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こないだのつまみ #6 昆布巻き

駒場東大前に『うつわ party』というお店がある。
名前のとおりうつわのショップ&ギャラリー、通ってもう何年になるだろう。年明けには酒器展をやられるのが恒例だ。

毎回、初日の営業終了後にうつわ作家さんを交えての飲み会が開かれる。酒器を作るぐらいだから作家さんも飲み助。酒器展を企画するぐらいだから、オーナーの坂根さよみさんもお酒好き。酒器を求めてやってくる客たちは言わずもがな。コロナを挟んで、4年ぶりに初日打ち上げが開かれた。

さよみさんのお人柄が反映されて、集まるメンバーは和やかで愉しいひとばかり。作家さんたちが実際のうつわを前に工夫されたところを教えてくれたり、作陶に関して最近関心のあることを語ってくれたり。そんなあれこれを聞きつつ飲む酒がたまらなくおいしい。飛び交う会話が、いい肴なんだ。

つまみを盛るうつわはさよみさんの私物、なるほどこんな料理との組み合わせも面白いなと実に参考になる。料理名人の雪乃さんが作られるつまみがどれもおいしくて、幸せな時間だった。

さよみさんのお母様が作られたにしんの昆布巻きが忘れられない。形も煮具合もよくて、実においしかったんだ。もう95歳でらしたかな、見上げる思いになる。私なんて今でも昆布巻き作るの面倒に思えてしまうが、人間の出来が違うなと。パーティにいらして歓談されている姿はまさに矍鑠(かくしゃく)そのもの。4年前の会ではちらし寿司を作ってくださったことを思い出す。ああ、うちの親もこんなふうにいつまでも元気であってくれますように、なんて思いながら昆布巻きを噛みしめた。

「どもー、遅くなりました。氷下魚を焼いてきましたよ!」
近くに住む常連のお客さんがお手製のつまみを持って現れる。ラフでくだけたアットホームな雰囲気が酒器会の楽しさだ。

もっともっと長居したかったけれど、調子に乗って酔っぱらい変化してしまいそうだったので19時には辞去した。来年もまたこちらへ参加させていただけますように。



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