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詩4 終章 真夏の青い空


「私とリー」は、4章構成、全25詩からなり
ます。本詩は第4章(第25詩)にあたります。

暑い夏の青い空。

日差しが肌に刺すように厳しい中、
僕は道を歩いている。

すれ違う人たち。

その目線は常に前を向いていて、
誰も僕に気が付いていないようだ。

学校の近くにさしかかる。

校庭と道路を仕切るようにネットが
張られていて、その外側を僕は歩く。

校庭ではサッカーをしている子供たちと、
それを見ている親たちがいる。

目に鮮やかな赤と青のストライプの
ユニフォームを、小学生と、幼稚園生
くらいの子供が着て、サッカーの練習を
している。

歩きながらなんとなく練習風景を眺め、
風景として通り過ぎる。

しばらく歩くと、
自動車道の脇の歩道に来る。

ここは、川を渡るためにいつも通る場所。
日差しを避ける建物が何もないので、
とても暑い。

暑さに耐えながら、歩道沿いの橋を渡る。

橋から眺める川面には、
青い空と白い雲が映し出されて、
とてもきれいだ。

流れる川の両側は緑の草が生い茂り、
風が吹くたびにザワザワと風の向く方向に
草が揺れていく。

僕はその草が揺れる川の土手を歩きたく
なり、橋から続く道から逸れて、
土手沿いに歩き始める。

何人も人が歩いたせいか、
土手の道は真ん中に短い草が延々と続き、
草の両側に二つの筋のような道が
できている。

しばらくその道を、
気持ちよく歩いていくと、
土手の脇に走る道の向こう側にかなり古い
お寺が見えてくる。

僕は土手から下りて、お寺の境内の入り口
に立つ。

山門の両脇にはお寺を守る立像が2つ、
僕を睨んでいる。

僕は思わずお辞儀をして、
その場を立ち去る。

何も悪いことはしていないけど、
何か悪いことでもしたかのように。

日差しは高く、暑く、のどが渇く。

僕は用意してきた水筒を取り出して、
一口、水を飲む。

口から、のどを伝わり、僕の体内を
水が潤すのがわかる。

僕はまた、歩き始める。

川、お寺、そして、水。

それらは1000年以上前から、
変わらずここに存在していた。

そこに僕がきた。

それはほんの一瞬の出来事。

1000年の時間の流れの中で見れば、
一瞬だ。

一瞬の存在でしかない僕は、
そこにいないのだろうか。

一瞬の存在でしかない僕は、
見えないのだろうか。

一瞬の存在でしかない僕は、
存在を認められないのだろうか。

川も、お寺も、水も、何も言わない。

でもそれは僕を否定しているわけでは
ない。

むしろ、受け容れてくれている。

なぜなら、1000年の時間は
一瞬、一瞬の積み重ねだから。

一瞬、一瞬を積み重ねることで、
僕は何もないところから、姿を現す。

この世界のすべてが、僕を、
受け容れてくれる。

この世界のすべては、
受け容れられている。

(おわり)


「私とリー」は半年間、毎週日曜日に投稿
してきました。今回で終了になります。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

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