見出し画像

ライブ遠征日記〜BUMP OF CHICKEN長野〜


 先日、BUMP OF CHICKENのアリーナツアーbe thereの長野公演に行ってきました。新幹線に乗って、ビジネスホテルで一泊して、いわゆるライブ遠征というものです。住んでいる地域にバンドが来てくれるのも嬉しいけれど、それとはまた違った良さが、遠征にはあると私は思っています。
 この記事では、日記形式で、BUMP OF CHICKENの良さについても多少触れつつ、遠征の楽しさについて書いていきます。バンドのライブや遠征に行ったことがない方がお読みになっていましたら、少しでも雰囲気を感じていただければ嬉しいです。なお、ライブの内容については触れていませんので、ネタバレの心配はありません。

1日目 4月1日

 乗車した新幹線がホームを出発する。高いビルや密集した住宅群が車窓の向こうで後ろへ流されてゆく。遠くに山が見え始めてから、駅弁を広げて食べた。昼食には少し早めの時間だったけれど、朝が早かったからお腹が空いていた。天気はとても良かった。

「いい天気だな」

 この日のために買ったボディバッグから、白い猫のぬいぐるみを取り出して、外の景色を見せてやる。どんな季節でもマフラーを巻いて、雨でもないのに長靴を履いている彼は、いつもは家でお留守番をしているが、今回の旅行では心強い相棒になるだろう。
 通路を挟んだ向かい側の座席に座る人の、テーブルの上が視界の端に入る。そこには、白い猫のアクリルスタンド。私の手元の相棒と、同じ猫のキャラクターだ。
 この白猫はBUMP OF CHICKENのマスコットキャラクターで、名前はニコル。つまり、向こうの席にも、私と同じくこれからBUMPのライブに行く人たちが座っている。友達と遠征なのか、スマホでアクリルスタンドを撮りながら楽しげに会話をしている。通常の旅行ならば、こんなふうに他人が自分と同じ目的だとはっきり分かることもないだろうし、同じ車両に乗り合わせることだって稀だろう。
 長野駅に到着すると、同じ車両からぞくぞくと、上着だったり、Tシャツだったり、バンダナやキーホルダーだったり、BUMPのグッズを身につけている人たちが降りてゆく。かくいう私も、ニコルがプリントされているTシャツを着てきた。
 ライブ会場に行く前からすでに、非日常が始まっていた。

 荷物はいったん駅のロッカーに預けて、事前にチケットを取っておいたシャトルバスに乗り、会場へと向かった。

 こちらは会場に止まっているツアートラック。これにライブで使う機材を詰め込んで、各地を回るんだろう。周りは、開場時間を待つ人や、新しいツアーグッズを買うため物販に並ぶ人たちで賑わっている。

 ライブの内容について割愛する代わりに、ここで、BUMP OF CHICKENの良さを少しばかり……。
 メンバーの4人は幼稚園のころからの幼馴染だ。ボーカル&ギター担当の藤原基央さんが、作詞作曲を手がけている。藤原さんの紡ぐ言葉と、4人で出す音が、私はとても好きだ。難しい言葉を使わずとも、持てる限りの言葉を尽くせば伝わる表現を作れる、ということを私はBUMPから教わった。
 メンバーは、曲を聴いてくれる人たちのことをファンとは呼ばず、リスナーと呼ぶ。ライブに来てくれた人の中には、BUMPの曲が好きだ!と自覚している人もいれば、なんとなく誘われて初めて来る人もいるかもしれない。そんな配慮もあって、一度でもBUMPの曲を聴いてくれた人は、彼らにとってはみんな平等に、大切なリスナーなのだ。
 結成してから随分経つメジャーなバンドなのに、実はファンクラブというものが、このBUMP OF CHICKENには無い。長く曲を聴いてきた人も、最近聴き始めたばかりの人も、リスナーとして平等に扱っている。ライブのチケットの当落も、良い席に当たるかどうかも、完全に運だ。
 彼らの音楽は、聴きたい時に聴けて、いつでも戻ってくることができる。だから、どんな時でも、誰でも、気兼ねなく好きになれる。

 数年前から閉演後に、会場内の撮影ができるようになった。私も、記念に何枚か撮影した。
 ちなみに、ライブには1人で来ている方もいるし、グッズを身につけていない方もいる。藤原基央さんがMCで何度か仰っているのが、どんな聴き方をしてくれても構わない、ということ。立ち上がって周りに合わせてノっても、座ってじっと耳を傾けていてもいい。なので、ぜひ気負いなくライブに行ってみてほしい。

「終わってしまった」
※ちなみに、ニコルくんが着ている服は手作りです。

 開演中は、盛り上げ担当として大活躍したニコルくんも、帰りたくないよと、ぐずっておられます。君のおかげでライブが数倍楽しくなるんだよ。ありがとう。

2日目 4月2日

 朝10時前にビジネスホテルを出て、観光のために善光寺へと向かった。雲一つない快晴で、むしろ少し暑いくらいだ。
 長野駅から参道まで歩く、私の肩から下げているバッグからは、ニコルくんがひょっこりと顔を出している。実は前日、長野駅に到着してからは、ずっとこんな感じで私は浮かれていた。子供じゃあるまいし、平時ならぬいぐるみを持って出かけるのも躊躇うけれど、街を歩いていると、同じようなBUMPリスナーによく遭遇するからへっちゃらだ。ライブでの気持ちの高揚もあって、少しばかり大胆になれる。ぬいぐるみを持って行くと旅行をより楽しめるというのを、何かで読んだことがあったけど、あれはたぶん本当だ。
 この日も、前日と同じ会場でライブがあるので、観光地にはそこらにリスナーがいる。メンバーが口にした食べ物のお店なんて、どこもリスナーが行列を作っててびっくりするくらいに混む。
 みんな、普段は学校に通ったり仕事をしていたり家事や育児をしている人たちで、それがライブになると、BUMP OF CHICKENの音楽を真ん中にして一つの街にたくさん集まってくる。東京とかだと、行くところが多すぎて分散するから、ここまで遭遇率は高くないだろう。地方遠征の良さは、そんなお祭り騒ぎのような非日常を体験できるところだ。

中村屋さんのクリームあんみつ
お昼に食べた、駅近のお蕎麦屋さん

 私はそこまでミーハーではないので、さっと入って素敵な店を見つけるのが気に入っている。
 善光寺への参拝を済ませたら、参道沿いのお店でお土産を買って、名物の野沢菜入りのおやきも食べて、来た道を再び長野駅まで歩いた。

「わあ、きれい」

 地元で桜の見頃を迎えたときは、あいにく天気が悪くて残念な思いをしたけれど、ここ長野では青空の下、満開の桜に迎え入れられた。奇しくも、遠征をすることで桜前線に追いついたみたいだ。
 しかも私が行ったライブは、4月1日。新年度がBUMP OF CHICKENのライブで始まるなんて!そんな、ちょっとした奇跡に感動する。重なる些細な偶然が、どうしようもなく嬉しいのも、4人の音楽がかけてくれる魔法なのだろう。

「くんくん、これはなあに?」

 帰りの新幹線を待つ間、ニコルくんに「これは『米の天然水』なんだよ」と1日遅れのエイプリルフールの嘘をついた。
 今回は、コロナ禍の後に行った初めてのライブ遠征だった。間違いなく、行って良かった。繰り返す変わり映えのない日々の中で、何度でも彼らの奏でる音楽を見つけて、また会いに行きたい。

 最後になりますが、BUMP OF CHICKENの新曲『窓の中から』が配信されております。感激なことに、今回行ったライブでは初演奏で聴くことができました!ほんと、素敵なバンドですので、ぜひ公式YouTubeチャンネルで他の曲も聴いてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?