引っ越してきてから、しっくりくる神社を見つけられずにいた。以前は思い立ったらすぐ行ける、自分に合う神社があった。
頭の中がザワザワしたとき、何か報告する出来事があったとき、空が気持ちよく晴れていたときにお参りしに行っていた。
引っ越してから幾つか神社を巡ってみたけれど、自分で運転していくには遠かったり駐車場が狭かったり参拝客が多かったり。
けれど先日ようやく見つけることができた。
最初は不安なので夫に頼んで連れて行ってもらった。

鳥居をくぐって階段を登ると、きちんと手入れされている杉林に囲まれた本殿がある。振り向くと田んぼと山と青空が広がっている。手水舎はなんと湧き水。
この神社に行くまでの道も見晴らしが良くて気持ちがよかった。初詣もこれからはここにしようと思った。

私は特に信心深いわけではない。
毎日テレビやSNSや本などからたくさんの情報が流れ込んできて、いろんなことを考えているとだんだん頭の中がザワザワしてくる。ひどくなると頭の中で勝手に話す声が聞こえる。
数ヶ月に一度、そんなふうになると神社に行く。
長い時間手を合わせてお参りする。その後ベンチに座ってボーッとしていると頭の中が空っぽになる。
神社は私にとってなくてはならない場所だ。



2度目は私ひとりで運転して行った。雲がきれいで気持ちが良かった。
いつもは空っぽになるために行くのだけれど今回は空っぽ過ぎたので行くことにした。
ベンチに座って景色を眺めながらぼんやりしていたら、太陽の光が温かくて景色は美しくて、空っぽのところがぬくぬくしてきた。
今がちょうどプラマイ0の地点にいるのかもしれない。
過去も未来もなくて「無」。
空っぽの中にいる「無」はぬくぬくしていた。