は満足したけど、まだ足りてない。

……そうか、「音」がないんだ!

とはいえ、名古屋では、沢山の「音」に囲まれていた。

私が住んでいたのは学生マンションだったので、たびたびお隣の学生が友人を連れてきていた。

マンションの壁が薄いのか、話し声がくっきり聞こえてくるのである。
夜中も、時折若い男達がわめく声が聞こえたり、猫が喧嘩する声も聞こえてきた。

コロナパンデミックのおかげで在宅時間を快適にしたいと思った私は、「音」に飢えていた。

とはいえ、人の話し声や、車の音、猫の喧嘩は聞き飽きた。
私が欲しかったのは、自分を快適にしてくれる「音」だ。

少しでも煩わしい音から気を逸らし、
簡素な都会のワンルームを快適な「音」で満たすべく、
スピーカーを購入した。

部屋が狭かったので、スピーカーも小さいものにした。
サイズは7cm×7cm×7cmくらい。
軽量でコンパクトだけど、迫力サウンドが魅力ということで、購入して部屋に置いてみた。

結果、一気にお部屋の快適度が上がったのである。
インテリアを整え、観葉植物もおき、良い香りで満たした部屋に
大好きな音楽を流し込めば、そこは極上空間。
家具が寄せ集められただけのシケた部屋が、見違えるように変わったのだ。

そして、部屋に流す「音」を変えると、
魔法にかかったように空間が表情を変えるのである。

ジャズを流せば、ムーディーでオシャレに、
クラシックを流せば、リッチで上質に、
自然音を流せば、素朴でリラックスできる場所になった。

「普段、どんな音楽聴いているの?」
そう皆が聞く理由がようやく分かった。

「音」は目で見ることも、触ることも、味わうこともできないが、
人に孤独を感じさせることもあれば、
人を幸せにすることもある。
「音」は暮らしに欠かせないものなのだ。

初めて見た「真空管アンプ」

先日、私の師匠・日比野貴之が運営するKAMOSHIKA MURA Official storeに掲載してほしいものがあるとのご要望で、
手作りの「真空管オーディオセット」を見せていただいた。「真空管アンプ」と「木製のスピーカー」の豪華なセットだ。

真空管オーディオセット

正直私はその日まで、「真空管アンプ」というもの自体知らなかった。
事前にお写真を拝見したときに、
「ん?何か突起物がついてるぞ?」と不思議に思った。

なにせ、私の音楽経験は実質まだ3年。
「音楽を聴く機械」といえば、スマートフォンと在学中に買った小さなスピーカーくらいしか使ったことがない。

そもそも、よく考えたら「プレイヤー」と「アンプ」、「スピーカー」の三点を揃えた経験がない。
でも、今の世の中、案外そういう人も多いのではないだろうか。

だから、「真空管アンプ」も「木製スピーカー」も、いろんな意味で私には"新しかった"のだ。


しかし、「真空管アンプ」自体は古い歴史がある。
21世紀に入ると半導体に取って代わるようになったものの、
20世紀から、真空管は開発・研究されてきた。

真空管とは、電球のような形のガラス管で、その内部は真空状態となっている。
管の中には電気の流れる回路があり、そこで音の増幅がコントロールできる仕組みになっている。

「真空管アンプ」によって音質や音の大きさが違うらしいが、
今回見せていただいたのは、真空管と半導体を組み合わせたハイブリッド形式なので、
小型でも、しっかりパワーがある。

とはいえ、他に便利なオーディオがあるなかで、なぜ旧式の「真空管アンプ」なのか?

半導体の登場から「真空管アンプ」の目立った活躍は減ったが、
いまだマニアがいて「真空管アンプ」を自作する人は少なくないのだとか。

自分でもいろいろ調べてみたが、機能面でいえば、最新のオーディオでも十分間に合う。
「真空管アンプはいい音を鳴らす」というが、その説はアヤシイという意見もある。

では、人々は「真空管アンプ」の何に惹かれるのだろうか?

人々が「真空管アンプ」にはまるワケ

「真空管アンプ」を見ていて、思い出したものがある。

カメラの「ライカ」だ。

「ライカ」とはドイツの老舗メーカーが生み出した高級カメラブランド。
19世紀中頃に顕微鏡メーカーを設立した経歴から遡れば、「ライカ」も結構歴史がある。

「ライカ」はカメラ好きなら、一度は憧れる代物だ。

しかし、便利で多機能のデジタルカメラに慣れている人からすれば、
「ライカ」は機能上、使いづらいところが沢山ある。

「ライカ」は非常にアナログの要素が多く、
主流のM型は、オートフォーカスも手ぶれ補正の機能もない。
(同じライカでも、モデルによって機能が違う。)


多機能の安いデジタルカメラに比べたら、"不便"だと感じるが、
"不便"ということは、自分でコントロールできる余地があるということでもある。

M型ライカは、レンズに電子部品を使っていない分、
レンズをメンテナンスしていけば、長く使うことができる。

そして、「ライカ」好きのほとんどは、「クラシックで格好いいデザインがたまらない」と言う。
古くから受け継がれ来た「ライカ」のフォルムには、ロマンがあるのだとか。

「ライカ」を引き合いに出してみると、
「真空管アンプ」と共通点がある気がしたので、書き出してみた。

  • 古い歴史がある

  • クラシックなデザインが人気

  • アナログな作り

  • 自分でカスタムができる

歴史があったり、レトロなデザインといった様々な魅力があるとはいえ、
機能性や"便利"さを優先する人にとっては、
「真空管アンプ」も「ライカ」もわざわざ選び取る理由が分からないかもしれない。

実は、私も機械には多機能と利便性を求めるタチである。

しかし、今回は「真空管アンプ」や「木製スピーカー」の制作者と、
それを購入する未来の買い手の気持ちを、
自分なりに想像してみた。

すると、彼らが求めているのは、
「愛着」なんじゃないかと思うようになってきた。

まず、「真空管アンプ」において最も興味深いのは、
市販のものがあるのに、「自分でわざわざ作る人がいる」ということだ。

安くて便利なオーディオ機器を買えばすむのを、
「真空管アンプ」をわざわざ作るのは手間がかかる。

でも、自分で作れば「愛着」がわく
機能面では、最新のオーディオ機器よりも劣るかもしれないが、"自分で"カスタムができる
そうすれば、もっと「愛着」が持てる

「真空管オーディオセット」のこれから

今回ご紹介いただいた「真空管オーディオセット」の制作者は、
要望に応じて、音の調整をしてくれるそうだ。
また、アンプのボディもスピーカーも、カスタムができるとのこと。

私の師匠のお知り合いに備前焼の陶芸家がいらっしゃるので、
アンプやスピーカーのボディを備前焼で作ろうかという案も出ている。

つまり、これから進化していく可能性があるのだ。

「真空管オーディオセット」は既製品を買っておしまい、ではない。
世界で唯一、自分だけのオーディオセットが持てるのである。

現代アート作家の師匠は、初めて「真空管オーディオセット」を見たとき、
自分が制作中に使っているところが想像できたという。

私もそうだが、作品を制作している最中は必ず音楽をかける。
無音でも支障はないが、孤独で過酷な制作の共に音楽があると安心するのである。

このように、「音」が暮らしに欠かせないものとなっている人にとって、音楽を流す機械は重要だ。

私がコロナ過に小さなスピーカーを買ったことでQOLが爆上がりしたように、
「音」と自分の生活を繋げてくれる媒体は、日々を彩ってくれる。

そして、それは「一生もの」になる可能性がある。

真空管オーディオセット

ありがたいことに、今回ご紹介いただいた「真空管オーディオセット」は、
都会の小さな部屋でも合うような、コンパクトでオシャレなデザインになっている。

しかも、一年のメンテナンス保証つき。
その後も、自分の好みに合わせてカスタムできる。

安さと利便性を求めるなら、数千円で買えるスピーカーを購入すればいい。
ただ、「音」のある暮らしをよりよくしたい
「愛着」をもち、「愛着」を育んでいきたいという方は、
ちょっと立ち止まって、「良い買い物」を求めてもよいのではないだろうか。

興味があったら、是非、KAMOSHIKA MURAの公式オンラインストアに立ち寄ってほしい。


最後まで読んでくださってありがとうございました。



















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?