公正証書遺言とは?
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成に直接かかわる遺言です。信頼性が高く、要件不備で無効になることがほとんどないというメリットがある反面、作成費用がかかる、作成までに手間がかかるといったデメリットもあります。
そこで今回は、公正証書遺言の全体像についてご一緒に確認していきましょう。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言は、公証人が遺言者から遺言の内容を直接聞き取り、公証人が書面にする公文書の遺言書です。
公証人・公証役場とは?
公証人は、当事者などからの依頼により「公証」をする法律の専門家です。裁判官、検察官、弁護士など長年法律関係の仕事をしていた人のなかから法務大臣が任命します。
公証人が仕事をする場所を公証役場といいます。
遺言書作成の流れは?
STEP1 遺言の構想を作る
どのような遺言にしたいかを考え、遺言に書きたい内容を書き出します。メモ書きで大丈夫です。
自分の持っている財産を相続人にどのように分けたいか
相続人以外に財産を贈りたい人・団体があるか
遺言の内容を誰に実行してもらうか
お墓の管理やペットのお世話などは誰にお願いするか
財産を贈りたい人が先に亡くなってしまった場合はどうするか
遺言で残したいメッセージなど
STEP2 必要書類等を準備する
遺言者の印鑑証明書(3ヵ月以内に発行されたもの)・実印
遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本や除籍謄本
財産を相続人以外の人に遺贈する場合は、その人の住民票の写し、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの。法人の場合は、その法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)
不動産が含まれる場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)・固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
預貯金が含まれる場合は、通帳(コピー可)
その他財産がわかる資料(メモ可)
STEP3 証人を決める
作成日当日に公証役場に同行し、作成の場に立ち会ってくれる証人を2人決めます。
証人になることができない人は、未成年者、推定相続人、受遺者、これらの配偶者、直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人です。
こころあたりがない場合は、公証役場や行政書士などの専門家に相談してください。
STEP4 公証役場に依頼する
公証役場に直接出向いて作成する場合は、どこの公証役場でも作成できます。
病気などで公証役場に行くことができないときは、公証人に自宅や病院などに出張してもらうことも可能です。その場合は、出張して欲しい場所のエリア(法務局・地方法務局の管轄)を担当する公証役場に予約します。
STEP5 公証人と打ち合わせ
遺言者または遺言者から依頼を受けた人から公証人に遺言の構想や財産がわかる資料を公証人に渡します。
それをもとに公証人が公正証書の文案を作成し、メールなどでやり取りして最終案をまとめます。
STEP6 公証役場に出向いて公正証書を作成する
作成日当日は、証人2人が立ち会いのもと、遺言者本人と公証人とで公正証書遺言を作成します。
遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授
公証人が、遺言者の口述を筆記
公証人が、遺言者の口述を筆記したものを遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させる
遺言者および証人が、筆記の正確なことを承認し、署名、押印
遺言者が署名できない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。
遺言書の作成にかかるお金は?
公証人手数料
公証人に支払う手数料は、遺言で相続させる・遺贈する財産の金額をもとに計算されます。
(目的の価額:手数料の金額)
100万円以下:5,000円
100万円を超え200万円以下:7,000円
200万円を超え500万円以下:1万1,000円
500万円を超え1,000万円以下:1万7,000円
1,000万円を超え3,000万円以下:2万3,000円
3,000万円を超え5,000万円以下:2万9,000円
5,000万円を超え1億円以下:4万3,000円
1億円を超え3億円以下:4万3,000円に超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下:9万5,000円に超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した額
10億円を超える場合:24万9,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額
(加算項目:手数料の金額)
遺言加算(1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合):1万1,000円加算
祭祀主宰者指定:1万1,000円加算
病床執務加算(出張作成する場合):遺言加算を除いた目的価額による手数料額の50%加算
また、公証人が出張した場合は旅費(実費)と日当(1日2万円、4時間まで1万円)、キャンセルした場合はキャンセル料がかかります。
例1:3,000万円の財産を妻1人に相続させる場合
2万3,000円+遺言加算1万1,000円=2万4,000円
例2:妻に2,500万円、長男に2,500万円の財産を相続させる場合
妻分2万3,000円+長男分2万3,000円+遺言加算1万1,000円=5万7,000円
例3:妻に6,000万円、長男に4,000万円の財産を相続させ、祭祀主宰者を指定する遺言を出張作成する場合
(妻分4万3,000円+長男分2万9,000円)×1.5+遺言加算1万1,000円+祭祀主宰者指定1万1,000円=13万円+旅費・日当
必要書類の取得費
(書類名(取得先):窓口交付(コンビニ交付))
遺言者の印鑑証明書(市区町村):1通200円(1通150円)
遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本(市区町村):1通450円(1通450円)
遺言者と相続人との続柄がわかる除籍謄本(市区町村):1通750円(なし)
遺贈先(個人)の住民票 (市区町村):1通200円(1通150円)
遺贈先(法人)の登記簿謄本(法務局):1通600円(なし)
不動産の登記簿謄本(法務局):1通600円(なし)
不動産の固定資産評価証明書(市区町村):1通200円(なし)
※市区町村の手数料の金額は、立川市役所の場合
このほか行政書士などの専門家にサポートを依頼した場合は、数万円~十数万円ほどの報酬がかかります。
遺言書を作った後は?
公証役場で作成後に、「原本」「正本」「謄本」の3通が交付されます。
原本:公証役場で保管
正本:遺言者が保管
謄本:遺言者が保管
もし、手元に保管していた正本・謄本が見当たらなくなってしまったとしても、原本が公証役場にあるので安心です。保管料はかかりません。
また、どこの公証役場でも遺言検索システムで遺言の存在が確認できます。確認ができる人は、遺言者の生前中は遺言者本人のみ、遺言者の死亡後は法定相続人、受遺者、遺言執行者(代理人可)です。
まとめ
ここまで見てきたように、公正証書遺言は信頼性が高い反面、作成できるまでに時間や手間、費用がかかります。しかも、遺言書に書く内容は、すべての遺族に配慮されたものでなければいけません。
遺言書の作成について疑問や不安がありましたら、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました!^ ^