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ソニーのフルサイズミラーレス「VLOGCAM ZV-E1L」の、博物館カメラとしての実力をテスト! @東京国立博物館 法隆寺宝物館

一カ月以上前の話だったような気がしますが、ソニーのフルサイズミラーレス「VLOGCAM ZV-E1L」を借りる機会がありました。そうした利用方法を想定していなかったのですが「この最新のカメラだと、ものすごくきれいに展示品が撮れるのでは?」なんて思い、さっそくカメラを持って東京国立博物館(トーハク)へ行ってみました。

ソニーのフルサイズミラーレス「VLOGCAM ZV-E1L」

こちらのカメラ「VLOGCAM ZV-E1L」は、VLOGCAMなどという可愛らしいペットネームを冠していますが……いやいや、テレビ撮影にはもちろん、映画だって撮れる実力の持ち主です。

お値段だって、レンズ無しのボディだけでも30万前後という、野心的な価格ですw 

借りられたのは、キットレンズ付き。30万円前後のボディに、5万円前後のレンズ「FE 28-60mm F4-5.6」。

そんな装備でトーハクの法隆寺宝物館へ行ってきました。

わたし……普段は、(かつてあったブランド)オリンパスの「PEN-F(デジタル)」を使っています。なにが良いかって、もうこの「PEN」っていうブランドが好きなんですw 写りがどうのとか、そういう問題ではなく、好きなものは好き! という感じなんですね。ちなみに、その前に使っていたのは、初代ペンデジタルである「PEN E-P1」……さらにもっとももっと前には、中古カメラ店で買ったフィルムを半分ずつ使って撮る「PEN FT」や、ガラクタ市で2000円くらいとかでいくつか買った「PEN」各種です。

まぁ、そういう感じなので、まずもってセンサーがフルサイズのカメラというのは、重いしかさばりますねw フルサイズにしてはかなり小型軽量とはいえね……。

まぁでも、やっぱりね……あの室内が暗い法隆寺宝物館でも、被写体をビシッと苦もなく撮ってくれるあたりは、さすがですよ。ソニーのセンサー技術の高さを思い知りました……オリンパス様、OM様、がんばってソニーセンサー搭載のPENを……PENを作ってください! (←無理です)。


■国宝の《竜首水瓶(りゅうしゅすいびょう)》

ということで、飛鳥時代・7世紀に作られたとされる、国宝の《竜首水瓶(りゅうしゅすいびょう)》です。PENでは苦労するほど暗い環境でも「こんな感じでどうっすか?」という感じで、汗ひとつかかずに撮ってくれる感じでした。水瓶の金属感がしっかり出ていますよね。これが「FE 28-60mm F4-5.6」で撮れるんですから、ボディがどれくらいスゴイかってことのような気がします。

この水瓶のボディ部分には、線刻なのか、とてもうすぅ〜くペガサスが何頭か……数え方は一頭二頭で良いんでしょうか?……が描かれています。写真で見るとクッキリと見えますけど、実際に見たら、こんな風には見えないかと思います。気が付かない人も多いのではないかと。

きれいに撮れるなぁと感心しながら「この機を逃すまじ!」と思って、一周しながら撮りました。↓ さすがに照明が特に暗い後ろ側はキツそうですけど、それでも絵をしっかりとデータに記録しています。すごい!

いやぁ……すばらしいです……VLOGCAM……ソニーのカメラが人気なのがよく分かります。これは欲しくなりますよ……僕は次世代のPENが出ることを信じて待っていますけど……(OMじゃダメなんです!)。

いやまぁすばらしいですよ……もう。

■国宝の《水滴(水盂)》

水瓶(すいびょう)の隣に展示されているのが、同じく国宝の《水滴(水盂)》です。「銅板に金メッキした金銅製の文房具」なのだそうです。あの聖徳太子が、『三経義疏(さんぎょうぎしょ)』とやらを書いた時に使ったとも言われているそうです。

ガビッと撮れていますね。オートモードで撮って、パソコンでは何も処理をしないで載せていますが、カメラ側で多めに処理しているような気もします。

改めて写真を見ていると、水滴の表面の凸凹感が良い感じですね。素手でその凸凹を感じながら撫でてみたくなりますが……絶対に叶わない願いですね。

下の写真は、一段と照明の当たりが少なくなる背面から撮ったものです。写真の元データが今すぐ出せないので、カメラがどんな設定で撮影したのか……ISO感度とか……不明ですが、レンズは「FE 28-60mm F4-5.6」ですからね、開放F4よりは開かないわけで……これは少し頑張ったのではないでしょうか。それでも、そういう「ISO感度上げて頑張ったよ」っていう雰囲気も、それほどありませんから……やっぱりフルサイズセンサーの威力なんでしょうか。

すばらしい……。

■国宝《鵲尾形柄香炉》

水瓶(すいびょう)の左隣に展示されている、これまた国宝の《鵲尾形柄香炉(じゃくびがたえこうろ)》です。特に記すこともありません。

国宝《鵲尾形柄香炉》飛鳥時代・7世紀
国宝《鵲尾形柄香炉》飛鳥時代・7世紀

■照明極小下でもしっかりと質感を表現

こちらの印籠は、法隆寺宝物館の中でもおそらく最も暗い場所に展示されているものです。暗すぎるのと狭いスペースに展示されているのとで、気が付かずに通り過ぎる人が多いのではないかと心配になるほどの場所に展示されています。

それでも難なく撮ってくれました……。PENだと、ブレることも多く、何度か撮り直さなきゃいけない感じでしたけど、「VLOGCAM ZV-E1L」では一発で撮れました……と、なんだかんだでもう6年以上前に買ったカメラと比べるのもなんですけどね……むしろ6年前のカメラも頑張れば撮れるんだからすごいっすw

田村寿秀作《寿字蒔絵印籠》江戸時代・寛政10年(1798)

もっと「さすがだなぁ」と感じたのは、《蜻蛉(とんぼ)蟷螂(かまきり)蒔絵印籠》です。

伝・塩見政誠作《蜻蛉蟷螂蒔絵印籠》江戸時代・18世紀

蒔絵の光沢感もですけど、金が金っぽい感じというか……やはりこちらも質感表現がすごいなぁと。

■仏像

ということで、法隆寺宝物館の20-30躯くらいの重文の《観音菩薩立像》がズラッと並んでいる、第2室に移動しました。すべて確認したわけではありませんが、飛鳥時代の7世紀に作られた「銅製鋳造鍍金」です。


《観音菩薩立像・勢至菩薩立像》

こちらは左が勢至菩薩で、右が観音菩薩。なにか仲良しな雰囲気が良いなと思います。画像を拡大すると、鋳造! って感じがよくわかりますし、ところどころに残る金のメッキもしっかりとそれっぽい質感。

《観音菩薩立像・勢至菩薩立像》
麻耶様
《如来立像》飛鳥時代の7世紀

■本館で屏風も撮ってみました

この時には、狩野探幽の弟子で、国宝《納涼図屏風》の作者として知られる、久隅守景さんの《許由巣父図屏風》が展示されていました。

久隅守景《許由巣父図屏風》

描かれているのは許由(きょゆう)さんと巣父(そうほ)さん。

解説パネルにには「許由は、聖帝堯の天下を譲るという申し出を聞き耳が穢れたと水で耳を洗い、巣父は、その穢れた水を牛に飲ませず、牛を牽いて帰った」という話だと言います。続けて「高い位を嫌う理想の高士のたとえ」とあるので、皇帝の堯(ぎょう)が、許由に帝位を譲ると言ったんでしょうね。

久隅守景《許由巣父図屏風》
久隅守景《許由巣父図屏風》

↑ あまりカメラ的にPENとの違いが見いだせませんでした。そんなに暗くない環境では、PEN+単焦点の「30mm F3.5 Macro」も、悪くない仕事をしているということなのか……もっときちんと撮り比べて、画像データを検証すると、実力の差が出てくるかもしれません。

↓ 小さい《桃に和歌水盂(すいう)》に、桃を詠った和歌が刻まれているのですが、画像を拡大するとクッキリと判別できます(くずし字なので、わたしには読めませんが…)。

《桃に和歌水盂(すいう)》江戸時代,17~18世紀|銅製 鋳造 鍍金 彫金
渡邉豊太郎、渡邉誠之氏寄贈

それよりも水盂や水滴の使い方が、解説パネルに書いてあって「なるほどなぁ」と思いました。「墨を擦るのに用いる水を入れるための容器で、匙で水を掬って硯に注ぎます」とのこと。

《桃に和歌水盂(すいう)》江戸時代,17~18世紀|銅製 鋳造 鍍金 彫金
渡邉豊太郎、渡邉誠之氏寄贈

↓ 「これはヤバいなぁ」と良い意味で感じたのが、本館12室の漆工の部屋へ行った時でした。先ほどの印籠(木製漆塗り)もですが、この漆工の部屋も照明がむちゃくちゃ暗いんですよね。それで、PENは暗い場所に弱いので、あまり写真を撮ることもありません。なぜかといえば撮っても、ブレる/被写界深度が浅くてボヤケた部分が多いのどちらかなので……。

《橘千鳥蒔絵硯箱》室町時代・16世紀・松永安左エ門氏寄贈

そこはソニーのフルサイズセンサーですよ。PENみたいに「脇締めてぇ〜」なんて身構えなくても、何気なくオートモードで撮っただけで被写体がパッキン! とした写真が撮れました。

ちょっとカメラのボディ内で画像処理を多めにしているのかなぁとも思わないでもありませんが、ちゃんと描かれた美しい「洲浜に橘、空に群れ飛ぶ千鳥の図」が記録できます。

カメラとは関係ありませんが、この絵を見て「日本的だなぁ」と思ったのですが、解説パネルには「画面の左半に主要なモチーフを配し、対角線を意識した構図は、とくに室町時代の文台や現箱の意匠に多く見ることができます」として、「当時盛んに輸入された中国絵画の影響によるもの」と考えられるとしていました。なるほど確かに、これが水墨画などで描かれていたら、中国風と感じるかもしれないなぁと。

《橘千鳥蒔絵硯箱》室町時代・16世紀・松永安左エ門氏寄贈

そしていつも撮りたいなと思いつつ、きれいに撮れたことがなかった琵琶も撮っておきました。iPhone 12で何度か撮って、別にブレるとか画像が汚いとかではないのですが、なんとなく「締まりの無い写真」って感じがしていました。ソニーのフルサイズセンサーだと、これも「あっ、これも撮っておこ……パシャッ」って感じで撮ったのが下の写真です。

《琵琶 銘・大虎》鎌倉時代・13世紀・木製漆塗

写真の上手下手はわたしの腕の問題なのであれですが、写りは、そんなわたしでもいい感じに撮れた気がします。

そして2階の国宝室へ移動して、いちおう国宝も押さえておきました。きれいな文字……。ただ、こちらは背景と文字のコントラストが高く、肉眼でも識字しやすいです。こういうものは、PENでもそれほど困りません……けど、やっぱり寄って撮った時に、ソニーの方が被写界深度が深いのかなぁ……それでも画質に乱れが感じられないし……やっぱりすごいな。

ちなみに全体の文字が読みたい方は、こちらの「e國寶」Webサイトで画像公開されています。トーハクの画像アーカイブにもあるのですが、なんかモヤァっとした画質なのが残念です。ちゃんとした画像データをアップしてもらいたいなぁ……と言って、わたしが読むのか? って話なんですけどねw

《円珍戒牒(円珍関係文書の内)》

そして一番気になっていたのが……トーハク2階の「武士の装い」の部屋。刀剣の展示は、1階と2階に分かれているのですが、こちら2階の部屋は、ものっすごく撮りづらいんです。薄暗いというのと、照明が「昭和の蛍光灯か?」っていうくらいに、なんかパルスを感じるというかw そんなわけないんですけどね。そうとう時間をかけないと、わたしの腕とPEN Fだと、きれいに撮れません。

そしてソニーで、少し気合を入れて撮ったのが下の写真です。「なにこれw」って感じで、この刃のキラリ感とかシュッと切れそうな感じなどがよく表現できています。あとなにげに、いつもはチープな感じにしか撮れない背景も、実際よりもリッチに見えますw ←良いのか?

銘 豊後国行平《太刀 豊後行平》平安〜鎌倉時代・12〜13世紀・高松宮家寄贈

この日は外国人観光客が途切れることなく観覧していたので、この一枚だけ撮って撤収しました。

蛇足ですが、オリンパスの「PEN-F(デジタル)」を使っていると、時々、外国人のカメラ好きから「それはどこのカメラ?」って聞かれます(過去3回)。おそらく小さくて、見たことないカメラだからですけど、マークを指さしながら「オリンパス……いいだろ?」と答えると、「ほぉ〜」みたいな関心を見せます。

全く関係ありませんが、外国人ってどうしても誰かに話しかけずにはいられない人が多いですよね……特に白人。この前、チーズをかじっているネズミの根付(高円宮コレクション)を見ていたら、隣から「それってなんだろ?」って言いながら近づいてきたんですよ。わたしが写真を撮っていたらすぐにどくのですが、まだ見ている途中だったので「いや、邪魔すんじゃねえよ」とも思いましたが、愛嬌のある感じのおじさんだったので、場所を譲りました。そしたら、苦い顔をしながら「チーズだよぉ〜、おれ、チーズが嫌いなんだよなぁw」なんて言いながら微笑んできました。「わたしは好きだよ」って言いましたけど、「もう根付はいいや」みたいな感じで部屋を後にしました。

なんだよ、ただわたしの観覧を邪魔しにきただけじゃねぇかw

ということで、ソニーのフルサイズミラーレス「VLOGCAM ZV-E1L」は、素晴らしいと思いました。次に使う機会があれば、同じ60mmでも単焦点レンズを借りたいな。そうして何度か「やっぱり博物館カメラにはフルサイズが良いなぁ」なんてことも撮りながら思いましたけど、PENユーザーからするとボディもレンズもデカいんですよね。もしソニーのカメラを買うことがあれば、APS-CサイズのEマウントで良いかなぁ……と思ってラインナップを見たら、けっこうこちらも絶滅危惧種です……。

う〜ん……OMシステムさんには、PEN Fの後継モデルを出してほしい! OMじゃダメなんです! いやもうわたしのPEN Fの、バッテリーのフタがちゃんと閉まらなくなっているので、お願いしますよ……ほんと。

ということで、少し朗報。OMシステムから「OLYMPUS Tough TG-1」以来の11年ぶりとなる防水コンパクト「Tough TG-7」が発売されます。おぉ……OMシリーズ以外では久しぶりの商品リリースではないでしょうか。

と……そんなことはなく、今年春には「文化財・美術品などのデジタルアーカイブのワークフローを簡便にするデジタルアーカイブ用カメラ『Rシステム』の提供」なんてこともしているんですね。昔からオリンパスは、こういう「記録」の面ではとぉっても定評あるブランド。PENシリーズも刷新してもらい、コンシューマ向けの「博物館カメラ」としての地位も確率してもらいたいものです。

……って、ソニーもとっても良かったですよ。もちろん。

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