『変われ! 東京 自由で、ゆるくて、閉じない世界』

『変われ! 東京  自由で、ゆるくて、閉じない世界』

著者:隈研吾 清野由美

出版社:集英社 (集英社新書)

発行年:2020年7月22日

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 私は、なんだかんだ言われても、結局のところ、東京が好きです。それは、東京から離れて生活していて、より一層感じることでもあります。もちろん、いま住んでいる石川県の土地の素晴らしさや生活しやすさなどは、1年以上いるので肌で感じているのですが、やっぱり東京が恋しくなります。東京で生まれたこと、大切な友人たちがいること……色々理由はありますが、東京という存在そのものに惹きつけられているのが一番大きいです。より具体的に言うと、私は「神保町」周辺と「池袋」が、小さい頃から好きです。どちらも、それぞれの空気感が自分に合っていて、居心地の良さ悪さ含めて魅力的なまちだと思っています。ただ、池袋に関しては、私が異動してから再開発がかなり進んだので、まだ新しい風景を味わっていません。池袋をゆっくり歩きたいなあ……。

 そういう気持ちをいつも持っているので、本書を見てすごい興味をもちました。目次に〈第5章 池袋―—「ちょっとダサい」が最先端〉という項目があるので、池袋好きとしては買って読まねばと思いました。

 隈研吾さんと清野由美さんの対談形式で、お話が進んでいきます。内容が堅苦しくなく、建築やその業界に全くの素人の私にも若干助かる注釈付きで、読みづらくなかったです。そして、なによりテレビやネットニュースでうっすらとしか認識していなかった隈研吾さんの、携わってきた仕事や考え方などを知れて良かったと考えました。生意気で恥ずかしいことを言いますが、年齢が若い私より隈研吾さんの方が思考が柔軟で、自分ももっとがんばろうと思いました。あと、隈研吾さんによる〈はじめに〉を読んで、〈コロナの後の都市のテーマは「衛生」ではなく「自由」である〉(p.16)という考えに納得してしまいました。

 スターバックス リザーブロースタリー東京(目黒区)に行ってみたいと思ったり、同潤会アパートのことをネットで調べたり、興味が尽きなかったですが、特に熱をもって読んだのは第5章でした。清野由美さんの〈東京の人は住んでいる路線によって、渋谷、新宿、池袋などと「シマ」が決まっていきますよね。〉(p.148)と〈池袋には渋谷の持つ華やぎ、都会感は乏しく、新宿のように、すべてを呑み込む貪欲なパワーに欠けている〉(p.153)という発言に、すごい勢いで同意しました。こういうふうに言語化して頂けて、とてもすっきりしました。私は池袋が「ホーム」でした。初めて一人暮らしをしようと考えたとき、なるべく池袋にアクセスしやすいところを探すくらいでした。その思い入れのある池袋の再開発! について詳しく書かれているので、非常に興味深く読みました。「ハレザ池袋」や「南池袋公園」に早く行ってみたい。

 ちなみに本書は、『新・都市論TOKYO』(2008年)、『新・ムラ論TOKYO』(2011年)に続く、都市論シリーズの第三弾だそうです。その二冊は未読でした。本書にも言及されていますが、2008年にはリーマン・ショックが、2011年には東日本大震災があった年(p.21参照)なので、東京と時代を紐解くうえで興味深い内容である気がしたので、二冊とも遡って読んでみようと思います。

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