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事前指示書・尊厳死宣言書とは?

「自分らしい終末期を過ごしたい」「延命治療は受けたくない」などの希望はあるけれど、どのようにしたら実現できるのかと心配されている方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、終末期の過ごし方や医療・ケアの希望を記した書面である事前指示書や尊厳死宣言書についてご一緒に見ていきましょう。


事前指示書とは?

事前指示書とは、自分自身で判断ができなくなった場合に、どのような医療やケアをして欲しいか/して欲しくないかの希望をあらかじめ書き記した書面のことです。リビングウィルともいいます。

延命措置、苦痛緩和措置、緩和ケア、最期の過ごし方などについて希望を具体的に書きます。

延命措置は、回復する見込みがない患者に生命を維持・延長させるための人工呼吸器などによる呼吸機能の補助や、点滴、胃ろうなどによる栄養・水分の補給を行うことです。

苦痛緩和措置は、疼痛や呼吸困難など身体的な苦痛に応じて、医療用麻薬を投薬することなどをいいます。

終末期医療に関する事前指示書(例)
私○○○○は、自分自身の終末期の医療・ケアについての私の意思を明らかにするため、ここに次の通り指示をします。
1 私の傷病が不治の状態に陥り、かつ死期が迫っていると診断された場合、又は明瞭に意思表示ができない場合、死期を延ばすためだけの次の延命措置を行わないでください。
(1)胃瘻の処置
(2)人工呼吸器の装着
2 しかし、苦痛を最大限緩和するための処置は実施してください。
3 私のこの指示書による要望を忠実に果たして下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これらの方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。
4 この指示書は、私の精神が健全な状態にあるときに作成したものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。
作成日   年  月  日
(本人)
住所
氏名(本人署名)   印
生年月日
(証人)
住所
氏名(証人署名)   印
連絡先電話番号

尊厳死宣言書とは?

尊厳死宣言書とは、尊厳死を望み、延命治療を中止・拒否する考えを記した書面のことをいいます。公正証書で作ることも可能です。

尊厳死とは、延命措置を行わないで、人としての尊厳を保って死を迎えることをいいます。

尊厳死宣言公正証書(例)
本公証人は、尊厳死宣言者〇〇〇〇の嘱託により、〇〇年〇〇月〇〇日、その陳述内容が嘱託人の真意であることを確認の上、宣言に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。
第1条 私〇〇〇〇は、私が将来、病気、事故又は老衰等(以下「傷病等」という。)により、現在の医学では不治の状態に陥り、かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に携わっている方々に以下の要望を宣言します。
(1) 私の傷病等が現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫っていると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合には、死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。
(2) しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとしても構いません。
第2条 この証書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である次の者の了解を得ております。
妻〇〇(生年月日)
長男〇〇(生年月日)
長女〇〇(生年月日)
私に前条記載の症状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従い、私が人間としての尊厳を保った安らかな死を迎えることができるようご配慮ください。
第3条 私のこの宣言による要望を忠実に果たして下さる方々に深く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされた行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執ったことにより、これらの方々に対する犯罪捜査や訴追の対象とすることのないよう特にお願いします。
第4条 この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたものであります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明らかにしておきます。

書面を作ればほんとうに実現される?

「自分のことは自分で決める」という自己決定権が尊重されますが、法的拘束力は発生しないため、書面を作ったからといって必ず実現できるとは限りません。これは公正証書であっても同じです。

いざというとき書面が見つからない場合は?

終末期の過ごし方や医療の希望を書面に作っておくことは大切です。しかし、「もしも」のときに、家族が書面を探したり、読む余裕がないかもしれません。

ACPを行う

そこで、パートナー、信頼できる友人、家族、親族、主治医やケアマネージャーなど医療・福祉のスタッフなどを交えて、ACP(アドバンス・ケア・プランニング:人生会議)を行うことをおすすめします。

ACPとは、終末期の過ごし方や医療について、信頼できる方や専門家と話し合い、その希望をみんなで共有する取り組みです。

ACPを行うことで、気持ちが整理できるとともに、書面作成の経緯や書かれている内容の意図がより明確になり、「もしも」のときにより真意が伝わりやすくなります。

医療意思表示書を作る

本人と意思疎通ができないとき、医療機関・福祉施設のスタッフは、通常であれば配偶者、子ども、親、きょうだいといった家族に説明・相談しながら、医療・ケアの方針を決めます。

しかし、家族がいなかったり、疎遠で、普段からもっと身近にいて信頼できる方、例えば事実婚・同性カップルのパートナーにその役割をお願いしたいという方もいるでしょう。

そのような場合は、医療意思表示書という書面で、その方を「家族等」に相当する代理人として指定し、優先的に面会できる権利を与えたり、自分の代わりに説明を受けたり、医療判断をする権限を委任しておくことをおすすめします。

まとめ

「自分らしい終末期を過ごしたい」「延命治療は受けたくない」などの希望は、事前指示書(リビング・ウィル)や尊厳死宣言書という書面で意思表示できます。ただし、これらの書面には法的拘束力はないため、確実に実現できるとは限りません。

そのため、お元気なうちに、パートナー、信頼できる友人、家族、親族、主治医やケアマネージャーなどを交えて、終末期の過ごし方や医療・ケアの希望について話し合い、情報共有をしておくことをおすすめします。

もしも、書面を作るうえで心配ごとや疑問などがありましたら、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました!^ ^